SHOW MUST GO ON
2021年9月、本多劇場。
久しぶりの加藤健一事務所。タイトルに惹かれたことは間違いない。コロナ禍でエンタメは不要不急とカテゴライズされ、中止になった数々の公演。4回の緊急事態宣言を経て経験を積み、どうにかこうにか再開されるようになった今、こんなときこそ楽しみは必要だし、エンタメの、演劇の底力を見せつけてほしいと思っていた。まさに、Show must go on!!な気分だった。
ブロードウェイのホテルの1室に、資金繰りに苦しむ演劇プロデューサーのミラーと、彼を取り巻く劇団の人々、自作の上演を今か今かと心待ちにしている新人作家、今日こそ溜まっているツケを払ってもらおうと迫ってくる支配人が出入りしている。それぞれに自分たちの目的を果たそうとあの手この手を繰り広げるが、なかなか事態は進展しない。
そこへ芝居のスポンサーが現れ、本人が名前も顔も出せないくらいの大物資産家で、この話が通ればミラーたちには地獄に仏、渡りに船、こんなうまい話はないのだが、名前も顔も出せないだけに代理人が慎重で、いまひとつミラーたちを信頼してくれない様子。
そんな大物がスポンサーについたと知ったホテルのオーナー、ワグナーも、これでやっと多額のツケに返済のめどが立ったと、スポンサーを逃がすまいと躍起になって、いつの間にかミラーたちとワグナーに協力関係(共犯?)まで芽生え、なんとか代理人を丸め込もうと必死の攻防。
やっとのことでスポンサーから小切手を受け取るが、なんと、結局信頼してもらえなかったために換金不能。現金に換えられないまま、小切手があるからとまたしてもツケで衣装や美術を整えて、どうにかこうにか芝居の初日を迎えた。幕を下ろすまでの間にも金を払え払わないのすったもんだがミラーの部屋で繰り広げられており、このままだとミラーたちは詐欺罪で捕まってしまうところまで追い詰められていた。
一方、芝居の出来は頗るよく、観に来ていたホテルのスポンサー(大株主?)がミラーの部屋を訪ねてきて、ホテル地階にある劇場でのロングランを条件に、芝居の資金も保証してくれることにまとまった。ミラーたちは口先三寸の嘘八百でなんとかピンチを切り抜けたうえ、芝居の成功まで手にしたのだった。めでたしめでたし...
窮地を切り抜けようという悪知恵のよく働くこと、観ていて呆れるやら可笑しいやら、とにかくよく笑った。
みな、それぞれに生活がかかっているので必死すぎ(笑)。生活どころか命がけで、相手をごまかすためなら脚本家まで殺す(死んだふり)が、それがみんな、ミラーの部屋の中だけでの出来事で、外に出るやまともな演劇人の顔をしているところも滅茶苦茶笑える。部屋の中では公演遂行のための芝居が、部屋の外では本物の芝居が進行している。こうなると本物の芝居はどちらか分からなくなってくるが(笑)
まっとうぶったって、もうかなり無理だよー、やり過ぎやり過ぎー、と突っ込まずにはいられない。しまいには、ミラーたち芝居人と、ホテル支配人側とが一緒になって脚本家の葬式を始めて、皆で賛美歌を歌う。しかも、ちゃんとハモって(笑)。このハモりが綺麗なら綺麗なほど、笑える。葬式の「ふり」なのに、賛美歌は思わずちゃんと歌っちゃうところが、律儀と言うか。
ラストにはきっとスポンサーが現れて、この窮地から八方よしで救ってくれるのだろうとは思っていたが、それがホテルのスポンサーだったのにはこれまた笑った。そんな近くに理解してくれる人がいたんじゃん!名前も出せないような大物資産家を頼る必要なんて全然なかったじゃーん!という...灯台下暗し、とはこのこと。
過去には原題『Room Service』、『It's Show Time』などの上演タイトルでやったことがあるそうだが、今回の『Show Must Go On』がいちばん内容にしっくりくる上演タイトルだと思った。確かに事件はルーム・サービスを頼もうとして頼めないところから始まるのだが、事態はまったくそこに留まらないので。
加藤健一さんのお芝居はいつも楽しくて、たくさん笑わせられつつ、ところどころちくっと痛いような皮肉や諧謔、カリカチュアがあるので、ただ楽しいだけで終わらないところが好きだ。人間の表も裏も描く作品をこれからも上演し続けてほしい。
頑張れ、加藤健一事務所!
