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じゃない不倫

駅から五分ほど歩くと、待ち合わせの喫茶店が見えてくる。

窓際の席に座る彼が、私の姿を見つけると小さく手を振った。
高鳴る胸を隠しながら、私は店内へ入る。

「ホットコーヒーで」

席に着くなり、いつものホットコーヒーを注文した。

「何かあった?」

不意に彼が言う。

「どうして?」
「にやにやしてるから」
「そう? 今日は特別な日になりそうな気がするからかも」

私の返事に、彼は微笑んだ。
いけない。表情に出てしまった。

彼は、私が何も知らないと思っている。
妻も子供もいることを。

「今度の旅行どうする?」
「そうね……」

鞄の中には、一枚の古い写真が入っている。
何度も見返した写真だ。

これは不倫かもしれないし、不倫じゃないかもしれない。
だってそうでしょう?

「それじゃ、行こうか」

彼が席を立つ。

「ええ」

これから、彼がいつも利用するホテルへ向かう。
今日、私は彼に写真を見せるつもりだ。
その瞬間だけを、私はずっと待っていた。

写真を見たあなたは、どんな顔をするだろう。

想像すると、どうしようもなく笑いがこみ上げてくる。
お母さんにも、その顔を見せたかったな。

私は、彼の背中を見つめた。

ね。

お父さん。


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