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※note創作大賞2024「お仕事小説部門」応募作品_お仕事ショートストーリー【営業課長の心得帖】002「三色スケジュール」

「課長、俺はもうダメです……」
 社内懇親会の帰り道、京田辺一登は部下の住道(すみのどう)タツヤから相談を受けていた。

「普段から自信満々のタツヤがどうした。そんなに深刻な悩みなのか?」
 タツヤは入社5年目。営業のスキルやノウハウの吸収が早く物事の受け応えも良い。
 まさに脂がのっている若手社員の一人だ。

「実は俺、スケジュール管理が得意じゃなくて……予定が詰まってくると、頭が混乱してしまうんです」
「なるほど、確かに優先順位付けを含めて悩ましい問題だなあ」
 夜風に当たって酔いを醒ましながら、京田辺は自分の鞄をゴソゴソ漁(あさ)った。
「ほれ、俺愛用の手帳だ。あまりジロジロ見るなよ」
「ありがとうございます。うわっ、凄い書き込み!」
 手帳を受け取ったタツヤは、頁をペラペラめくって驚きの声を上げた。

「これ、時間毎にスケジュールを箱にしているのですね?」
「そう、始点と終点が良く分かるように線ではなく四角い箱にしているんだ。その時間を予約済み、という意味も出せるからね」
「なるほどー、それで、この色使いには何か法則があるんですか?」
 黒の他に赤・青・緑が使われた文字や線を指して、タツヤが問いかける。
「これも可視化のひとつ。重要なものは赤、その次が青、プライベートは緑という感じかな」
「おー、更に分かりやすい!」
「これは、齋藤孝(さいとうたかし)先生の『三色ボールペン情報活用術』に感銘を受けて、自分なりにアレンジさせて貰ったんだ。法則を応用すればスケジュールアプリ等、ペーパーレスでも活用できると思うよ」
「ああ、ペーパーレスなら、課長みたいにグチャグチャに書かれた手帳を見られるリスクが減りますね」
「さらっとディスるなよっ!これは中身が分からないようにワザとやっているの」
「ははっ、分かりました」

 普段の人懐っこい笑顔が戻って来たところで、京田辺はずっと気になっていたことを尋ねた。
「ところで、タツヤは何故落ち込んでいたのだ?取引先のアポイントをすっ飛ばしたのなら、明日一緒に頭を下げに行くか?」
「あ、違うんスよ」
 タツヤは少し気恥ずかしそうに頭を掻いた。
「いやー、実は今日、俺の部屋でカノジョの誕生日をお祝いする予定だったのを、すっかり忘れていまして……」
 彼の言葉を聞いて、京田辺は即座に叫んだ。

「今すぐ帰ってやれーっ!」

#創作大賞2024
#お仕事小説部門


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