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南海トラフ地震と伊方原発

 原発を止めた裁判官として知られる樋口英明さんに、このほど起こった震度5弱、マグニチュード6.6の日向灘地震と、ロシアが作成した日韓への攻撃リストに日本の原発が含まれていたことについて聞いた。
 1月13日夜、日向灘地震が九州と四国の一部エリアを襲った。南海トラフ地震との関連が懸念されるが、気象庁はその関連をとりあえず否定した。
 日向灘地震の後すぐ、九州電力は川内原発(鹿児島県)と玄海原発(佐賀県)、四国電力は伊方原発(愛媛県)はいづれも大丈夫だと発表した。
 しかし、樋口さんは「一番心配しているのは伊方原発です。伊方原発の真下が南海トラフ地震の震源であってもおかしくないのです。それなのに伊方原発は南海トラフ地震に全く備えていない」。
 伊方原発の近くの断層が動いた場合の基準地震動は650ガルとされているという。そして「南海トラフ地震が起こった場合の四国電力の地震動の想定は181ガルなんです。基準地震動以下なので耐えられるという考えだと思います」。
 「しかし、我々の常識からすると南海トラフ地震はマグニチュード8を超えることは間違いない。確かにマグニチュードに比例してガル数が大きくなるわけではありませんが、南海トラフで181ガルとはあまりにも小さすぎます」。
 「ガルとは地震の大きさを表す指標のひとつである加速度の単位で、大きな数字ほど強い地震です。昨年元日の能登半島地震はマグニチュード7.6で南海トラフ地震よりも地震規模ははるかに小さかったのですが、石川県志賀町では2828ガルを記録しました」。
 「防災科学技術研究所強震観測網のサイトを開いてみてください。データ検索&ダウンロード欄で2020年1月1日から2024年12月31日の期間内で、最大加速度200ガル~と入力すれば、わずか5年間で500地点にも及ぶ観測地点で200ガル以上の地震が観測されたことが確認できます。181ガルという地震はそれほど平凡な地震なのです」。

四国電力伊方原発(資料写真)

 「181ガル程度の地震なら国内の原発なら耐えられます。だから四国電力は、南海トラフ地震に対して新たな対策をとる必要がないと思っているのでしょう」。
 樋口さんは今の科学者たちに疑問を投げかける。
「地震問題に関わっている科学者は、例えば181ガルという計算結果を出す過程についてはいろいろ論じますが、その計算結果を実際の地震観測記録に照らし合わせてチェックすることをしていない」。
 「本当の科学者ならば、客観的な地震観測記録という科学的事実との間で矛盾がないか考えると思います」。

茨城県東海村の原子力施設(資料写真)

 また、英フィナンシャルタイムズが昨年12月31日報じたところによると、ロシアが日韓への攻撃対象リストを作成しており、その中に茨城県東海村の複数の原子力施設が含まれていた。
 主要紙では毎日新聞と朝日新聞が転電したのみだ。
 ロシアなどが日本の原発を狙うのは「想像力さえあれば、当たり前のことです。自分がロシアの側に立って考えてみれば簡単に分かることです。自分が核攻撃するわけでなく、攻撃対象が核施設ということ。それでも核攻撃と同じようなダメージを与えられる。我が国にとっては致命的ですよね」と樋口さんはいう
 「みんな原発のことをエネルギー問題だと思っていますが、そうであると同時に環境問題であり人権問題であり、一番軸足を置いているのは国防問題なのです。福島第一原発事故の時には東京を含む東日本が壊滅する可能性もあった。首都機能がマヒすれば国の体制が維持できなくなる。その時にもし外国の介入があったら日本は終わりでした」。

しっかりしないといけないマスコミと政治家
 「一般の国民はともかくマスコミや政治家といった人たちがしっかりしないといけない。一般国民は福島原発事故がすでに終わったかのようなムードで、もうああいう酷いことは起こらないだろうと思っている」。
 「そんな中では、マスコミ、政治家、裁判所もそうだけど自ら決定したり、あるいは国民の決定権に影響を与える人たちはしっかりしないといけません。しかし、現状は残念ながら一般国民と同じようです」。
 「最悪の事態を考える能力がない。最悪のことが考えられない国は原発を扱う資格はありません」と樋口さんは強い口調で話した。
 樋口さんによれば、普通に考えれば原発より家のほうが地震には強いということが分かるという。
 「原発というのは人が管理し続けないといけない。常に電気と水を送り続けて原子炉を冷やし続けないといけない。もし断水すればメルトダウンが起きてしまう。停電してもメルトダウンです」。
 樋口さんは続けた「家は地震の場合、停電や断水も起こりうるけれど、より大きな問題としては倒れるかどうかです。家が倒れるような地震でなくても停電や断水は頻繁に起きています。そういう意味では水や電気が途絶えただけでアウトになってしまう原発は普通の家より地震に弱いのではないかという疑問が生じてくるのです」。
 「その疑問に対して、電力会社は『この原発敷地に限っては強い地震は来ません』と主張しているのです。その主張を信じるか信じないかが問われなければなりません」。
 樋口さんは2014年5月21日、福井地方裁判所で裁判長として大飯原発の運転をしてはならないとの判決を出した。
 原発を止めると石油や天然ガスの輸入によって貿易赤字が増え国富が失われるとの議論があった。
 この議論について、判決は次のように述べている「コストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」。

小原浩靖監督で映画にもなりました
本も書かれました


 樋口さんの近著に「保守のための原発入門」(岩波書店)がある。

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