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hiiro_archive153
傘を持つと家に引き返すはめになる、わたしの脳のクセ
今日も家へ引き返すことになった。
雨のせいだ。──自分のせいだけど。
出がけに傘を持つと、どうしても忘れてしまう。
うちの人と車で外出するときは
先に彼が家を出て車のエンジンをかけ、
車内でわたしを待つ。
わたしは、犬に出かける挨拶を済ませると、
靴を履き玄関を出る。
そのときには、すでに玄関の鍵穴に
鍵が差してある。
先に出た彼が、差していくのだ。
じゃらじゃらといくつもの鍵をまとめてあるこの束は、ゴツくて重い。
わたしはその鍵をくるっと回すだけ。
車に乗り込むと、運転席と助手席の間に
じゃらん、と鍵を置く。
これが、日常のパターン。
朝起きてトイレを済ませ、顔を洗い……
という一連の流れに等しいくらいの。
なにも考えることなく、体が動くほどの。
これ以外はない、という行動手順。
なのに、忘れてしまうんだ。
「あ、傘持って出なきゃ」
と玄関先でひとつ動作が加わると、
見事に忘れる。
鍵穴に差してある鍵を回すのを。
傘を持つと、鍵を忘れる。
ひとつ増えると、ひとつ抜ける。
これも、いまや定番化してしまった。
そのまま、車でブーン──。
しばらく行ったところで、
うちの人に
「あれ? 鍵は?」
と言われる。
そこでやっと気づく。
「あ、今日は傘持っちゃったから
鍵忘れた」
引き返し家に戻ると、
玄関の鍵穴にじゃらじゃらと
でかい鍵が差さったままになっている。
かわいいわたしの脳は
ひとつのことで満ち満ちている。
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