【短編ドラマ(脚本)】元カレと、カレーと、私。
【あらすじ】
リナはある日、恋人のユウタにプロポーズされたが、「本当にこのまま結婚していいのだろうか?」と悩む。
そんな中、夕食に作ったカレーを食べていると、幽霊の元カレ・レンが現れる。
結婚についての悩みを打ち明けたリナに対して、レンは「俺が旦那役になるから、結婚ごっこしてみない?」と提案する…
【本編】
#1 レストラン(夜)
ユウタ「リナ、結婚して欲しい」
リナ「えっ……うん、ありがとう。よろしくお願いします」
#2 リナの自宅(キッチン)
リナ、浮かない顔でカレーを作っている。
リナ「ホントに結婚して良いのかなぁ……今まで色んな人と付き合ってきたけど……」
#3 回想 大学の教室
リナとレン(大学時代のと元カレ)が教室で話している。
レン「リナ、生まれ変わってもまた君を愛すよ」
#4 回想 賑やかな居酒屋(夜)
リンとハヤト(レンの後に付き合っていたバンドマンの元カレ)が話している。
ハヤト「てか、オレら結婚しちゃう?今6月だし、明日大安だし」
#5 回想終わり リナの自宅(キッチン)
リナ「うーん……」
リナが作っていたカレーが沸騰して溢れそうになる。
リナ「あ、やばい!」
#6 リナの自宅(部屋)
リナ、カレーを食べている。
リナ「はぁ……だいぶ上達したけど、まだマズいな。結婚するんだから、ちゃんとしなきゃ……(また一口食べる)マズいなぁ……」
レン「俺は好きだけどね」
リナ「うわっ!は?誰!?」
レン「レンだよ。ほら、大学の時に付き合ってた」
リナ「レン?(顔をガン見する)……老けたね」
レン「ひどい!10年ぶりに会ったのに!毎日スチーマーしてるのに!」
リナ「てか何でいんの!?私いま彼氏いるの!早く帰ってよ!」
リナ、レンの腕を掴もうとするが、触れない。
リナ「えっ、何で?……(しばらく考える)もしかして、幽霊?」
レン「まぁ、とりあえずカレー食わない?」
リナ「何でそんなサラッとしてんのよ……」
リナとレン、一緒にカレーを食べる。
雑談をしているうちに、自然に話せるようになっている。
リナ「そういえば私、彼氏にプロポーズされたんだ」
レン「そうなんだ、おめでとう!」
リナ「……ありがとう」
レン「そっかぁ、あんな小さかったリナちゃんが、結婚かあ」
リナ「身長はあんたと付き合ってた時と変わんないよ。むしろちょっと伸びてるから」
レン「てへ。お互い、大人になったねー」
リナ「でも、ちょっと不安なんだよね……」
レン「何で?」
リナ「なんていうか、確証、みたいなものがないんだよね。想像以上にあっさり決まっちゃったって、実感がないというか……」
レン「……」
リナ「このままあっさり結婚して、あっさり子どもできて、あっさり年取って……何だったら、あっさり離婚しちゃったりして」
レン「じゃあ、練習してみない?」
リナ「練習?」
レン「そう、俺が旦那役になるからさ、結婚生活を擬似体験してみるの。いわゆる『結婚ごっこ』ってやつ」
リナ「うーん……いいけど、変な事しないでよ?」
レン「大人の恋に『絶対』っていう言葉はないんだぜ」
リナ「てか、幽霊だから触れないか……」
#7 リナの自宅(部屋)
リナとレン、部屋で擬似夫婦を演じている。
リナ「家事は分担ね。私は掃除全般をやるから、あなたは料理担当ね」
レン「フルーチェしか作れないけど、いい?」
リナ「小学生かよ!」
レン「調理実習の時も、後片付けしかやってないもん」
リナ「小学生以下だったよ……」
レン「てかさ、俺の方が帰るの遅いんだから、料理はそっちが作ってよ」
リナ「は?私だって仕事してるんだから、ちょっとは家事やってよ!」
レン「家事やらないなんて一言も言ってないじゃん」
リナ「……うるさいな」
レン「もう一回ちゃんと考えようよ。俺も手伝ってあげるからさ」
リナ「考えてるよ!考えてこの分担表にしてるの!てか何?『手伝ってあげる』って。何もしないくせに、何で上から目線なんだよ!」
レン「そういう意味じゃ……ま、カレーでも食べて落ち着きなよ」
リナ「もうやめる!」
リナ、寝室に行って鍵をかける。
レン、リナがいる寝室のドアの前に向かう。
レン「リナ、さっきはごめん。ちゃんと話そ、ね?」
リナ「……」
レン「別れた時もそうだったよな、俺ら。ケンカして、口聞かなくなっちゃって、そのまま……」
リナ「……」
レン「あのさ、実は俺……」
リナ「うるさい!偉そうにしないでよ、幽霊のくせに!」
レン「……」
リナ「二度と出てくんな!」
#8 リナの自宅(部屋)
少し時間が経って、リナが部屋から出てくる。
レンはいない。
テーブルには、食べ終わったカレーの皿が二つ残っている。
リナ「……」
#9 回想 リナの自宅(部屋)
レン「別れた時もそうだったよな、俺ら。ケンカして、口聞かなくなっちゃって、そのまま……」
#10 回想終わり
リナの自宅(部屋)
リナ「思い出した……あの時も私、話を聞かないで自分の事ばっかり……」
リナ、涙を流す。
リナ「……結局バカのままじゃん、私」
リナ、1人で泣き続けている。
#11 回想 レストラン(夜)
ユウタ「バカでいいんじゃない?」
#12 回想終わり リナの自宅(部屋)
リナ「?」
#13 回想 レストラン(夜)
ユウタ「何だかんだ、大人になっても成長しないよね。俺も高校生の時から、なんも変わってないもん」
リナ「……」
ユウタ「みんな、基本はバカで、たまにカッコよくて、ただそれだけなんだよ」
リナ「……」
ユウタ「それを隣で笑ってくれる人がいたら、それだけで勝ち確なんじゃない?」
リナ「……」
ユウタ「俺は、リナの確定演出になりたい。どんな事があっても、俺がいれば『勝てる』って、リナにそう思ってもらえるような男になりたい」
リナ「……」
ユウタ「だから、いろんなバカを笑っていこうよ、2人で」
リナ「……うん、ありがとう」
ユウタ、優しく微笑む。
リナ「ちなみになんだけど……」
ユウタ「ん?」
リナ「何の演出?」
ユウタ「パチンコ」
リナ、思いっきり笑う。
ユウタもそれを見て、笑い合う。
#14 回想終わり リナの自宅(部屋)
リナ、テーブルに置かれた家事の分担表を見つめる。
そこには、幸せそうにカレーを作っている女性のイラストが描かれていた。
リナ「……ありがとう」
#15 リナの自宅(部屋)
翌朝、リナがカレーを食べている。
リナ「あぁー美味しぃー!2日目のカレーって何でこんなに美味しいんだろ?」
レン「時間置いたからじゃない?」
リナ「うわっ!?レン?急に出てこないでよ!」
レン「ちょっと、気配消してるみたいに言わないでよー」
リナ「消えてるんだよ……」
レン「カレーと恋愛って似てるよな。時間を置くと、前とは違う魅力が出てきたりすんじゃん?」
リナ「……確かに、そうかもね」
レン「時間とは、魔法のスパイスである!なんちゃって」
リナ「……うん、そうだよね」
レン「……」
リナ「あのさ……昨日はごめん」
レン「ううん、俺の方こそ、ごめんね」
リナ「あたし、まだバカだった。レンと付き合ってた時と、何も変わんなかった」
レン「そんなこと言ったら、俺だってバカだもん」
リナ「私、幸せなバカになる」
レン「……もうなってると思うよ」
リナ「何に?」
レン「バカに」
リナ「あー!うるさいなぁ、また喧嘩したいのか!?」
レン「うそうそ、ごめんなさい!あ、カレー食べよ!」
リナ「話をそらすなー!」
リナとレン、楽しそうにカレーを食べている。
レン「あ、そろそろ行かなきゃ」
リナ「あ、うん」
レン、玄関に向かう。
リナ「……ねぇ」
レン「ん?」
リナ「昨日さ、何か言おうとしてなかった?」
レン「……あぁ」
レン、リナを見て少し言葉に詰まる。
レン「リナもちょっと老けたな、って」
リナ「はぁ!?最低!」
レン「自分も言ってたじゃん!」
リナ「女の子には言っちゃダメなの!」
レン「あ!そういうのダメだよ、今の時代。最近は規制ばっかりで、息苦しくなっちゃうよ!」
リナ「……幽霊でもそういう事考えるんだね」
レン「ま、いいや。リナの幸せそうな顔見れたからさ」
リナ「……結局、何しに来たの?」
レン「……うーん、カレー食べに来た!」
リナ「なにそれー!?」
リナとレン、爆笑する。
リナ「じゃあ、またね!」
レン「うん、バイバイ!」
レン、部屋を出る。
リナ、スッキリした気持ちでカレ―の皿を片付け、婚約指輪をはめる。
リナ「やば、遅刻しちゃう!」
リナ、玄関を開けて部屋を出ていく。
テーブルには、家事の分担表が置かれていた。
分担表には大きな文字で『バカなので分かりません!』と書かれていた。
了
