吾輩は「ほんそご」である。 黒猫ゆきの警護日誌⑧
吾輩は黒猫である。
名前はゆき。
今日もおばあちゃんは、おかあちゃんを呼びに行く。
「ゆきがおらんけど、おかあさんとこにおる?」
「いやぁ、おらんよ。」
「どこに行っただぁかぁ?見当たらんけど。」
ガタガタと障子が重たく開いた。
「ゆきぃ?どこおる?」
吾輩は返事はしない。
せっかく寝てるのに。
物置の冷蔵庫は冷たくて気持ちいいのだ。
「あぁ~、おったおった。開かずの間の冷蔵庫の上で寝とるわ。」
「よかったわ。またおらんやになったら、おねえちゃんに合わせる顔がないわ。」
「はいはい。よかった。よかった。」
そう言うと、おかあちゃんはそそくさと自分の部屋へ入っていく。
夕方になると、おばあちゃんは、またおかあちゃんを呼びに行く。
「おかあさん!ゆきがちょっとおかしい気がするけど、大丈夫だぁかぁ?」「はぁ?」
ガタガタと障子が重たく開くと、
「ゆきがどげおかしいの?」
と、おかあちゃんが顔を出した。
「ゆきがねぇ、もう何時間も動かんに。」
「寝とるだけじゃない?」
「でもねぇ、全然動かんよ?」
「昨夜、味付け海苔食べたけんだぁかぁ?」
「吐いた?」
「いんやだに。」
「なら、もうちょっと様子みるか。」
吾輩は沈黙を守る。
「あ、おねえちゃんが帰ってきたわ。」
おばあちゃんは、おねえちゃんに吾輩の話をした。
おねえちゃんが吾輩の顔を覗き込んで言った。
「ゆき、味付け海苔は塩分が多いし、消化に悪いけん食べたらいけんよ。わかった?」
おねえちゃんは、いつも吾輩にきちんと説明してくれる。
わかった。
だが、
おねえちゃんのフルグラよりも、おにいちゃんの味付け海苔の方が美味しかったぞ。
※「ほんそご」は出雲弁で「最愛の子」という意味です。
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