見出し画像

帰省で気がつく夫婦のこと

交通機関をいくつか使って帰省している。夫は仕事を休めないので一人。
もう数年、このスタイルのわたしたち。

羽をのばせていいじゃんとたまに言われるのだけど、どうもそんな気分にはなれない。献立も考えなくていいし後片づけも気にしなくていい。毎日の掃除機もないし、身体は普段より労れるかもしれない。それでもいつも一緒にいる人がいないのは、落ち着かないのも事実だ。

チケットは早いもので3ヶ月前に予約できるものもあって、この高揚した気分も同じくらい長く静かに続いていた。

待ちに待った帰省の前日、つまり昨日、お風呂を掃除していたらたいそうな寂しさが襲ってきた。

夫をおいたまま帰省していいのだろうか。

大きめのスポンジを掴む手に力が入って泡がいつもより少なかった。
5日後には再会する短い帰省なんだが、寂しい。
お風呂掃除のあとにお布団を敷くときは油断すると涙が出そうだった。どんだけ、あいしてるんだ。
お風呂場や寝室で思い出して泣きそうになるなんて。愛以外になにかあるなら教えてほしい。

こんなふうに帰省直前のわたしは揺れ動いて不安定。行きたいと行きたくないの間を右往左往するのは毎度のこと。
かと思いきや、お夕飯の時はウキウキが戻ってくるという情緒。食べてお腹が満たされると前向きになるんかなと、そんなとこに着地する。

夫は優しい。
わたしにお小遣いをくれて「はい、お母さんにお見舞い渡しておいて」と手術が決まった母に同じくらいの金額をくれた。そんな時は決まって子どものような笑顔だ。照れてるような、大きな目を細める。度が強いメガネのせいだけじゃない。


「何時に着くの?」「朝は何時に出る?」「おやつ持った?」と質問されるのがなんだか嬉しい。帰省は決まっているのだけど、正しいことのように感じられる。夫をおいたまま5日も家を開けて…とどこか自分で責めていたんだと思う。わたしだけ楽しんで旅気分なんて、と。

独身時代によく海外に一人で行っていた。準備する時間は最高なんだけど近づくにつれて憂鬱になる。遠すぎる国を選んだ自分にがっかりして、母国語以外の生活に出発前から緊張して熱がでそうだった。
それと一緒だ。

行けば楽しい。毎晩夫に電話したり、日中はメールもする。朝はモーニングコールなんぞもするんだぞ。
やだ、恋人みたい。

夫婦になって9年になった。最低でも一年に一度の帰省で、わたしの気持ちが生まれ変わる感じがする。
結婚当初は「夫婦っていいよ」とまわりに言っていた。でも9年経ってほんとの意味で実感し始めているし、まだまだ夫婦ってなんなのかを理解したい。


「散歩に行こうとしたら雨が降っていて行けなかったよ」と夫からメールがきた。

もうすぐ出発だ。

いいなと思ったら応援しよう!