(序章)僕の師匠は誰ですか?(入社編)
「よく頑張ったな!
もう、お前に教える事はない・・」
「し、師匠・・!」
子供が見てるTVから、ベタなセリフが聞こえる。
何てベタなセリフだろう。
けど一度くらいは、言ってみたし言われてみたい。
そんな気もする。
深い知識と経験値、人間的な魅力を兼ね備え。
辛抱強く時に厳しく、導いてくれる道標。
叶うなら、そんな人に指導を受けて。
そして、いつか、あわよくば。
そういう人に、自分もなりたい。
そうなれたなら、言って貰いたい。
「師匠!(じゃなくていいけど)
今までありがとうございました!」
そんな日が来ることは、
果たしてあるのだろうか、、、
このお話は、筆者の社会人生活を振り返る自伝です。
「愛想ない・体力ない・向上心もさしてない」
ないない尽くしの若者が、
サラリーマン生活に希望を見出すまでの記録です。
(登場人物)
・新井 ・・・ 筆者の分身(24歳 新入社員)
・竹中部長 ・・・ 新井の指導役
・大下聡 ・・・ 営業社員(社長の息子)
・鈴木と菅野 ・・ 営業社員(22歳)
・小田原 ・・・ ベテラン女性事務員
最初の会社を退職してから、2年半。
新井の2度目の会社員生活が始まった。
地元商社に営業職で採用されたが、
3ヶ月間は事務所で勉強らしい。
本音を言えば、事務的な仕事がしたいけど。
贅沢を言える立場ではない。
まずは、やってみるだけだ。
座らされた、受付の端っこの席。
最初に目に入ったのは、、、
「何、この汚い文字の伝票・・」
やる事は、伝票の起票とか確認とか。
それこそ、事務的な事なんだけど。
先輩方の書いてる伝票の、汚い事汚い事。
まぁ、全員ではないけれど、、、
会社って、こんな伝票がまかり通るの?
隣に座ってる、指導役に聞いてみる。
竹中部長。
やってる仕事は、電話対応とか注文発注。
定時出社で、定時に帰る。
部長なのだから、役員なはずだけど。
やってる仕事は、軽い仕事ばかりに見えた。
あ、いやもう1つ。
新井のような新人の指導も部長の仕事のようだ。
「あぁ、その人達は仕方ないんよ」
説明は、それで終わった。
仕方ないって、それだけですか?
「そうよ、そんな文字でもね。
慣れたら読めるし、大丈夫よ」
話に割り込んできたのは、
結構なベテランらしい事務方の女性社員、
小田原さんだ。
「慣れたら読める」
そりゃ、そうかもしれないけど。
誰が見ても読めないとダメなんじゃ、、、
「人の事より、小田原さんよ。
伝票の入力は追い付いとんか?
こないだも随分貯めて、
社長に怒られてたろ?」
「たまってるけど・・・
次の日曜にでも一気にやるから。
ダイジョーブ♪」
次の日曜? 休日出勤してるわけ??
伝票1枚見ているだけで、
疑問は芋づる式に出てきたけれど。
新井にしても、人の事より自分の事だ。
言われた仕事を覚えないといけない。
「聡さん、今日も連れてって下さいよ!」
「あ、できたら俺も行きたいですw」
「お前ら、一昨日行ったばっかじゃろうが!」
後ろの席では、仕事を終えた営業の人達が、
飲みに行こうと騒ぎ始めた。
「連れて行って」とせがまれてるのは、
中堅社員の聡さん(社長の息子らしい)
せがんでるのは、若い営業2人組。
鈴木さんと、菅野さん。
先輩だけど、新井より年下の2人である。
「仕方ないな」と、折れた聡さんに付いて、
3人夜の街に消えて行く。
時刻は17時過ぎ、外もまだ明るいけれど。
営業の人には、あーいう付き合いも必要なのかな。
そう思うと、自分も「営業」で採用されてる事。
思い出し、少し憂鬱になっていた、、、
・
・
・
「その商品、トラックに積んどいて」
(くっ、重くて持てない動かない・・)
「配達、行ってみるか?」
(〇〇って、どー行けばいいの・・)
「車、移動させといてくれる?」
(ミッション苦手なんよな、あっっ!)
「・・部長、新井君が車ぶつけました!」
重い物は持てない。
運転も下手で、方向音痴で土地勘もない。
加えて愛想もないの、ないない尽くし。
使う方も、さぞ困った事だろうw
見習い期間の3ヶ月、終わりも近くなったのに。
やってく自信は、全く育たない。
実際、自分はどう思われてるんだろう?
3ヶ月が終わったらクビになるのでは?
「3ヶ月」が迫るにつれて、
不安は日々大きくなっていた。
そんな時。
「・・部長、少しお時間いいですか?」
「おう? どーしたんな珍しい。
結婚でもするんかぁ?」
発注担当の女性事務員が、
竹中部長と2人で個室で相談を始めたのだ。
「上司に時間を貰い、他人を排しての相談」
これが何を意味するか?
答えは、ほとんど決まってるんだけど。
この時それを察する経験は、
まだ備わっていなかった、、、
・
・
・
「小田原さんと、新井君。
上の応接室に来てくれる?」
3ヶ月が経過した、その日。
小田原さんと2人、応接室に呼ばれた。
部屋に入ると、社長に常務。
面接の時と同じ、偉い人達が待っていた。
「あっ、これガチでクビか」
そんな思いが、頭をよぎる。
でも、小田原さんも呼ばれてるのが分からない。
彼女も、仕事を貯めてると聞いてたので。
一緒にクビになるんだろうか?
「〇〇さんが、結婚退職する事になってね。
小田原さんは、〇〇さんの発注業務に異動。
新井君は、小田原さんがやってる伝票入力担当ね。
引継ぎは1ヶ月以内で、よろしくね」
伝票入力業務?
思いもしない展開だ。
「営業では使えない」そう判断されたのか。
たまたま出た「事務方の欠員補充」
それに充てられただけなのか。
はたまた、その両方か・・?
「新井君は、もう窓口の事は考えなくていいから。
すぐ引継ぎ受けて、すぐやって貰える?」
窓口の事は考えなくて良い?
じゃ、重い物が持てないのも。
配達をロクにこなせないのも。
もう、考えなくて良いって事?
しかも、やるのは得意分野の入力作業。
こんなおいしい話が、あっていいのか。
ずっと望んでいた「事務方業務」
これが、思いがけずに降って来た。
内心喜んでる心境は、一応隠して。
「わかりました」とだけ答える。
そーいう事なら、すぐにでも。
その仕事にかかりたい。
けど、小田原さんの心境は違ったようだ。
「・・新井君、出来ないと思いますよ」
見るからに不満一杯で、答える彼女。
「やってもないのに、分からんじゃろーが!」
偉い人から、集中砲火で怒られている。
何だ?何やってるか、正確には知らないけど。
そんなに難しい事が、たくさんあるのか?
事務所に戻り、早速引継ぎ業務に入る。
コレが出来なきゃ、今度こそ自分はお払い箱だ。
頑張ろうと、やる気になってたんだけど。
「早々に引継ぎって、、、
新井君に付き合ってたら、
私の家庭崩壊するわ!!」
小田原さんは、まだ納得してないようだったw
昨日今日、入社したばかりの新人にこの言い草。
後で思えば、随分なひと言なんだけど。
この時はまだ、
「小田原さん、お手間おかけします。
申し訳ないです」
心底、そう思っていた。
新入社員・新井(24歳)
会社や、人の嫌な部分はまだ知らず。
まだまだ、純粋だったのである。。。
第1話に続く
以下、過去の自伝です。
(学生編 大きくなったら何になる)
(婚活編 人間、半数は女性だぞ)
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