【創作大賞2026応募作品】君の好きな人になりたかった #6― 届かなかった想い ―
【創作大賞2026応募作品】
君の好きな人になりたかった #6
― 届かなかった想い ―
秋が来た。
校庭の木々は少しずつ色づき始め、
朝の風も冷たくなっていた。
「蒼、おはよう。」
いつもの笑顔。
いつもの声。
だけど僕は、
前みたいに素直に笑えなくなっていた。
美月が好きな人。
その存在を知ってから、
隣にいる時間が少しだけ苦しくなった。
昼休み。
美月は一冊のノートを広げていた。
何かを書いている。
僕が近づくと、
慌てて閉じた。
「あっ。」
「ご、ごめん。」
「見ちゃだめ。」
珍しく焦っている。
「ラブレター?」
冗談のつもりだった。
でも、
美月は黙ったままだった。
その沈黙だけで、
答えは分かった。
「……そっか。」
胸の奥が静かに痛んだ。
放課後。
帰り道。
夕焼けが街をオレンジ色に染めている。
「蒼。」
「ん?」
「私ね。」
美月は少し照れながら笑った。
「もう決めたの。」
「何を?」
「ちゃんと伝える。」
その一言で、
僕の恋は終わった。
「応援して。」
その言葉が、
胸に刺さる。
本当は言いたかった。
応援なんてしたくない。
行かないで。
僕を見て。
でも、
言えなかった。
「……うん。」
その一文字だけが、
精一杯だった。
数日後。
放課後の校舎。
僕は偶然、
美月が中庭へ向かう姿を見つけた。
手には、
あの日のノート。
きっと、
あれが手紙なんだ。
追いかけようとした。
でも、
足が動かなかった。
遠くから見守ることしか、
僕にはできなかった。
美月は一人の誰かの前で立ち止まる。
深く頭を下げる。
手紙を差し出す。
僕は目を閉じた。
もう見たくなかった。
これで終わりだと思った。
初恋は、
こんなにも静かに終わるんだ。
そう思った、その時だった。
「ごめん。」
聞こえてきたのは、
男の子の声だった。
僕はゆっくり目を開ける。
美月は笑っていた。
泣きそうなくらい優しく。
「ありがとう。」
そう言って、
ゆっくり歩き出した。
振られたんだ。
そう思った。
でも。
その時の僕は、
一番大切なことに気づいていなかった。
美月が手紙を渡した相手は――。
僕が見ていた人ではなかった。
(第7話へ続く)
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黒羽 KUROHA
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