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"人間"に"戻る"ー船乗りが陸での生活に戻ったときに感じたこと。

地球にやさしいせいかつ目指して、自分のペースで移行する日々。

1年半の船乗りとしての生活を終えて、日本に本帰国して陸での生活に戻ってから、3か月がたちました。

改めて感じたことを、忘れないように、noteに残します。

シドニー停泊時の私の家、ディズニーワンダー。船員の中では「逃げ出せない」というダークジョークも含めて「ダンジョン」と呼んでいるもいたり。

「自然」と触れ合う世界に「戻る」

船の中では、無機質なものに囲まれた生活をしていたのだな。
そんなことを改めて実感しました。

ディズニーのクルーズ船なので、「オンステージ」と呼ばれるゲストが自由に動き回ることのできる滞在エリアはまさに夢の国の船版。でも、やっぱりすべてが人工物なんです。
衛生や管理の効率性の観点から、「自然」が置かれているのはごくわずか。オープンデッキに行くことで潮風や波の音、景色を楽しむといった五感を使ったことはできますが、勤務スケジュールの関係上なかなか時間確保が難しかったりしました。
また、ポジションによってはオンステージに上がってはいけない人もいるので(ハウスキーピングやダイニング、エンジニアなど非接客の方など)、そういった方は私以上に制限があったと思います。

フロントデスクに飾っていた数少ない生花のフラワーアレンジメント。3日目以降、船内の空気がうまく循環されていないのか花の元気がなくなってくのを、どう「ディズニールック」として維持させていくかよく頭を悩ませていました。

例えば私たちのポジションのランクの船室には窓がありませんでした。
なので、日本に帰ってきて、朝日が差し込んできて、カーテンを開けると日差しが入ってくる、そんなあたりまえの些細なことが、嬉しくて、暖かくて。日向に吸い寄せられて窓際に立っていたりすることもありました。

前述の衛生の観点から、自室に生花を置いたり観葉植物を置くのももちろんNG。だからこそ、観葉植物を買って水をあげたり、花のサブスクをして飾るのも、最近は幸せに感じます。

木々の中から見える木漏れ日だけで、ため息が出る。

「自分でやる」に「戻る」

船の中では食堂があり、朝昼晩3食が出されていました。食事を自分で作らなくてよいし、食費が浮くのでやっぱり貯金がたまるのは船乗り生活!と思いました。
そして、安全性の関係上、そして電力の制限上、部屋にレンジやケトルを置いたり火気は厳禁(そもそもスペースがない…)。たまに食べたくなるカップラーメンは、数カ所に設置された熱湯給水所でお湯を入れて、部屋まで持っていって食べる。たまに食べたくなったレンチンご飯は、レンジが2台設置されている食堂まで持っていって、部屋まで持って戻るのも微妙な距離。だから結局そのまま食堂で食べる、ということもありました。

そして、陸に戻ったことで、朝、コンロでお湯を沸かして、お茶を入れる時間や、農家さんからおすそ分けいただいたリンゴを包丁を使って切っている時、「あ、自分でやっている」と感動しました。

また、自室から職場まではもちろんの事ながらすべて繋がっている生活だったので、ぎりぎりまで寝て、支度をして出勤ギリギリになって自室を出る、という生活から、出勤時間や公共交通機関を考慮して動く生活も久しぶり。
特に、空を見上げたり、天気予報を見て、「あ、これは午後降りそうな空模様だな」と思って、玄関に下げた傘を手に取る瞬間、「こうしたことを考えること自体が、久しぶりだな」と感じます。
特に、今は寒い地域、寒い季節に久しぶりに日本にいることもあり、玄関を出て感じる外の寒い空気に身が引き締まるのを感じるのも、なんだか「生きている…!」と感じます。

人間って、よくよく考えたら1日の中で沢山選択をしたり考えることがあったんだなって。きっと、船の中ではこうした細かい選択や思考がほとんど必要なかったのだな、と改めて思いました。

インターネット常接の世界に「戻る」

会社の福利厚生で、1週間に7時間(420分管理)、無料で船内のWiFiに接続し自由にネットを使えていました。しかし、スターリンクを導入していたものの、時間帯によっては多くの方が同時接続をする関係で遅かったり、やはりゲスト(お客様)の回線の方が滞在体験を最大限よくする為優先されています。
そうした中自分もネット回線を自費で購入するほど画面と向き合う生活を船に乗っている間もしたいか、と思うと、せっかく訪れるなかなか行けない場所での体験を最大限楽しみたい、海や空が行く場所や気候によって変わるのを楽しみたい、といったことを考え、最低限にしていました。
もちろん、ずっと海の上で移動中という日もあるので、そういった日の余白の時間のつぶし方の為に、寄港地でWiFiがあるところを見つけてはNetflixでアニメやドラマをダウンロードし、移動日の休み時間や終業後はそれを鑑賞して楽しむ、といったこともしていました。
ネットにはスイッチを押せばつながり、溜まっていたメールやメッセージを一気に受信して優先順位をつけて返す。あとは自分の生存報告でInstagramのストーリーにいくつか動画を上げる程度で、本当に必要最低限しか相手に連絡を取りませんでした。

そういったこともあり、日本に帰ってきて、帰って来たよと外に自分から連絡を取りはじめ、仕事を始め、常にSNSやチャットツール、メールがネットと繋がっているので自分が何か作業をしている時もどんどん通知や情報がどんどん入ってくる。そんな環境が、思った以上に、しんどい、しんどい。
無意識にSNSをひらいてしまえば、どんどん次々に色々な情報やコンテンツが入ってきて、自分の中で取捨選択をする余裕がない。情報処理能力が鈍っていることに気付きました。

そして、AI。ChatGPTとGeminiをやっと最近使うようになってきましたが、これによる情報処理能力の早さにより、世の中の色々なシンプルタスクをはじめとしたタスクがかなり効率化されたことも知り、何となく一時帰国の時に感じていた「これは向き合わないと置いてけぼりになりそう」という危機感が、現実味を帯びてよく理解できます。

船の中で「浦島太郎」になっていた、と実感したのは、特にこのエリアでのことでした。

色々な人を想うことに、「戻る」

船の中では、世界中から集まった多様な人たちとともに生活をし、貴重な仲間ができました。ゲスト(お客様)も、船が主に停泊する港・街の周辺に住んでいる方から、ディズニークルーズの特定のコンテンツが好きだからと遠方から来る方、もちろん日本からいらっしゃるファンの方もいて、世界中の色々な方と数日間を共に船内で過ごすことを日々繰り返す、沢山の「繋がり」「ご縁」にも出会いました。

その「出会い」はその「出会い」でとても良かったと思う一方で、日本に帰国し、昔から繋がりがある知人友人や家族親戚と会い、昔からの私を知る人たち、久しぶりに「線として続く関係性」のある方たちの対話の喜びも感じました。

船の中では、終業後、もちろん船の中で過ごすしかなく、だからこそ前述の「出会い」に巡り合えたことはある一方、東京での日帰り道にデパ地下に行ってお菓子を見て、これから会う相手の顔を浮かべながら手土産を買う、そんな「人と繋がる喜びを感じること」が楽しく、ドキドキワクワクしました。

こうやって、日々の小さなことから、「ああ。なんだか、地に足をつけている」と感じることが最近増えています。

まさに、なんだか、こういう表現が合っているのかわからないのですが、人間に、戻っていっている、日々。


これからも少しずつ、一歩ずつ進んでいきます。

船の中での仕事で画面と向き合ったり人と向き合っている中、ふと外を見ると見えていた景色。
これ、これで、最高に、よかったんです。ね。

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