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「最低賃金」で4か国語を求める求人に、応募が集まらないのは当然だ

百貨店の求人を眺めていて、思わず二度見した。

接客のパート求人なのに、給与は「最低賃金」。

ここまでは、まだ珍しい話ではない。

ところが必須条件を見ると、

韓国語・中国語・英語・フランス語の4か国語。

……いや、ちょっと待ってほしい。

その人材を、最低賃金で採用しようとしているのか?

率直に言えば、かなり無理のある求人だと思う。

もちろん、4か国語を話せる人が全員高給を求めるとは限らない。

語学が趣味の人もいるだろうし、学生や主婦など、給与以外の条件を重視する人もいる。

しかし、企業が「4か国語を必須条件」として掲げるなら、それは単なる接客スタッフではなく、明確な付加価値を持った人材を求めているということだ。

だったら、その付加価値に見合った報酬を提示するのが普通ではないだろうか。

「人手不足だから採用できない」の前に

最近は、何かにつけて「人手不足」という言葉が使われる。

求人を出しても応募が来ない。

採用しても定着しない。

必要な人材が集まらない。

すると企業側は、

「今はどこも人手不足だから」

「若者が働きたがらない」

「外国人観光客が増えて人材が必要なのに、応募がない」

と嘆く。

でも、本当にそれだけなのだろうか。

求人市場は、企業が一方的に条件を決めて労働者を選ぶ時代から、労働者側も求人を比較して「この条件なら働く」と選ぶ時代に変わっている。

特に語学のように、明確なスキルを求めるならなおさらだ。

4か国語を使える人材が、最低賃金の求人と、より高い給与を提示する求人を並べて見たとする。

果たして、どちらを選ぶだろうか。

答えはかなり分かりやすい。

「必須条件」は企業側の要求だ

求人を見ると、ときどき驚くほど多くの条件が並んでいる。

「経験者歓迎」

「専門知識必須」

「複数言語必須」

「高いコミュニケーション能力」

「臨機応変な対応」

「責任感のある方」

「接客経験者優遇」

「土日祝勤務可能な方」

こうして条件を積み上げていった結果、最後に提示される給与が最低賃金。

これでは、求職者から見れば、

「求めているものと、払うもののバランスがおかしくない?」

となる。

企業側は「優秀な人が欲しい」と言う。

でも、優秀な人ほど自分の市場価値を理解している。

自分が何を提供できるのか。

どんな仕事ができるのか。

他社ならいくらで評価されるのか。

そういう情報を比較したうえで仕事を選ぶ。

だからこそ、求人票に「必須」と書けば書くほど、企業側にも相応の説明責任が生まれると思う。

なぜ、そのスキルが必要なのか。

そのスキルに対して、どれくらいの待遇を用意するのか。

そこまで考えた求人でなければ、単なる「企業側の希望条件」で終わってしまう。

語学力は「無料のオプション」ではない

特に外国語については、企業側が軽く考えすぎている求人を見かけることがある。

「英語できる方」

「中国語できる方」

「韓国語できる方」

などと書いておけば、自然に対応できる人が来ると思っている。

でも、語学力は一朝一夕で身につくものではない。

まして4か国語となれば、相当な時間と努力が必要になる。

そして重要なのは、単に「話せる」だけではない。

接客で使うなら、

相手の意図を理解する。

文化的な違いを踏まえて対応する。

商品の説明をする。

クレームやトラブルにも対応する。

場合によっては専門的な内容を外国語で説明する。

そこまで求められる可能性がある。

つまり、その人材がいることで企業が提供できるサービスの幅が広がる。

売上にも、顧客満足度にも、ブランドイメージにも影響する可能性がある。

それなのに「最低賃金でお願いします」は、どう考えてもアンバランスだ。

「初任給40万円」が当たり前、という意味ではない

ここで誤解してほしくないのは、

「4か国語話せるなら絶対に初任給40万円払え」

という単純な話ではない。

職種、勤務時間、経験、仕事内容、勤務地、責任範囲によって適正な給与は変わる。

ただ、少なくとも企業側が高度なスキルを「必須」とするなら、そのスキルを持つ人材が他社からどのような評価を受けるのかを考える必要がある。

「最低賃金で募集して、応募が来なかった」

「最近の若者は働かない」

ではない。

むしろ、

「その条件で働きたい人が市場にどれくらいいるのか」

を考えるべきだ。

これは企業の採用担当者にとって、かなり重要な視点だと思う。

求人は「お願い」ではなく市場への提示だ

求人票は、企業から労働市場へのメッセージだ。

「私たちはこういう仕事をしてほしい」

「これだけの能力を持つ人がほしい」

「その代わり、これだけの給与と待遇を用意します」

という交換条件を提示するものだ。

だから、条件が厳しいなら待遇を上げる。

給与を上げられないなら、求める条件を減らす。

あるいは教育制度を整えて、未経験者を育てる。

そうやってバランスを取るのが採用戦略ではないだろうか。

「全部できる人が欲しい。でも給料は最低限」

では、そりゃ応募が来ない。

仮に応募が来ても、本当に欲しい人材ほど他社へ流れてしまう。

そして残った人材に対して、

「最近は人材の質が落ちた」

などと言い始める。

これでは永遠に採用問題は解決しない。

人手不足ではなく「条件不足」の可能性

もちろん、本当に人が足りない業界もある。

人口減少も進んでいる。

労働力人口そのものが減っている以上、昔と同じ感覚で採用できないのは当然だ。

だからこそ企業側には、今まで以上に「選ばれる求人」を作る努力が求められる。

給料。

休日。

勤務時間。

福利厚生。

職場環境。

キャリアアップ。

そして、求めるスキルとのバランス。

全部を見られている。

「人手不足だから仕方ない」ではなく、

「なぜ、この条件でうちの会社を選ぶ必要があるのか?」

を企業側が考える時代になったということだ。

4か国語を話せる人に最低賃金を提示して、

「応募が来ません」

と言う。

それを単純に「人手不足」で片付けてしまうのは、少し違う気がする。

人がいないのではない。

その条件では選ばれないだけかもしれない。

採用に困っているなら、まず求人票を見直す。

求めているスキルと給与は釣り合っているのか。

その仕事を、自分自身がその条件でやりたいと思えるのか。

そこから考え直した方がいい。

労働者に「市場価値を高めろ」と言うなら、企業側も自分たちの求人の市場価値を考えるべきだ。

これからの採用市場では、

「人が来ない」と嘆く会社より、「この会社で働きたい」と思われる条件を作れる会社が選ばれていく。

人手不足時代に必要なのは、求人広告を増やすことではない。

人から選ばれる求人に変えることだ。

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