四つの袖(お夏清十郎)島崎藤村
四つの袖 島崎藤村
をとこの気息(いき)のやはらかき
お夏の髪にかゝるとき
をとこの早きためいきの
霰(あられ)のごとくはしるとき
をとこの熱き手の掌(ひら)の
お夏の手にも触るゝとき
をとこの涙ながれいで
お夏の袖にかゝるとき
をとこの黒き目のいろの
お夏の胸に映るとき
をとこの紅(あか)き口唇(くちびる)の
お夏の口にもゆるとき
人こそしらね嗚呼(ああ)恋の
ふたりの身より流れいで
げにこがるれど慕へども
やむときもなき清十郎
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島崎藤村の情感あふれる詩を読むと、どうしてもその背後に物語を感じてしまいます。
お夏と清十郎の逸話も、もとは実話といわれていますが、語り伝えられるうちにさまざまな異説が生まれています。清十郎は死罪になったという説が多いものの、お夏は狂ったとも、出家したとも、あるいは長生きして老女になったとも言われ、結末はまちまちです。
それならもう、自分の好きなように物語を作ってもいいのでは――そう考えて、勝手ながら私なりに描かせてもらいました。
本当は駆け落ちして幸せに…とも思ったのですが、江戸時代の近松さんや井原さんに叱られそうなのでやめておき、結末は見る方の想像にお任せすることにしました。
