見出し画像

梔子寓意譚

歩く。

湿度がまとわりつく。

汗が浮かんだ額に、髪の毛が張り付いた。

初夏。

鮮やかな緑と、色とりどりのペチュニア。
その横で弾ける子どもの声は、黄色やピンクや水色だった。

痛々しいほどの日差し。

ふんわりと広がった白い日傘の内側から、その明るさを睨みつけた。

こめかみに、痛みが滲み始める。

ふいに、瑞々しい香りが鼻をかすめた。

痛みの輪郭が、少しぼやけた。

色から逃げるように、辿る。

その先、深い緑の中に、シルクのような純白。

隣で、錆びた色に変わった花弁が揺れた。
咲いた姿のまま、腐ることだけを許された花だった。

蕾も、純白も、死体も、同じ枝にある。

その、枯れた花へ顔を寄せた。

同じであってほしかった。


香りはまだ、死んではいなかった。
ひどく、甘かった。

いいなと思ったら応援しよう!