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クスノキ出版活動記録 #14:「続きは、まだですか」

置いていただいている本屋さんから、先日こんな話を聞きました。「続きはまだですか、ってお客さんによく聞かれるんですよ」。

その一言を、私は何度も思い返しています。続きを待っているのは、私の目の前ではなく、まちの本屋さんのレジの前でのこと。物語が、私の手を離れて、加須のまちで、ちゃんと生きている。書き手にとって、これにまさる報せはありません。


足元にある宝物

『少年探偵のデジタル・スケッチパッド』シリーズが、発売から三ヶ月で150冊を超えました。全国の書店には、一冊も置いていません。置いてくれているのは、加須のまちの、数えるほどの場所だけです。

この物語で伝えたかったことは、はじめから一つでした。子どもたちに、自分の足元にある宝物に気づいてほしい。

加須で生まれ育つと、千方神社も、青い空を泳ぐ鯉のぼりも、利根川の土手も、いつのまにか当たり前の景色になっていきます。毎日そこにあるからこそ、豊かさが見えなくなる。私自身、長くそうでした。宝物は、遠い場所にあるものだと思い込んでいたのです。

だから、その見慣れた景色を、物語の舞台にしました。読み終えた子が、いつもの通学路で、ふと立ち止まる。「この道にも、物語があったんだ」と気づく。その一瞬のために、この本を書きました。


手から手へ、渡していく

足元の宝物は、大量に積み上げて、遠くから眺めてもらうものではありません。すぐそばで、手渡しされてこそ伝わるものです。だから私は、全国の書店に本を卸すことを、選びませんでした。

一冊が、確かに誰かの手に渡る。渡す人が「これ、加須が舞台なんですよ」と一言を添える。その一言ごと、物語は子どもの手に届いていきます。

実際、150冊のうち、およそ七割が、まちの本屋の棚の前で売れました。残りも、観光協会の窓口、道の駅——そのほとんどが、加須のどこかで、人の手を介して渡っています。画面をクリックして届いた本は、ほんのわずかしかありません。


続きを待つ人がいる

冒頭の「続きはまだですか」には、続きがあります。第1巻を読んだ方の、三人に二人が、第2巻も手に取ってくれました。

一冊読んで、それで終わりにしなかった。「次が読みたい」と、もう一度お店の扉を開けてくれた。その足取りが、150冊という数字の、本当の中身です。物語が子どもの中で続いている限り、私は書き続けます。締め切りに追われる夜に思い出すのは、いつも、あのレジの前の一言です。


加須から、世界へ

うちは「物語を、加須から世界へ」という言葉を掲げています。

足元に気づく喜びは、加須の子だけのものではありません。この物語が、いつか町を越え、県を越え、名前も知らない遠くの誰かの手に渡る。その人もまた、自分の足元の宝物に気づく。そうやって一人ずつ、加須から広がっていく。150冊は、その道のりの、確かな一歩目です。

一冊ずつ、手から手へ。この歩幅で、これからも歩いていきます。


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