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アカイロ

 夕焼け空が地平線に広がる頃、幼い僕と母親が真っすぐの道を歩いていた。途中のY字路に差し掛かると、きれいな菜の花畑があった。そこを親子で眺めていると、突然、全身夕焼けに染まったような鬼がやってきた。母の腕をつかんで引っ張っていた。どうやら母だけ連れて行こうとしているようだった。母親の表情などは全く見えず、おとなしく連れて行かれた。あまりにも突然母親を連れて行かれたことと、ひとりぼっちになってしまった淋しさから、ひたすら泣いた。体の中の水分が全てなくなるくらいに、ひたすら泣いた。
 その夢を毎晩見ていたころ、僕はひとりぼっちだった。祖父母、両親、弟の六人で暮らしているのに、なぜか孤独だった。母が小さい頃使っていたイチゴ柄のおもちゃ箱には、小さな車や怪獣のフィギュアがたくさん入っていたが、いつも1人で遊んでいた。
 ある晩、地域の寄合で母が車で出掛ける事があった。幼い僕は本当に母が家を出ていってしまうのではないかと不安になって、母の車を必死で追いかけた。小学校入学前の時期だったので、そんなに遠くまでは走れなかった。案の定、近所の花屋のおばさんに引き留められ、家まで連れて行ってもらった。今そんな子がいたら、近所付き合いもない地域では、誰も引き留めてはくれないだろう。そして数年後、近所で火事が起きた。その家の子どもが裏庭で火遊びをしていて、どうやら家に火が移ってしまったようだった。木造彫刻の立派な御屋敷だったが、燃え上がる炎の色と相まって、不謹慎だけれど子供の頃の僕は美しいなと思ってしまった。横で母も野次馬の一人として燃える家をみていたが、涙を浮かべているようだった。そこは前に助けてくれた花屋のおばさんの家だった。

#創作大賞2025 #オールカテゴリ部門

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