空想書店44:『いのちの食べかた』の空想ワークショップ

先日、相互フォローさせていただいているnoterくみっきーさんからDMが届きました。
「7月に出る新刊の書籍が空想書店さんと相性が良さそうだと思いまして、書店員さんが扱うと、どんな空気になるのか見てみたくなりました。」と。
なかなかな無茶振りです!(ありがたい)
しかし、くみっきーさんからのコメントはいつも的確で、普段の記事から読み取れる視点のセンスの良さも感じていたので、オススメには絶対的信頼があります。
「くみっきーさんがそうおっしゃるから、相性はいいのでしょう」と出されたお題に向き合ってみることにしました。


お題の7月に出る新刊がコチラ

『いのちの食べかた だれも教えてくれない、世界のヒミツ』(角川つばさ文庫)
2026年7月8日、ヨシタケシンスケさんのカバーイラストとたくさんの挿絵がついた児童書です。

『いのちの食べかた だれも教えてくれない、世界のヒミツ』
(角川つばさ文庫)
画像にリンクを貼っています

『いのちの食べかた だれも教えてくれない、世界のヒミツ』は、2004年に森達也さんが書かれた『いのちの食べかた』を元に、児童書向けに新たに編集した作品です。

『いのちの食べかた』
(2004年理論社・2014年角川文庫)
私たちが食べている”お肉”が、どこで生まれ、だれの手によってお店のパックに並ぶのかという「食卓の裏側」を丁寧に追ったノンフィクション作品です。単に「命を大切にしよう」という道徳的な話だけでなく、屠畜場で働く人々のこと、社会にある根深い差別問題、さらには「見えないものは存在しないことにしてしまう」人間の心理から繋がる戦争の背景まで、正解のない問いを読者に投げかける内容です。
10万部を超えるロングセラーとなり、数々の読書感想文コンクールや学校の教材、入試問題にも採用されてきました。

今回の新刊については、いただいたDMで初めて知りました。即購入したいと思える要素が満載です。実際に発売日にウキウキしてレジに持って行くことは決まりました。


題材のテーマが大きすぎます…

さて、いざテーマに向き合おうとしても、どこから考えたらよいものでしょう。くみっきーさんからも、テーマの大きさを知っているからこそ、100年後でもいい、というスタンスで投げかけてくださっています。
向き合えるかな。しかし、あのヨシタケシンスケさんだし、これから出る本をnoteで扱ったことがなかったので、自分への新しいチャレンジとしてこれとない題材だと思い、ふわふわと空想をはじめました。

まずは、『いのちの食べかた だれも教えてくれない、世界のヒミツ』は『いのちの食べかた』を児童書向けにどう変更しているのか、前情報を整理します。

○ヨシタケシンスケさんのイラストと挿絵
ユーモアを交えながらわかりやすく親しみやすくなりました。
○内容のアップデート
著者の森達也さんが、現在のウクライナ情勢やガザ地区、イラン問題など、今の戦争や紛争について大幅に文章を加筆・修正しています。
○対象年齢の変更
元々は大人向けですが、小学校高学年でも読める表現や言葉遣いにやさしく再編集されています。


誰が考えるテーマなのか

はじめに思ったことは「難しい社会問題を小学生に考えさせる前に、大人が、それも”偉い”大人たちが真剣に考えているのか」という疑問です。戦争にしても環境問題にしても、SDGsも憲法も原発も、大人たちが蒔いた種であることは事実です。本当に子ども達が真剣に向き合った問いに、もしお金の絡んだ利権や大人たちの事情があったとしたら。一生懸命考えても、本当の解決策は大人たちが取り組むことだったりしたら。
空想書店としてのワークショップは、「偉い大人たちに”純粋な心”で社会問題に向き合ってもらう」を第一回目のテーマとします。

という企画書は本部の人には読んでもらえないかもしれないので、”きちんと”改めて空想します。


購入がワークショップへのパスポート

当たり前ですが、まずは、購入して読んでもらうところからスタートです。新刊なので中古は出回りませんし、図書館で借りることも難しいです。よって、書店でのご購入一択です!購入がワークショップへのパスポートとなります。対象年齢は、本に準じ、小学校高学年から大人の方にご参加いただけます。

一言も喋ってはいけないワークショップ

当日のルールは簡単です。ワークショップの間は、基本的に一言も喋らずに参加してもらいます。床に広げた大きな模造紙に、みんなで靴を脱ぎ、本の感想や疑問を書いてもらいます。全員がペンを持ち、文字だけで会話を繋げていく。大まかに、食べ物の島、お肉の島、差別の島、戦争の島、などテーマ別に問いがあり、書き込めるスペースをゆるく分けます。
他の人が書いた言葉に、矢印などで自分の意見を付け加えていきます。意見だけでなく、いいねの共感や、わからない、嫌だ、などの感嘆文もOKです。

なぜ無言のワークショップなのか

学校の授業では、その場で意見を言えることが求められます。手を挙げ意見を言う。それは大人になってからもより求められるスキルです。「大きな声で場を盛り上げたものに価値がある」世の中全体がそんな風潮になっているとすら思えます。特に学校の授業ではグループディスカッションが盛んに行われ、人前で話すことが得意な子の意見に流されがちです。学校は授業内に出た意見が「成果物」となるため、時間が区切られたプレッシャーの中で意見を求められることになります。

外向型と内向型

ここからは個人的な意見ですが、人間は大きく「外向型」と「内向型」に分かれます。外向型は人と話すことで考えがまとまりますが、内向型は自分の中の矢印を深く掘り下げることで思考を深めます。
つまり、「大きな声でパッと意見を言える人の答えが、常に芯を喰っているとは限らない」ということです。小さな声でも、言葉が遅くても、言葉にならなくても、思考の深さには全く関係ありません。
だからこそ、『いのちの食べかた』のような、正解のない重いテーマに、一人で没頭する哲学のような静かな時間が必要だと思いました。
同時に一人で考え込むだけでなく、自分の意見とは違ういろいろな意見も必要です。
よって、人前での得意・不得意に左右されない「サイレント・ディスカッション」なのです。
大きな模造紙の真ん中にある問いに対して、喋らないからこそ、完全にフラットに対等な深さで参加できます。


いのちの食べかた交換ノート

さらに、このワークショップには続きがあります。
ワークショップの終わりに3冊のノートを見せます。開くと一番初めのページに、問いが書かれています。

ノートには問いが書かれている

それは、交換日記のように問いに対する答えを書き込み、誰かがそれに応えながら色々な人の言葉がリレーされてつながっていく、不思議なノートです。
店内の静かな特設スペースに、この3冊のノートを設置します。ノートは店外への持ち出しはできません。学校帰りや買い物のついでにふらっと立ち寄り、自分だけの考えを書き加えていくことができます。
他の人の意見を読み、リレーのように深めていく。
数日後、あるいは数週間後。再びお店を訪れてそのノートを開いたとき、あなたの言葉のあとに、誰かが紡いだ新しい思考が繋がっているかもしれません。


『いのちの食べかた』
(2004年理論社・2014年角川文庫)

今回の新刊の元になっている『いのちの食べかた』を取り寄せて読みました。正直、一部、読めなくなって手で覆って先に進んでしまいました。目を逸らしてはいけないと本文に書いてあったのに…。
言いたいこと、感じたこと、いろんな感情や言葉がクツクツとごった煮のように混ざり合います。模造紙を部屋一面に敷き詰めて、無言で言葉が交わされていく光景を、見てみたいと思いました。


ちょうど夏休みの時期に刊行される本書。
正解のない問いに一人で悩み、無言のノートで誰かと対話した時間は、子どもたちにとって「自分だけの深い思考の足跡」になります。
ワークショップと交換ノートを終える頃には、原稿用紙の枠には到底収まりきらないほどの言葉が、自分の中に溢れていることに気づくはずです。その溢れ出たものこそが、結果として、どんな模範解答よりも力強い、あなただけの「読書感想文」の核になるのではないでしょうか。
一番重くて、一番大切な宿題を、この夏、BAKU空想書店ではじめませんか?
ご参加お待ちしております。
※実在しない書店の空想ワークショップです。

追記 2026.5.22
くみっきーさんが翌日にこの記事を取り上げて書いてくださっています。
ご家族のエピソードには胸がぎゅっとなりました。実体験のお話です。
記事の後半には、BBQで実際に「たべる」ことを体験して学ぶワークショップを提案されています。五感をつかって感じられることで更に感じることがたくさんあるだろうと思いました✨
ぜひ、併せてご一読ください。

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