クスノキ出版活動記録 #04:物語の舞台・加須市の本屋さんに並ぶまで。「新しいひとり出版社のカタチ」とご当地ミステリーの軌跡。
こんにちは、埼玉県加須市を拠点とする「クスノキ出版」の楠柾です。 個人出版社のリアルな裏側や挑戦の記録をお届けするこのnote連載も、今回で第4回目となりました。いつも応援してくださる皆様、本当にありがとうございます!
今回は皆様に、クスノキ出版の代表として、そして「物語の著者」として、最高に嬉しいご報告があります。
なんと、私が執筆し、クスノキ出版から発行している埼玉県加須市を舞台にしたご当地ミステリー小説『少年探偵のデジタル・スケッチパッド』が、加須駅前の老舗書店「カサモ(関口商店)」様、および「ブックセンターやまと」様の店頭に並ぶことになりました!

自分の書いた物語が、その舞台である「加須」のど真ん中、駅前の本屋さんに並んでいる光景を見たとき、言葉にできないほどの感動がありました。
しかし、読者の皆様の中には「本を書いたんだから、本屋さんに並ぶのは当たり前でしょ?」と思われる方も多いかもしれません。あるいは、著者が自分で本屋さんに持ち込んでいる姿を見て、「従来の出版社のイメージとは違うな」と感じる方もいるでしょう。
実は、今回お話ししたいのはまさにその部分です。 今の時代だからこそできる、「新しいひとり出版社のカタチ(マイクロパブリッシング)」について、少しだけお付き合いください。
■ 「本が書店に並ぶ」のは当たり前? 出版業界の流通の壁
一般的に「出版社」と聞くと、東京の大きなビルに編集部や営業部があり、「取次(とりつぎ)」と呼ばれる本の問屋さんを通して、全国の書店へ自動的に本がばら撒かれる……そんなイメージを持つと思います。
一方、クスノキ出版は私一人で運営している小さな出版社です。無駄な在庫を持たず、注文が入った分だけを印刷する「POD(プリント・オン・デマンド)」という現代的なシステムを採用しています。
このPOD出版は、個人のクリエイターでも全国へ作品を発信できる素晴らしい仕組みですが、最大の弱点があります。それは、「取次の流通網に乗らないため、何もしなければ永遠にリアルの書店には並ばない(Amazonなどのネット専売になる)」ということです。
■ 足元にある「物語」に気づいてほしい。図書館がくれた勇気
流通の壁があることは分かっていました。しかし、著者である私には「どうしても地元の本屋さんに並べたい」という強い願いがありました。
そもそも、私がこの小説を書いた一番の理由は、「地元の子供たち、そして多くの方々にも、自分たちの足元に広がる魅力や『気づき』に出会ってほしい」という想いからでした。
街の魅力というのは、決して特産品や産業だけではありません。毎日当たり前のように見ている景色の中で、人と人とが繋がり、そこで生まれる「物語(出来事)」こそが、その街の本当の魅力であり、かけがえのない宝物なのだと私は信じています。その宝物を、エンターテインメントの力で伝えたい。
だからこそ、私はまず、子供から大人まで誰もが無料で集える「地元の図書館」にこの本を寄贈することから始めました。
昨年末、加須市立図書館(本館および分館)へ寄贈させていただきました。するとありがたいことに、なんと「1巻が8人の予約待ち」になるほど、多くの市民の皆様が手に取ってくださったのです。 「私が描きたかった地元の物語は、ちゃんとこの街の人たちに届いている」 その温かい反応をいただいただけで、著者として胸がいっぱいになるだけの喜びが有りました。
■ 懐深く受け入れてくださった、地元の本屋さんへの感謝
その後、シリーズの続編を執筆する中で、私の中に新たな想いが湧いてきました。
この『少年探偵』シリーズでは、実在の社名や店舗名は直接出さず、作中の事故などネガティブな出来事が起こる舞台は架空の建物にするなど、地元の方々への配慮を大切にしています。 それでも、この街に息づく様々な場所やお店の「リアルな空気感」だけは、しっかりと物語の中に描写し、残していきたい。そう考えた私は、「地元の本屋さんの、あの独自の温かい空気感を、ぜひ次の作品の中に登場させたい」と思い立ちました。
そこで、完成した1巻を手に、加須駅前のカサモ様とやまと様に「加須を舞台にした、こういう物語を書いています。次作のために、ぜひお店の取材をさせていただけませんか」とお願いに伺いました。
突然の訪問にも関わらず、両書店の店主様は私の話を真剣に聞いてくださいました。 そして、作品のことや「リアルな加須を描きたい」という想いを語り合っているうちに、話は思いがけない方向へ進みました。
なんと、対話の中で「書店に配架する」という可能性が自然と生まれ、そのまま快諾していただくことになったのです。 利益や効率だけを考えれば、無名の個人出版本を棚に並べるのはリスクでしかありません。それでも「地元の物語だから」と懐深く受け入れてくださったカサモ様、ブックセンターやまと様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。
大きな組織や流通網がなくても、作品への純粋な想いを原動力に足を運び、そこでの対話と人情が新たな扉を開く。ただ本を刷って問屋に流すだけではない、この「人と人とが繋がる血の通ったプロセス」こそが、私が考える「新しい出版社のカタチ」です。
■ 加須の街と人とで作る、ご当地ミステリー

現在、カサモ様、ブックセンターやまと様の店頭にて、活字でじっくりと謎解きを楽しめる『小説版』を展開していただいております。
立ち上げから半年の小さな出版社ですが、地元ラジオ局への出演、加須市立図書館への配架、そして今回の駅前書店様での販売と、皆様の応援のおかげで、少しずつ加須の街に本作が根付いてきています。
加須駅をご利用の際、あるいは近くをお通りの際は、ぜひ「カサモ」様、「やまと」様に立ち寄って、棚を探してみてください。この街の空気を感じながら読むご当地ミステリーは、きっと皆様に特別な読書体験をお届けできるはずです。
「新しいひとり出版社」としてのクスノキ出版の挑戦は、まだまだ続きます。どうぞ楽しみにお待ちください!
📚 マガジン「ひとり出版の生存戦略」
加須市のひとり出版社・クスノキ出版が、地元の本屋・図書館・コミュニティFM・読者の皆様と少しずつ繋がりながら、シリーズを育てていく過程を書き残しています。よろしければシリーズ全記事もどうぞ。
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「物語を、加須から世界へ。」
