明日をくれたのは君たちだった。~過去の記録~
人間なんか嫌いだ。
誰も近寄るな。
誰も気づくな。
誰も話しかけるな。
同じ空気を吸うな。
そう、思っていた。
あの頃のあちき―。
隙間に見つけた短期のバイト
だぁーーーーーーーーーーーーーーー。
美術館のバイト常設展に入ってあんま仕事ねーし、常設展は休んで他のバイトすっか。
あちきは求人誌を眺めた。
割のいいバイトねーかなぁ。
短期で。
目に入ったのは、専門学校の購買部のバイトだった。
どうやら新入生の入学準備の仕事のようだ。
短期だし、後腐れもねーだろ。
そう思い、応募して、外面のいいあちきは無事受かった。
アイノリなのか!? この職場は!?
男女が入れ替わり立ち代わり一緒に旅して恋愛する番組?があった。
バイトを始めた途端に、あちきはそんな空気を味わう。
社員さん以外はみんなほぼ同世代。
購買部の新入生入学準備は、ほぼ力仕事だ。
当然、男性の方が力が強いので、助け合いの現場になる。
助けてくれりゃ、嬉しい。が、それはみんな同じこと。
バイトが始まり、一週間程度で、バイト仲間に「恋心」をもつ輩も一人や二人じゃなかった。
あちきは傍観者を決め込み、休憩に入ると、みんなが体育館でバドミントンを楽しむ最中、一人で紙巻き煙草をくゆらす。
男性陣から「クールビューティー」と呼ばれていることも知らない、19歳の初春だった。
外面がいいのと優しいのは別物
初めて会った時、ショートカットで化粧っ気もない、小柄なAちゃんは、正直、女性か男性か分からなった。
名前で直ぐに女の子だと分かった。
そして、バイトで関わる内に、めちゃくちゃ「ええ子」だと気付く。
気ぃ使えるし、怒らないし、真面目。
普段は他人に感情を動かされないあちきだが、
「Aちゃんはええ子やねぇ~」と普通に言っていた。
短期のバイトも終盤に差し掛かり、バイト先の「アイノリ」現象も露わになり始めた。
Aちゃん ➡ Jくんが好き
Jくん ➡ MちゃんとAちゃんで揺れてる
Mちゃん ➡ Aくんが好き
Aくん ➡ Yちゃんが好きかも!?
あちき ➡ 課長と仲良し
こんな構図になっていた。
最終日は、社員さんもバイトも楽しく居酒屋で打ち上げ。
あちきの中ではそれで終わるはずだった。
Aちゃんの想い
数日後、あちきとAちゃんは、あちきの地元の河川敷に居た。
Aちゃんは真剣にJくんが好きだった。あちきは、たまには他人に塩を送るのも良いかと思った。
Jくんが煮え切らないので、あちきがJくんと話したが、やはり煮え切らず、結局二人が付き合うことは無かった。
また、JくんのMちゃんへの想いも実らず、AくんがMちゃんに押し切られるように付き合うことになったらしかった。
あちきは、タバコをくゆらせながら、
「これも青春の一ページってヤツなんだろなぁ」と、他人ごとに思った。
鳴りやまない電話とLINE
短期のバイトも終了したというのに、あちきを悩ませたのが、鳴りやまない電話とLINE。
つかさ、あちきは基本的に人間、特に男は嫌いなんだよ!!
と、無視するもしつこく鳴るスマホ。
壊していい?と思いつつ、電話に出る。
「今、家の近くに居るんだけど、ドライブ行かない?」
短期のバイトで一緒だった、AくんとJくんからだった。
二人は、学生時代からの親友らしく、バイト中もずっと一緒だった。
最初は、「行きません。」「行かない」「忙しい」
それから、「しつこい」「うざい。」「いい加減にして」
流石にしつこ過ぎて、笑えて来た。
ある日、観念してドライブに付き合うことにした。
深夜に、酒呑みながらドライブして、東京タワーを見に行く。
車から降り、
「東京タワーレ〇プ!」なんて言いながら、Aくんが東京タワーを真下から撮るから、キャラ崩壊して爆笑してしまった。
クソ馬鹿野郎ども! 憎めねーな!と思ったら、あちきは変わっていた。
人間嫌いも、男嫌いも、二人に溶かされていった。
これがあちきの青春の一ページだった
二人に出会ってから、もう二十四年経つ。
未だに二人とは仲がいい。
腐れ縁、と言ってはいるものの、既に大事な仲間だ。
もしもあの時、あちきが「しつこい!」と着信拒否していたら、あちきは今も変わらず、人間嫌いで偏屈な人間だったと思う。
あの頃の三人でのドライブが、あちきの青春の一ページだったのね。
二人には感謝してるんだ。
どうせこれは読まれないから言っとく。
「ありがとう。」
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