みんなが、瞬間湯沸かし器
「お前、絶対クビにしてやるっ!」
『タイトルの虎』にも出したヤツですが、
自分の四半世紀に及ぶサラリーマン人生で、
一番忘れられない言葉です。
なんていうか、ね。
すぐカッとなって、言葉の暴力が飛んでくる。
短気な人が多いんです、うちの職場。
悪いことに、偉い人に特にね。
『瞬間湯沸かし器』
すぐカッとなる人のことを、
こう言ってたのはもう昔の話でしょうか?
そんな人に囲まれて、仕事をしてきました。
カッとなった時に飛んでくる言葉を聞くと、
そりゃーもう、はらわたが煮えくり返ります。
「ふざけんな、もう辞めてやるっ!」
そう思ったのは、100回や200回ではありません。
実際に「その手の言葉」を受けて、
辞めてった人も見てきたし。
そういうのが積もり積もって、
辞めてった人もいるかと思います。
ただ、何度も受けてきたからこそ、
分かった気がすることもあるんです。
カッとなって、暴言をぶつけてくる人達も、
「心底そう思って言ってるわけじゃない」
このケースがほとんどだって。
大体、言い放った後に妙に優しくなってみたり、
言い過ぎたな感を出してきます。
瞬間「カッ」となるんでしょうね。
それで言葉に出てしまう。
言葉に出してから後悔する。
素直に謝ってくるような方々じゃないけど、
「悪かったな」って思ってそうなのは、
何となく分かるようになりました。
言葉に出した、その瞬間。
この人達は絶対に損をしている。
一呼吸だけ、コラえることができたなら。
別の言葉を紡げていれば。
違った今も、あったはずなのに。
一度放った言葉は帰ってこない。
離れた人の心も、戻ってこない。
他人のそんな姿を冷ややかに見つめながらも、
自分の中にも『瞬間湯沸かし器』は、
潜んでいるんです。
ただ自分の沸点は、大体1人の時にやってくる。
1人で残業してる夜。
1人で眠れずに、ふとんにくるまってる深夜。
1人の車内で、腹立つことを思い出した帰り道。
足の爪が割れるくらいに、
壁や棚を思いっきり蹴とばした時のこと。
わりと激痛なのに痛みとか感じない、
あの時の、怒りと虚しさが入り混じった熱。
今でも職場で常に自分の視界の中にある、
一部がベコンとへこんで、
スムーズには開かなくなったスチール棚。
へこましたのは、1人で残業してた夜。
突然爆発した、自分の八つ当たりの蹴りだった。
引っかかる扉がガタガタと音をたてるたび、
あの夜の自分の『瞬間』を思い出して、
情けなさと自己嫌悪に襲われます。
でも、不思議なもので。
他人が爆発する『瞬間』を、
どこか許せるようになったのも、
自分の中にあるこの情けない『瞬間』の、
記憶のおかげだったりします。
「この人も今、感情をコントロールできないんだな」
「爆発した後で、色々後悔するんだろうな」
そう思えるようになってきました。
こらえられそうもない『瞬間』がきたら。
グッと飲み込むのが、本当はいいんでしょうけれど。
時には安全な場所で爆発してみるのも、
いいのかもしれないですね。
他人の情けない痛みに、
思いを馳せれるかもしれません。
もっとも、物に当たるのだって、
よくはないんでしょうけどね。
『ガタン、ガタンっ!』
へこんだ棚の扉の開閉音は、
自分への、そんな抗議の声にも思えます。
誰かを何かを、傷つけてしまう『瞬間』
気を付けないといけないですね。
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