鳶が地上にいる|今日の、書き逃げ
気になっているけど、気になっているままに。
何か解を求めるでもなく。
ただただ気になっている、というはなし。
ここ数年で鳶が変わった──。
あなたのお住まいの鳶は、最近どうだろう。
*
子どもの頃から空を眺めていて。
今よりもっと高い空をすーっとくるーっと
飛ぶ鳶が好きだった。
大きな翼を広げて羽ばたかず、
すーっとくるーっと大きな輪を描く。
雄大さや孤高なものを感じた。
鳶は、スズメやカラスよりもっと高い空を
いつも一羽で飛んでいた。
──わたしの鳶は、ずっとこうだった。
あ、鳶好きなので、思わず力入った。
こんな語らなくても、よかった。
しかし、ずいぶん大人になって、
鳶の姿が棲む地域によって
行動が異なることを知った。
観光などで人の多い海岸線に生きる鳶。
観光客の女性の頭上を掠めるのを、見た。
人の持つ食べ物を狙ってのことのようだ。
わたしの知らない鳶だった。
高い空を一羽で飛ぶ、あの鳶が……。
信じられないような思いがした。
驚きはしたが、わたしの日常に戻れば、
わたしのあの鳶が戻る。
鳶も、環境によって生き方を変えるのだ。
そう思っていた。
*
ところが、5年ほど前に
わたしのところの鳶が急に変わった。
初冬。麦の芽がまだ小さく、土ばかりが目立つ
だだ広い畑の真ん中に、その色とあまり違いのない小さな塊がある。
土の塊じゃない。鳶だ。鳶が地上にいる。
何十年も何十年も、空を仰いで見ていた。
舞う姿しか見たことのない。
鳶が地上にいる。
二羽だ。
わたしは思う──。
あれはきっと兄弟だ。
成鳥になってまだ浅いのだ。
もしや、まだ幼鳥か。
どちらかが怪我をしているのかもしれない。
それで、あまり上手に飛べなくて
兄弟がそれに寄り添っているのだ。
(ぜんぶ空想)
──これで、わたしの中のストーリーが出来上がってしまった。
その年の冬、気にかけていると
やはり地上に降りている鳶を何度か見ることがあった。
必ず二羽だった。
次の年の冬。
あの怪我をした兄弟の鳶はどうなっただろう。
(怪我だったのか、兄弟なのか、ほんとのことはわからないんだけど。)
気になるわたしは、広々とした畑を見渡す。
あ……。いるー!
地上に鳶が、またいるー!
どういうことー?!
やっぱ、あのとき怪我してたわけじゃないか。
怪我だったら、もう治ってるよね。
……うん。兄弟でもないよね。
わかってる。
ねぇ。そのうえ、
たまに五羽とかで地上にいるー!
なんでぇ?
地上の鳶を見た年から後は、
毎年見るようになった。
見る頻度が増した。
そういう鳶が増えたのだと思う。
気づけば、電柱のてっぺんとかにも、いる。
高い空にしかいなかったんだけどなー。
生き方を変えたのかな、この辺りの鳶も。
鳶ったら
『なんで、空のあんな高いところを、しかもひとりで飛んでいたのだろう?』
とか、思ってるのかな?
『え、地上って、楽じゃね?』
ってことに気づいたのかな?
ナニきっかけでそうなったんだろう。
気になってるんです。鳶のこと。
インターネットで検索しても
そんな話題を見つけられないし。
もう何年も気になってるんだけど、
ただ気になってるだけ、というはなし。
なんの解決もみないですけど。
──だめですか?
……それでは、
聞いてください。
唱歌『とんび』。
(え、なんで? ですよね。
そうですよね。
はははは……)
音量にお気をつけください。
うちの人が犬の散歩に行っている間にこっそり録音したのだ。
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