【みんな騙されてた】ピーク音を隠蔽!? 洋上風力のアセス評価が国際常識から外れすぎている件
私、草島はこの2026年7月に、最近(6月12日)洋上風力発電500基を達成した台湾を調査視察した。今、台湾の洋上風発のトレンドは世界最大級の14MWで100基以上建設されている。遊佐沖や秋田、新潟の計画は15MWだからほぼ同規模だ。その台湾の14MW風車はどこに建ててるのか。ほぼ40km沖だ。私はその14MW風車を自分の目で確かめたくてチームで速い船をチャーターし現場を観たが到着まで2時間かかった。遊佐沖の15MWは2km沖だ。新潟も同様。秋田の潟上は1.3Km沖。僕らチームは台湾政府や環境NGOと意見交換したが、NGO や漁業者から「建設のパイル打ちの音がもの凄く大きいから注意して」と複数の方々から忠告を受けていた。
だから、酒田、遊佐で8月7日、8日に開催の遊佐町沖洋上風力発電事業の環境影響評価準備書の説明会において、事業者およびコンサルタント側が「事業区域周辺への影響は全く問題ありません」と平然と説明したことに強い衝撃を受けた。
そこで彼らが示した予測結果が、以下の図表である。

彼らが示した評価値は一見すると何の問題もない数値に見えるが、ここには重大な欺瞞がある。モノパイル打設音の本質は、ジェット機の至近距離や爆発に匹敵する「もの凄い衝撃音(爆発波)」であるにもかかわらず、提示された数値はこれをすべて時間平均した「等価騒音レベル($L_{eq}$)」といって衝撃音を平均化したものだからだ。それに気付いた私は会場で早速尋ねた。


気中音(148.5 dB)評価のポイント ピーク音(赤い波形): 148.5 dBは、ジェット機のエンジンのすぐ近くに匹敵する強烈な物理的衝撃波だ。これが数秒おきに沿岸部へ向けて放たれる。
等価騒音レベルの罠(青い点線): 図ではアセスの環境基準などで用いられやすい85 dB付近を想定して$L_{eq}$の線を引いているが、長時間の無音によって、148.5 dBの衝撃波が書類上では「安全な連続音」として処理されてしまう。


水中音 この図が示す247.5 dBという衝撃波は、台湾の洋上風力開発においてタイワンウスイロイルカなどの海洋哺乳類への不可逆的な聴覚障害を防ぐために厳格に規制されているレベルの殺傷能力を持っている。それを無音時間で「140 dBの連続音」のように希釈してしまう評価手法の欺瞞が、この等価騒音レベルである。
2. 数値が極限まで希釈される「カラクリ」の検証
1. 4時間の作業における「実質的な発音時間」の算出
モノパイル打設における1回のハンマー打撃(衝撃波)が持続する時間は、およそ0.1秒程度。これを基に計算する。
総作業時間: 4時間 = 14,400秒(240分)
総打撃回数: 3,500回 〜 6,800回
【実際に衝撃波が発生している合計時間】
最小(3,500回)の場合: 3,500回 × 0.1秒 = 350秒(約5.8分)
最大(6,800回)の場合: 6,800回 × 0.1秒 = 680秒(約11.3分)
2. 計算結果から見える「過小評価」の正体
上記の計算から、事業者が「4時間の連続作業」と呼んでいるものの実態は以下のようになる。
項目時間(分)4時間における割合実質的な衝撃波の発生時間約5.8分 〜 11.3分約2.4% 〜 4.7%打撃と打撃の間の「無音時間」約228.7分 〜 234.2分約95.3% 〜 97.6%
つまり、4時間ずっと激しい音が鳴り響いているわけではなく、4時間の作業枠のうち約95%以上は「ハンマーを引き上げている無音・微音の時間」となる。
等価騒音レベル($L_{eq}$)は、この「95%の無音時間」も含めてエネルギーを平均化するため、計算機上では凄まじい衝撃波が「とても静かな連続音」に変換されてしまう。
したがって、衝撃音であるモノパイル打設音を評価するには、4時間(または16時間)の平均値ではなく、実質11分しか発生しないピーク音の最大値を直接評価する事が必要なのだ。
実は、この評価の欺瞞は遊佐沖洋上風発だけではないようだ。
日本の現行の環境影響評価法および関連する法制度(発電所環境影響評価等ガイドライン)の枠組みにおいて、秋田、新潟、北海道など全国で進められている洋上風力発電事業の環境影響評価準備書・評価書では、例外なく一貫して時間平均である等価騒音レベル($L_{eq}$ または $L_{Aeq}$)による評価が採用されている。
1. 全国の洋上風力アセスメントにおける一律の共通性
日本国内における風力発電の環境影響評価は、環境省および経済産業省が定める「環境影響評価法」および「発電所に係る環境影響評価の項目及び手法の選定に関する指針」に基づいて行われる。
評価手法の標準化: 国内のすべての環境アセスメントにおいて、騒音・低周波音の予測には「日本音響学会の建設工事騒音予測モデル(ASJ CN-Model)」や一般的な環境騒音の予測手法が標準的に適用される。
$L_{eq}$(等価騒音レベル)の採用: これらの公的モデルや評価基準はすべて「等価騒音レベル($L_{eq}$)」を指標として設計されているため、秋田であれ、新潟であれ、北海道であれ、事業者が独自に選定しているのではなく、制度上 $L_{eq}$ による評価を行わざるを得ない仕組みになっている。
2. 各地域のアセスメントにおける実態
秋田県(由利本荘市沖、能代市・三種町・男鹿市沖など)の状況:
国内で最も商業運転やアセスメントが先行している海域の一つだが、建設工事に伴う騒音の予測では一貫して日中の稼働時間を対象とした等価騒音レベル($L_{Aeq}$)が用いられており、140 dBを超えるような気中ピーク音の絶対値が住民向けに直接評価・提示されることはあなかった。
新潟県(村上市及び胎内市沖など)の状況:
水中音の評価においても、海生生物(イルカ類や魚類等)に対する急性的な物理的損傷を防ぐための「ピーク音圧レベル($L_{peak}$)」や「単発曝露レベル(SEL)」の法定の絶対値基準が存在しないため、アセスメント書上では連続音のバックグラウンドノイズや時間平均化された指標をベースにした議論に終始している。
北海道(石狩湾新港沖など)の状況:
陸上風力での低周波音被害が長く問題視されてきた地域だが、洋上風力における基礎打設時においても、陸上の敷地境界等における評価点はすべて $L_{eq}$ で計算されており、突発的な衝撃による圧迫感や睡眠阻害といった実感を捉える仕組みはアセスメントに組み込まれていない。
3. 構造的な問題点
このように、秋田、新潟、北海道をはじめとする全国のプロジェクトは、いずれも「日本の現行法制度および国のガイドラインが $L_{eq}$ 評価しか求めていない(ピーク音の評価を義務付けていない)」という同一の前提の元で実施されている。そのため、事業者が法的手続きの範囲内で書類を作成する限り、衝撃音(パルス音)のピーク値が平均化によって隠蔽される構造は全国共通の「抜け穴」となっている。
こんな事やってるのは日本だけではないのか?
諸外国の洋上風力開発の環境規制と比較して、日本のように「時間平均である等価騒音レベル($L_{eq}$)の評価のみに依拠し、突発的なピーク音($L_{peak}$)や単発曝露レベル(SEL)の絶対値規制を義務付けていない」という現状は、国際的な環境保全のスタンダードから見ても非常に特殊だ。
欧米やアジアの主要国における法規制の現状と比較すると、日本の制度的空白がより鮮明になる。
ヨーロッパ(特に洋上風力の先進地であるドイツやオランダなど)におけるモノパイル打設音の規制は、アメリカのNOAA基準と並び、世界で最も厳格な法制化と科学的リスク管理がなされていることで知られている。
とりわけドイツでは、連邦海上航船水路庁(BSH:Bundesamt für Seeschifffahrt und Hydrographie)が主導し、1990年代から2000年代にかけての科学的知見に基づき、業界標準ではなく「法律上の絶対値規制」としてデュアルクライテリア(二重基準)を確立・義務化した。
ドイツ(BSH基準)を中心としたヨーロッパにおける具体的な法制度と規制の実態は以下の通り。
1. BSH基準(ドイツ)における「デュアルクライテリア」の法制化
ドイツの洋上風力開発許可プロセスでは、海洋生態系(特にゼニガタアザラシやネズミイルカなど)の聴覚保護を目的として、打設地点から750メートル離れた地点において、以下の2つの数値の両方を遵守することが法律上の条件とされている。
ピーク音圧レベル(Peak Sound Pressure Level / $L_{peak}$)の絶対値規制
基準値の目安: 一般的に 160 dB re 1 $\mu\text{Pa}$(750m地点)を超えてはならないという厳格な上限が課される。
目的: 瞬間的な衝撃波による海生生物の組織破壊や即時的な永久性聴覚障害(PTS)を物理的に阻止するためだ。
単発曝露音圧レベル(Sound Exposure Level / SEL)の絶対値規制
基準値の目安: 一般的に 160 dB re 1 $\mu\text{Pa}^2\text{s}$(750m地点、単発打撃あたり)の制限が課される。
目的: 打撃ごとのエネルギー蓄積による聴覚疲労や累積的なダメージを防ぐため。
日本の環境アセスメントが「時間平均($L_{eq}$)」で数値を希釈してごまかす構造をとっているのに対し、ドイツでは「一打ごとの瞬間値とエネルギーの絶対値」が法律で縛られているため、平均化による隠蔽は一切通用しない。
2. 「平均すれば基準内」が通用しない法的拘束力と厳格な運用
ドイツをはじめとする欧州の枠組みでは、事業者が提出する予測値が基準を超えるおそれがある場合、あるいは実際の施工時に基準を超過した場合、以下のような厳しい法的措置が取られる。
騒音低減システム(NMS)の設置義務化が前提:
予測計算の段階でそのままではBSH基準の160 dBを超えると判定されるため、事業者は最初から「ビッグ・バブルカーテン(Big Bubble Curtain)」や「ハイドロ・サウンド・ダンパー(HSD)」、あるいは杭の外側に被せる防音スリーブなどの高度な物理的低減装置の導入を計画書に組み込むことが法律上義務付けられています。これなしでの打設許可は下らない。
リアルタイムモニタリングと「工事即時停止(Shutdown)」の法的義務:
施工中も水中の音響計測がリアルタイムで行われます。もし規定された絶対値(ピーク音やSEL)を超える数値が観測された場合、あるいは防音設備の不備やトラブルが発覚した場合は、監督官庁の権限により即座に工事の中止(法的な操業停止命令)が命じられる。
3. イギリス・オランダ・デンマーク等における法的枠組み
ドイツ以外の北欧・西欧諸国においても、EUの「海洋戦略枠組指令(MSFD)」などの法的拘束力のある環境目標に基づき、水中騒音の抑制が徹底されている。
イギリス(MMO / 担当官庁):
海洋管理機構(MMO)の規制のもと、欧州保護種(EPS)ライセンスの取得が必須とされています。打設音による海洋生物の攪乱を最小限に抑えるため、事前の音響モデリングの提出はもちろん、クジラ類が近海にいないことを確認する「ソフトスタート(徐々にハンマーの出力を上げる手法)」や、マリン・マッマ・オブザーバー(MMO)の乗船・監視が法律で義務付けられている。
オランダ・デンマーク:
北海の生態系保全を共同で行う国際協定(オスロ・パリ条約:OSPAR)の枠組みもあり、水中騒音の年間総エネルギー量や許容打設日数の制限など、科学的データに基づいた厳格なライセンス条件が課されている。
2. アメリカ(NOAA:海洋大気庁)
1. 採用されている「二重基準(デュアルクライテリア)」の具体像
NOAAの基準では、海洋哺乳類の聴覚障害(PTS:永久性閾値移動、およびTTS:一時的閾値移動)を防ぐため、以下の2つの指標の両方を評価・クリアすることを事業者に義務付けている。
ピーク音圧レベル(Peak Sound Pressure Level / $L_{pk}$)
定義: 周波数加重を行わない(Unweighted)瞬間的な最大音圧(単位: dB re 1 $\mu\text{Pa}$)。
目的: 1打ごとの圧倒的な衝撃波による、組織の物理的損傷や即時的な聴覚破壊を防ぐための絶対値規制。
24時間累積曝露音圧レベル(Cumulative Sound Exposure Level / $SEL_{cum}$)
定義: 24時間の間に受ける音響エネルギーの総量を累積し、動物の耳の感度特性に合わせた周波数加重(Frequency-weighted)を施した指標(単位: dB re 1 $\mu\text{Pa}^2\text{s}$)。
目的: 繰り返し打ち込まれる打撃音の総エネルギーによって、聴覚細胞が受ける蓄積的なダメージを防ぐ。
2. 動物の「聴覚グループ」別の細分化された閾値
アメリカの制度が極めて科学的かつ厳格であるゆえんは、海洋哺乳類をその聴覚特性によっていくつかのグループに分類し、グループごとに異なる閾値(Threshold)を設定している点だ。
低周波ヒゲクジラ類(Low-Frequency Cetaceans): シロナガスクジラやザトウクジラなど。低周波の音に敏感。
中周波ハクジラ類(Mid-Frequency Cetaceans): バンドウイルカなどの多くのイルカ・クジラ類。
高周波ハクジラ類(High-Frequency Cetaceans): ネズミイルカなど。
鰭脚類(アザラシ類・アシカ類等): 水中および気中における聴覚グループ。
例えば、モノパイル打設のような「衝撃音(Impulsive Sound)」に分類される作業では、グループごとに「ピーク音はこの数値以下」「24時間累積SELはこの数値以下」というマトリクス状の明確な規制値が定められている。
3. 法的拘束力とモニタリングの義務
ハーザス・テイク(Harassment)の禁止: MMPAでは、海洋哺乳類を意図的・偶発的に傷つけたり、行動を攪乱したりする行為(Harassment:攪乱・傷害)を原則として禁止している。音響基準を超えるおそれがある場合、事業者はIHA(Incidental Harassment Authorization:偶発的攪乱許可)やLOA(Letter of Authorization)の取得が法的に義務付けられる。
マイトゲーション(緩和措置)の強制: 予測計算の結果、上記のピーク音や累積SELの閾値を超えるエリア(マイトゲーション・ゾーン)が生じる場合、事業者はバブルカーテン(Bubble Curtain)の設置や、マリンマッマル・オブザーバー(MMO:海洋哺乳類監視員)による目視・受動音響モニタリング(PAM)を行い、動物が接近した際の工事即時停止(Shutdown)を行うことが許可の絶対条件となる。
このように、アメリカ(NOAA/NMFS)の枠組みでは、「平均化してごまかす($L_{eq}$ のみ)」というアプローチは一切存在せず、「一瞬の最大値(ピーク)」と「累積エネルギー(SEL)」の双方が生物の生理学的限界値で厳格に規制されている。
3. 台湾
台湾における洋上風力発電事業の環境規制は、アジア圏における先駆例として、欧州(ドイツBSH基準など)の仕組みを取り入れる形で急速に法整備が進められました。その背景と具体的な制度の詳細は以下の通り。
1. タイワンウスイロイルカ(台湾白海豚)の保護を軸にした法制度
台湾の西海岸一帯は、絶滅危惧種に指定されている固有亜種「タイワンウスイロイルカ(Taiwanese humpback dolphin / Sousa chinensis taiwanensis)」の重要生息域と重なっている。
大規模な洋上風力開発(モノパイル打設等)がこの生息域の至近で行われることから、海洋生態系、特に海生哺乳類の聴覚保護を目的として、環境アセスメント(EIA)の許可条件に厳格な水中音響規制が組み込まれた。
2. 台湾における具体的な水中音響規制の基準
台湾の制度では、ドイツ等の欧州基準に準じて、打設地点から一定の距離における音響エネルギーの絶対値制限が課されている。
750メートル地点でのSEL制限: 打設地点から 750メートル離れた地点 において、単発曝露音圧レベル(SEL: Sound Exposure Level)が 160 dB(re $1\text{ }\mu\text{Pa}^2\text{s}$) を超えないようにすることが義務付けられている。
数値基準の運用: この基準をクリアするため、事業者は予測計算の段階だけでなく、実際の施工時においてビッグ・バブルカーテンなどの高度な騒音低減対策を講じることを前提にアセスメントが承認されます。また、複数の打設地点での累積的影響を防ぐため、原則として「同時に1箇所しか打設しない」といった操業上の制限も課されている。
このように、台湾では日本のような「時間平均($L_{eq}$)による数値の希釈」に頼るのではなく、「生息域の至近(750m地点)における絶対値(SEL 160dB)」を法的な許可条件として直接規制するアプローチが採用されている。
まとめ:日本との決定的な違い
アメリカ(MMPA/NOAA)およびヨーロッパ(ドイツBSH基準等)の法制度を総括すると、洋上風力発電におけるモノパイル打設音に対して以下の共通した原則が貫かれている。
「衝撃音」と「連続音」の完全な区別:
爆発的パルス音を、通常の道路や工場の連続騒音と同じ「時間平均($L_{eq}$)」で評価すること自体が、国際法務・科学の常識ではあり得ない。絶対値による生態系防衛:
生理学的損傷の閾値(PTS等)を基準とした「ピーク音」と「SEL」の二重基準(デュアルクライテリア)が法律上の上限として機能している。違反時のペナルティと工事停止:
基準を超える場合は高度な低減装置の導入が強制され、達成できなければプロジェクト自体が法的に差し止められる。
これらと比較したとき、日本国内の制度が「時間平均による数値の希釈」を許容し、ピーク音の絶対値規制を持たないまま進められていることがいかに国際基準から乖離した「ガラパゴス的な抜け穴」であるかが明確になる。なぜ日本だけが取り残されているのか?
諸外国が次々と「ピーク音・衝撃波」の規制へとシフトしていく中、日本がいまだに古い基準を引きずっている主な理由は以下の通り。
法律の縦割り・流用: 日本の環境影響評価法や騒音に関わるガイドラインの多くが、もともと「道路交通騒音」や「工場・通常の建設工事」といった、継続的な騒音を前提に作られた仕組みをそのまま洋上風力にスライドさせてしまっているため。
「気中音の法規制は『あってもなきが如し』」
日本における「気中騒音の一定の基準」とは、主に環境基本法に基づいて国が定める「騒音に係る環境基準」、およびそれを担保するために騒音規制法に基づいて自治体が定める「規制基準(要請限度)」のことを指す。
これらは地域の用途地域(住居地域や商業地域など)の性質に応じて、昼間と夜間で以下のような数値が設定されている。
1. 国の環境基準(一般地域における基準値の例)
AA地域(療養施設・社会福祉施設が集合する特に静穏を要する地域):
昼間(6時〜22時):50デシベル以下
夜間(22時〜6時):40デシベル以下
A地域(主として住居の用に供される地域):
昼間:55デシベル以下
夜間:45デシベル以下
B・C地域(商業地域や工業地域など):
昼間:60デシベル以下
夜間:50〜60デシベル以下
「気中基準がある」と言いながら、実は全く機能していないカラクリ
前述の通り、気中騒音については一見すると「55 dB以下」といった厳しそうな数値基準が存在しているように見える。しかし、これがモノパイル打設音の評価において「全く役に立たない、あるいは免罪符として悪用されている」のには、決定的な理由がある。
評価指標が「時間平均($L_{eq}$)」であることの罠
これらの環境基準や規制基準はすべて「一定時間(昼間なら16時間など)のエネルギーを平均した等価騒音レベル」で評価することを前提としている。そのため、瞬間的に148.5 dBというジェット機並みの爆発的衝撃波が発生していても、前後の長大な無音時間と足し合わされて平均化されれば、計算上はあっさり「55 dB以下(基準クリア)」に収まってしまう。
建設作業騒音の「除外」または「特例」
騒音規制法などでは、工場や事業場の通常の稼働音に対しては厳しい規制基準がかかる一方で、期間限定の「建設作業騒音(杭打ち機やハンマー等)」については、作業時間の事前届け出や簡易な改善勧告の対象にとどまり、上記の一般環境基準の枠外として扱われたり、大幅に緩い基準が適用されたりする抜け穴がある。
水中音に関する法規制の欠落: 海中の生物や水音に対する国の法的な絶対値規制(「何dBを超えてはならない」という上限)が法律上存在しないため、事業者が $L_{eq}$ のみで手続きをクリアできてしまうこと。
このように、「衝撃波を平均化して隠す評価手法」がまかり通っているのは、国際的な環境ルールの水準から見れば日本特有の構造的欠陥と言える。
「モノパイル打設音の衝撃波を $L_{eq}$(時間平均)で平均化することの不当性」や「欧米・台湾のようなデュアルクライテリア(ピーク音とSELの二重基準)との落差」は明確だ。
日本の環境アセスメントの現場において、この問題がこれまで見過ごされてきたのには、以下のような構造的な理由があるようだ。
1. 専門家や学識経験者も「既存の枠組み」を踏襲してきた現実
日本国内の環境影響評価は、長年「建設工事騒音=日本音響学会の予測モデル(ASJモデル)を用いるもの」という縦割りの慣習に縛られてきた。学術界やコンサルタント会社も、環境省のガイドラインが $L_{eq}$ を標準指定しているため、道路工事や一般的なビル建設と同じ延長線上でモノパイル打設を捉えてしまい、「爆発的衝撃音」という物理的特性の本質から目を背けたまま計算を回し続けてきた歴史がある。
2. 水中音・気中音の「ピーク評価」の法規制の空白
日本には、海生生物への急性被害を防ぐための水中音の絶対値規制や、気中における衝撃波のピーク値規制が存在しない。そのため、事業者も行政(環境省や自治体)も「法律上の基準( $L_{eq}$ の環境基準など)を満たしているから問題ない」という縦割り・前例踏襲の論理に閉じこもりがちであり、その矛盾を誰も正面から突き崩してこなかったのが実情のようだ。
結び
「作業時間4時間・打撃回数数千回」の実態のうち、実に95%以上が「無音の隙間」であるという事実。水中247.5 dB、気中148.5 dBという、生命や生活を直撃する破壊的な瞬間最大エネルギーが、その無音時間との「平均化」によって完全に隠蔽されているカラクリ。
事業者が法的手続きの範囲内で書類を作成する限り、どれほど破壊的な衝撃波であっても、書類上は「基準を満たす連続音」として合法化されてしまう。この問題は、単なる個別事業の不手際などではない。日本全国で進められている洋上風力計画全体が抱える、現在の環境影響評価制度の致命的な「構造的欠陥」そのものである。
台湾をはじめとする国際社会では、タイワンウスイロイルカなどの希少な海洋生物や沿岸環境を守るため、ピーク音に対する厳格な基準がすでに運用され、欧州等の基準とも連動している。日本の海だけが、時代遅れの評価手法によって破壊の危機に晒されてはならない。
私たちは今後、平均化された見せかけの安全数値に騙されることなく、「時間平均」という数学的な希釈によるごまかしを直ちにやめさせる必要がある。国際標準である「デュアルクライテリア(ピーク音圧レベル:$L_{peak}$と単発曝露レベル:SELの二重基準)」の導入、および最大エネルギーの直接評価をアセスメントに義務付けるよう、国のガイドラインの抜本的改定を強く求めていかなければならない。
沿岸住民の生活と豊かな海を守るための、真の環境影響評価を取り戻すべき時が来ている。
以下、緊急的に意見書、質問状を提出する。8月21日
件名:洋上風力発電事業におけるモノパイル打設音の環境影響評価手法(ピーク音評価の欠如)に関する質問
(主旨)
現在、全国各地(秋田、新潟、山形、北海道など)で進行中の洋上風力発電事業において、基礎打設に伴う甚大な騒音・水中音の評価手法が、国際的な基準から著しく逸脱している。実態とかけ離れた過小評価によってアセスメントの手続きが進められている問題について、政府の認識と対応を問う。
(質問項目)
1. 巨大な衝撃音に対する等価騒音レベル($L_{eq}$)適用の妥当性について
モノパイル打設音は、気中148.5dB、水中247.5dBというジェット機の至近距離や爆発に匹敵する衝撃波(ピーク音)である。しかし、現行の環境影響評価では、打撃と打撃の間の「無音時間(作業時間全体の95%以上)」をも含めて時間平均化する「等価騒音レベル($L_{eq}$)」が標準的に用いられており、極端な過小評価が生じている。
突発的かつ甚大な物理的衝撃波に対して、長時間の時間平均である$L_{eq}$を指標として用いる現行のガイドラインは、環境影響の科学的・物理的実態を正しく反映していないと考えるが、政府の認識を伺いたい。
2. ピーク音圧レベル($L_{peak}$)および単発曝露レベル(SEL)の導入について
欧州や台湾等の国際的な洋上風力開発においては、海洋哺乳類への不可逆的な聴覚障害(TTS/PTS)を防ぐため、等価騒音レベルによる平均化ではなく、ピーク音圧レベル($L_{peak}$)や単発曝露レベル(SEL)を用いた厳格な絶対値規制が行われている。
日本においても、海洋生態系および沿岸住民の健康を保護するために、これらの指標を用いた直接評価を環境影響評価法の要件として直ちに導入すべきではないか。環境省および経済産業省の具体的な対応方針を問う。
3. 現在進行中の事業に対する指導・再評価の要請について
日本の現行制度下において、$L_{eq}$による希釈された数値を根拠に「影響は軽微である」と結論付けた準備書や評価書が、全国のプロジェクトで次々と提出されている。
140dBを超えるような海洋生態系に致命的な物理的損傷を与えるレベルのピーク音の存在が、時間平均の陰に隠蔽されたまま事業が推進されている現状は、情報公開と環境保全というアセスメントの本来の目的から逸脱している。国は、現在手続き中の各洋上風力発電事業に対し、直ちにピーク音での再計算と、地域住民への再説明を行うよう事業者へ行政指導するべきではないか。見解を問う。
