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3行日記 #245(おつくね、坂本龍一、ひゅんひゅん)

五月三日(土)、晴れのちくもり
穀雨、牡丹華、ぼたんはなさく、牡丹の花が咲き始める。

午前、福井へ。昨年の連休は鈍行列車で帰省したが、敦賀から福井までの電車が満員だったので、今年はおとなしく特急と新幹線を利用した。

駅に着いてからバスに乗った。両替は旧千円札しかできません。先着二名様までは私が両替できます。遅れてしまうのでご協力をお願いします。さっきは十五分遅れて着きました。よく喋るおじさんの運転手だった。暑かったので上着を一枚脱いでいると、おじさんがバックミラーを見ながら話しはじめた。暑いでしょ。一番後ろの席はエンジンの熱が伝わるから。窓を開けると私みたいに、マスクの下が鼻水だらけのぐちょぐちょになってしまいますからね。冷房もつけてるんですけど……と話が止まらない。水田の中をバスが軽快に進む。苗を何段も積んだ軽トラが畦道を走っていた。すでに田植えを終えた田んぼもあった。二十分ほど走って東郷地区に着いた。通りの真ん中に水路が流れていて、顔の半分だけをぬらりと出した薄気味悪い河童の像があった。

昼、〈トックリ軒〉へ。店構えが渋い。たまたま入ったのだが、雑誌で取り上げられるような、地域で有名な定食屋のようだった。ソースカツ丼、オムライス、ひね鶏のもも焼きを注文した。ソースカツ丼は甘めのたれでこれまで食べたなかで一番美味しかった。オムライスはケチャップの甘さが控えめで炒飯のようにパラパラしていた。添えられた福神漬けも良かった。ひね鶏は噛みしめるほど旨味が感じられた。大満足して外に出ると、前にあるバス停の名前がトックリ軒前だった。住民のシンボル的存在らしい。時刻表の上に3Dでつやつやしたおにぎりのキャラクターがいた。

午後、少し時間が空いたので、あたりを散歩した。寺が多く、背の高い銀杏の木が何本もあった。木、竹、針金などを使った手作りの絵馬を飾っている寺を見つけた。酒蔵の脇の水路を進んだ先に気持ちの良い原っぱが広がっていた。神社と寺の間にある公園の古いブランコに乗った。目の前にある背の高い銀杏の木の根元に、何年前のものなのだろうか、茶色く干からびた銀杏がたくさん転がっていた。

東郷地区には、テクノ法要を見るためにやってきた。会場の照恩寺に入ると、お願いします、と男性から声をかけられた。出演者の誰かと間違われたようだ。近隣のお店の物産コーナーで、駄菓子と飲み物を買った。妻はひやしあめを頼んだのだが、水ではなくソーダ水で割られて、ひやしあめサイダーだった。綿菓子を無料で配っていたので、何十年かぶりに食べた。口にいれた瞬間、消えてなくなった。隣のテーブルでカレーを食べていた人たちに、催しの主催者らしき男性が挨拶をしている。先ほどお願いしますと声をかけてきた男性だ。白髪で太くて丸いフレームの黒ぶち眼鏡をかけている。どことなく雰囲気が坂本龍一に似てるねと妻と話していると、その男性の正体はそのお寺の住職だった。坂本龍一やYMOの音楽の影響を受けたらしい。開幕。まずは地元の吹奏楽団の演奏だった。谷村新司似の指揮者のおじさんが軽快に冗談を飛ばしていた。いよいよ次はテクノ法要。照明が落とされ、青や黄色の光の筋が飛び交った。最後まで見て、説法も聞きたかったが、最終バスの時間が迫っていたので退散した。

夜、実家で、カボチャの煮物、揚げとネギの煮物、胡麻豆腐、漬物。父にスマホの相談を受けた。アプリが裏で開いたままになっていたので、消し方を伝えた。二十個くらいアプリが開いたままになっていて、ひゅん、ひゅん、と人差し指でひとつずつ上に飛ばした。しばらくして母も同じ症状だと判明すると、自分のことは棚に上げて父が母にやんややんや言っていた。

#3行日記

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