人生初、全裸フリーズを体験したはなし
人生で初めて、
本気で全裸のまま動けなくなりました。
そこは共同浴場の扉前──。
完全フリーズ。
こんなにちゃんとフリーズしたことなんてない。
だってだいぶ大人だし。
目の前にうんこが落ちていたって
すいっと避けて通れるし、
寝起きの自分の顔にがっかりしたって
「あーあ……」の一言で済ませることができる。
でも、今日は完全なるフリーズを起こした。
「これはいよいよ、よろしくないのでは……?」
との予想を遥かに超えた
目の前の光景に
震えることもできずに、完全フリーズ。
鄙びた温泉へ行って参った。
うちの人は温泉好きらしい。
もともと外遊びの好きな人で、
友人たちとバイクで共同浴場によく行く。
共同浴場とは、
温泉地で地元の人たちが管理する浴場で
公共浴場といわれることもある。
個人的な印象であるが、共同浴場の施設は
大概こぢんまりとしている。
「地元の人の憩いの場」という言葉が
ぴったりの、のんびりした雰囲気を持っている。
そういった温泉にガンガン行く。
バイクで友達と。
そういう人に温泉に誘われた。
うん。行きたくない。
わたし、出不精。
そもそも行きたくない。
豪勢な旅館に連泊なら、
なんとか行ける。
日帰り鄙びた温泉は、
なんとも行きたくない。
だから始めは元気よく断る。
「え?行かないよ!」
とは言うものの、
最近のわたしは
noteにばかり時間をかけているので
あまり「イヤイヤ」言って
「もう!創作ばっかり」と拗ねられると
後々めんどうだ。
今回は折れよう。
温泉に参ろうではないか。
わたしは、出不精であるし
人混みが苦手である。
わたしの好みに合わせて、
人の少な〜い温泉をチョイスしてくれたらしい。
彼自身もまだ行ったことのないところ。
鄙びた温泉地の奥の奥の一番奥の
もう誰も登ってこないような
温泉施設。
長い長〜いドライブを終えて
やっと辿り着いた。
どこが駐車場かわからず
通り過ぎてしまった。
どこが施設入り口かわからず
右往左往してしまった。
でも、まぁまぁまぁ……。
よくあるのですよ。
こういう、ね、奥地の建物は
古くて、人気もなくて。
こういうの、初めてじゃないんで。
大丈夫です。
あ、受け付けの人がいないと思っていたら
わたしたちの後から
車で到着したあなたが
この施設の……。
あ、受け付けの方で。
あ、お食事処が併設されていると
ホームページには載っているみたいですけど
今日は、やってないんですね。
あ、大丈夫です。
あ、そうですか。
受け付け済ませたら
あとはテキトーに……。
放任ですね。
あ、ここに「入り口」って
書いてありますけど
ここじゃないんですね。
あ、ここ!?
ここが入り口なんですね。
「宿泊者入り口」ってなってますね。
日帰りでもいいんですよね?
はーい、入りまーす!
入り口のここで、スリッパに履き替えて。
「ここではスリッパ脱いでください」
あ、もう?
さっき履いたばかりだけどね。
はい。
ここまで、
ぜ〜んぜん大丈夫です。
フツーです。
ちょっと笑けるけど。
問題なし。
問題は、このあと。
うちの人と別れ
女性用の脱衣所で準備するわけですが。
半分笑けながら
半分ビビります。
浴場の入口、
扉の横の
こんな貼り紙

そっかー。
わたし、今からここに入るんだー。
ここで初めて
ちょっと警戒した。
身構えた。
そして、浴室の扉を開けると
わたしの予想を超えた景色が待っていた。

震えることさえできずに、完全フリーズ。
えっとぉ……
床、板張りなんだけどぉ
足を、置く、気になれない……。
……あのね、温泉ってね。
温泉成分でね、洗い場がね、
ちょっとぬるついたりとかね。
あるには、あるよ。
だいぶ、わたし免疫ある方よ。
なにせ、相方が鄙びた温泉好きだから。
でも、これは。
動けない。
先に進めない……。
動けないの。


だめだ。
今日は、だめだ。
体が動かない。
先に進めない。
……いや。
わたしが未熟者なのだ。
人生の熟達者には
程遠い。
これは、温泉なのだ。
目の前のうんこ避けて通るの
当たり前だろ!
寝起きの自分の顔見てびっくりするくらいなら
そんなもん、見なくていい!
この温泉には
入らない。
3時間半、ただひたすら車に乗って。
裸になって。
しばしフリーズして。
この温泉には
入らない。
でもね。
内証の話。
ここ、誰もいないって言ったでしょ。
受け付けの人もたった一人で
「テキトーにやって」
みたいな感じだったし、
わたしたちの他に
誰一人いなかったの。
だからね。
内証ね。
わたし、男湯に入ってみた。
(※もちろん誰もいないと確認した上で…!)
「わたし、入れない」
とうちの人に言ったら
「え!?」ってなって。
「男湯入ったら?」って。
わたし、だいぶ遠慮したよ。
「え!?いいよ、いいよ!」って
連発したんだけど……。
1回出てもらって、
男湯の入り口で
見張っててもらって。
男湯は、少〜しマシだったの。
で、うちの人は
わたしがフリーズしている間に
すでに浸かったっていうから。
勇気を振り絞った。
初めてのフリーズ体験の後は、
30年振りくらいの勇気を振り絞った。
すごくいいお湯だった。
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