恋 与謝野晶子
むかしの恋の気の長さ、
のんべんくだりと日を重ね、
互(たがひ)にくどくど云ひ交はす。
当世の恋のはげしさよ、
常は素知(そし)らぬ振りながら、
刹那(せつな)に胸の張りつめて
しやうも、やうも無い日には、
マグネシユウムを焚くやうに、
機関の湯気の漏るやうに、
悲鳴を上げて身もだえて
あの白鳥(はくてうが)死ぬやうに。
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若いころ、与謝野晶子の作品にそれほど心を動かされた記憶はありません。『源氏物語』を少し読んだことはあっても、『乱れ髪』などには、当時はあまり感銘を受けなかったように思います。
けれども年を重ねてから改めて読み直してみると、少しずつ晶子の魅力に気づくようになり、今ではすっかり好きな作家のひとりになりました。彼女の言葉にあふれる自由な感性、そのしなやかな強さには、あらためて尊敬の念を抱かされます。日常を自由奔放に綴った数々の詩には、思わず共感してしまうこともしばしばです。
晶子といえば、恋を題材にした歌や詩が多く、よく知られている作品も多いのですが、私は今回ご紹介するこの詩がとても気に入っています。「昔の恋は“のんべんくだり”で、“くどくど”」という表現に、つい笑ってしまいました。
この詩を読んだら、果たして平安の歌人たちはどんな反応を見せるでしょうか?そんな想像をするのもまた楽しいものです。
