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【聖地巡礼 #12】加須市役所 ―― デジタルとアナログが交差する街の心臓部と、声を聞く大人たち。

1.少年たちが挑んだ「巨大なシステム」

加須駅の北口からシンボルロードを歩くこと約15分。 夏の青空を反射する巨大なガラス張りの建物が、加須市の行政の中枢を担う「加須市役所(本庁舎)」です。

『少年探偵のデジタル・スケッチパッド』第2巻のクライマックス。 悠人たちは、過去のデータと足で稼いだ証拠を手に、街に迫る「見えない危機」を大人たちに警告するため、この場所へと乗り込みました。 小学生の彼らにとって、この威風堂々とした近代的な建物は、まるで攻略不可能な要塞のように見えたことでしょう。

今回は、この街の「心臓部」である市役所の知られざる機能と、物語を大きく動かしたある「大人」の存在について、現実のデータを交えながら紐解いていきます。

2.24時間のDX化と、4,000万円の「アナログな温もり」

悠人はタブレットを駆使し、常に「データ(デジタル)」で街を分析しようとします。実は、現実の加須市役所もまた、大きなデジタルトランスフォーメーション(DX)の渦中にあります。

現在、加須市では電子申請システム「e-Tumo」が導入されており、24時間365日、オンラインで様々な行政手続きが可能です。デジタル機器を操る悠人なら「全部ネットで済ませればいいのに」と思うかもしれません。

しかし現実の市役所では、市民への通知などに年間約4,000万円もの「郵便料(アナログコスト)」が使われています。 なぜか? それは、スマホを持たないお年寄りも含め「誰一人取り残さずに情報を届ける」という行政の使命があるからです。

効率的なデジタル(データ)だけでは、街は回らない。泥臭くても確実に手元へ届く紙(アナログ)が必要であるという事実は、データ至上主義だった悠人が「人の想い」の重要性に気づいていく過程と見事に重なります。

3.見えない危機と「パブリックコメント」のリアル

作中で悠人たちが挑んだのは、古い給水塔(KT3)の図面に隠された「水」の危機でした。 実は現実の加須市役所でも、老朽化したインフラを守るための「水道管路更新計画」や「都市計画マスタープラン」などが、重要な政策案件として常に動いています。

そして、これらの計画は市役所の密室だけで決められるのではなく、「パブリックコメント」という形で広く市民から意見を公募する制度が採られています。 「街の水を守ってくれ!」と、証拠のデータを片手に市役所の大人たちへ直談判した悠人たちのあの行動は、ある意味で、この街で最もダイレクトで熱い「パブリックコメント」だったと言えるかもしれません。

4.壁をこじ開けた「佐藤さん」と、作者の密かな配慮

少年探偵の話の中で、巨大なシステムの壁にぶつかった悠人たち。その硬い扉をこじ開けたのは、データでもルールでもなく、「佐藤さん」という一人の大人の情熱でした。

彼は子供たちの言葉を「いたずら」と切り捨てず、彼らが集めたアナログな証拠を見て、「街を守る」という大人の責任を果たそうと他部署を巻き込んで動きます。この瞬間、少年たちの想いと行政のシステムが繋がり、物語は解決へと向かいました。

※ここで、読者の皆様に一つだけ「裏話」を。作中、佐藤さんは「環境課」や「水道整備課」といった部署間で連携を取りますが、実はこれらの部署名は、現実の加須市役所の実際の組織図(環境安全部、水道課など)から、あえて名称を変更して描いています。

なぜか? それは、市役所のに将来に渡って同姓同名の方が現れた際に市役所の職員の方々を困惑させてしまうかもしれないという、作者としての配慮をさせていただきました。作中に登場する佐藤さんは架空の人物ですが、彼のような「市民のために真剣に動いてくれる熱い心を持った職員」は、現実の加須市役所にもきっとたくさんいるはず。そんな想いを込めて、あえて少しだけ「現実とフィクションの境界線」をずらしているのです。

■ エピローグ:今日を支える人たちへ

私たちが何気なく蛇口から水を飲み、安全な道を歩けるのは、過去の記録を守り、未来のインフラを更新しようと日々奮闘している「現実の大人たち」のおかげです。

加須市役所の前を通る機会があれば、ガラス張りの庁舎を少しだけ見上げてみてください。 悠人もきっと、あの一件以来、この建物の前を通るたびに背筋を少し伸ばしていることでしょう。

▼ 少年たちと大人たちが交差する! 小説『少年探偵』第1巻はこちら

(次回の聖地巡礼)
次回は……街の玄関口であり、加須の中心を走る「東武鉄道(東武伊勢崎線)」と「加須駅」についてお届けします。
第2巻の終章『線路沿いに続く未来』で、悠人たちが踏切の向こうに見つめた景色。そして、彼らが加須という街で生きていく決意を固めた、あのノスタルジックな鉄路の風景に迫ります。出発進行をお楽しみに!

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