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吾輩は猫好きである

前回の記事にも書いたけど猫が好きだ。僕も好きだが、嫁も輪をかけて猫好きである。例えるならば、僕がスーパー猫好き人だとしたら嫁はスーパー猫好き人ゴッドであるとも言える。ゴールド猫好きレクイエムとも言える。いや、言えない。意味が分からない。話が進まない。

つい先日の事。珍しく嫁と休日が被ったので「娘を連れてどこかに出かけよう」という話になり、僕は第一候補として水族館を挙げたのだが嫁に

「パパは水族館に行くと帰りにお寿司屋さんに行きたがるから嫌だ」

と言われ却下された。まぁ、我ながらデリカシーがないというか。嫁の気持ちはすごくわかる。ついさっきまで「お魚さんかわいいねー^^」と娘に話しかけていた人が、数時間後には生ビール片手に馬鹿笑いしながら寿司を食べてるのを見たら自分が選んだ配偶者とは言え「サイコパスかこいつ」と思ってしまうのも無理はない。(でも元気で新鮮なお魚見たら美味しそうって思いません?)

と、そんなこんなで行き先は嫁が第一候補に挙げた猫カフェと相成った。近所に新しくオープンしたらしい。全然知らなかった。何故もっと早く教えてくれなかったのだろう。酷い話だ。

さて、当日。僕は寝不足で欠伸を噛み殺しながら猫カフェへと車を走らせ(いい歳してワクワクし過ぎて眠れませんでした)、家族三人で猫ちゃんに癒された。あと猫と一緒になって無邪気に遊ぶ娘も可愛くてそっちにも癒されつつ、足元にすり寄ってきてくれたシャム猫のしんのすけ君(超かわいい)を撫でながら「なんて素敵な休日なんだろう」と幸せに浸っていたら、ふとある記憶が蘇ってきた。

今でも鮮明に思い出す。蝉の声が鳴り響く、ごく普通のある夏の日の事だ。小学生だった僕は学校からの帰り道、通学路に捨てられていた生後二か月くらいの黒猫を拾った。ただ拾ったはいいが、家では飼えないことはわかっていた。うちは母親が猫嫌いで、曰く

「爬虫類を思わせるような細く縦長になる黒目が気持ち悪い」

「しなやかな曲線を描くような体のラインが生理的に嫌だ」

との事らしい。僕のような猫好きからしたら「それこそが数ある猫の魅力のうちの一つだろうが!」とテーブルをバンバン叩きながら力説したいところではあるが、でもなんとなく言いたいことはわからなくもない。

子猫が入っていた段ボール箱の前でしばしの間途方に暮れていたのだが、子供ながらに「ここでうじうじ悩んでいても何も解決しない」と、意を決して家に連れて帰ってみることにした。帰路に就く間ずっと不安に駆られながら「お前も不安だよね」「お腹空いてるよね」「飼ってあげられないかもしれないけど少しの間だけゆっくりしようね」と話しかけ続ける僕に子猫はただ「にゃー」と鳴いていたが、きっとこう言っていただろう。

「にゃー」と。(想像力よ)

家に着いてすぐに冷蔵庫にあった魚肉ソーセージ(多分親父の晩酌の肴)と牛乳をあげ、一通り食べ終わり毛繕いを始めた子猫と軽く打ち合わせをした。少しでも飼える可能性を上げる為にすべきこと。それは”黒目を細くしない”という事だ。体の曲線の件はもう捨てた。どうしようもないもん。(いや、黒目もどうしようもねーだろ)

そうこうしていると母親が帰ってきたので、子猫に「では打ち合わせ通り宜しくお願い致します」と想いを託し、母親を出迎えこう切り出した。

「お母さん、さっき学校から帰ってくるときに猫が捨てられてて、可哀そうだから連れて帰ってきちゃったんだけど飼ってもいい?ちゃんとお世話するから。こいつなんだけど…」と後ろ手に隠していた子猫を母親の目の前に差し出した途端「シャー!!」と子猫の威嚇が炸裂した。ちなみに黒目はしっかり細かった。



こうして僕は子猫を再び通学路に捨てに行くことを余儀なくされたのだった。

子猫を元居た段ボール箱に戻し、泣く泣くその場を去りながら僕は胸に誓った。大人になってちゃんと自分が稼いだお金で生活できるようになったら、そのときには絶対に猫を飼おうと。この子猫の分も幸せにしてやろうと。

完全に余談だが、その子猫騒動から数か月後。四歳離れた弟が僕と同じように「学校の帰り道で拾ってきたんだけど飼ってもいい?」とランドセルの底から小さい蛇を出してきたときは「爬虫類のような黒目としなやかな曲線を描く体のラインが苦手」な母親は悲鳴を上げ、僕もさすがに擁護できなかった。そもそも爬虫類そのものだし、曲線そのものじゃねーか、と。弟は泣きながら通学路に蛇を捨てに行き、僕はそんな弟の背中を見守りながら「えんがちょー!」と言い放った。

さて。あれから数十年経過してしっかりと大人になった僕は未だに猫を飼っていない。あの頃の誓いは果たせていないけど猫カフェで楽しそうにはしゃぐ嫁と娘を眺めながら「必ず、近いうちに約束を果たすから見ててくれよ」と記憶の中の子猫に再び誓った。

あの夏の日のように「にゃー」と答える声が聞こえたような気がした。

気がしただけで実際に言ったのは手元に居るシャム猫のしんのすけ君(超かわいい)だったけど。

はい、超かわいい。終わり。

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逆佐亭 裕らく お金は好きです。