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続く境界|シロクマ文芸部


昨日から一直線にきて薄闇に溶けた時間を、忘れたときが覆う。溶けてそれとまったくひとつになったはずの私の耳の奥に

「どっちがいい?」

と囁く声がした。
仕方なく頭の一部分だけを形にした。

(私に聞いてるの?)

「え!? いや……は……っ」

どうやら驚かせてしまったらしい。私が初めてなのだから声にとっても初めてのことなんだな、なんとなくそう思った。

「どうしよう……」「……どうする?」「どうなるの?」

声は一つか、それともすべてか。よくわからなかった。無かもしれなかった。

また溶けてしまおうかと思ったときに、今度は私の背を転がす小さな手が当たった。手だったか? 桜の花びらは小さな手なのだな、と思ったのだからあれは手だ。

(どっちに転がしたいの?)

「んな!?……どっ、って……」

想定範囲が狭いから、「だっ」とか「へ……」とかなるのだろう。人のふり見て我がふり直そう。

(寝返りをうつよ)

花びらの手は、どこかへ潜り込んで行った。

そうか──。あなたがそちらへ潜るのなら、わたしが寝返るのはそちらだ。壁に背を向けたはずだが、夜の、夜より黒いざらつきが鼻の先にあいている。

溶け合いに戻ろう。
まだ薄闇に溶けていていい時間だ。

明日との繋ぎ目は厚みや奥行きをもたされて続け──あ、今日はいつなのだろう。






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