葉山の泥敷地浸透ランドスケープデザイン(その①敷地現状、デザインの方針、施工前半)
葉山の里山エリア・下山口の星山に、新しく建設されるリトリート施設。建物の前面に割と広いスペースがあり、駐車場として利用したい意向がありましたが、いつも泥々にぬかるむ状態で、雨の後は人が歩くのも大変なほどでした。水が捌ける駐車場にしてほしいとの依頼を受け、ハビタはデザインと施工の監修を行い、造園家「よろこびの庭」遠山勉さんと、敷地に挑みました。
敷地の位置
葉山は海の印象が大きいですが、実は奥深い山地エリアが東西方向に広がっています。御用邸のある一色海岸の一色の隣が下山口で、本敷地は下山口の山側の下山川支流の一角にあります。国土地理院自分でつくる色別標高図で赤く示したのが敷地の位置です。

さらに寄って見ると下図のような状況になっており、ちょうど山地がゆるやかな扇状地に出る地形の変換点にあります。周辺には深く地形に刻まれた谷筋も見え、下山川の水の流れが始まる源流の一つの近くに位置します。隣接する山地の傾斜が急で、これは湧水が出てきそうな雰囲気です。

泥敷地の状況
2026年4月8日の敷地の状況です。アメダス三浦観測所のデータによると4月4日に日降雨量27mm、4月5日に10mmの比較的まとまった雨が降りましたが、3日たっても水たまりがひいておらず敷地全体が泥々の状況になっています。長靴とかでないと普通の靴では歩くことをためらう状態です。

敷地の奥の方は樹林との境界部分が緩傾斜地になっていて下草がはえているのですが、そちらの方は水が溜まった形跡はなく、すっかりはけています。それに対して、建築前の平場の部分は、泥々の状態です。その要因としては、周辺地形が斜面で表流水が集水されやすく、かつ平場の地質が粘土層等の不浸透層になっており、水が排水されないことが想定されます。

平場の手前側に隣接する斜面は急な崖地になっていますが、崖地と平場の地形変換点を見ると、濁った泥水が溜まった水たまりとはちがった感じで、うっすらと水が滲んでいる場所があります。これは・・・。自分の中の湧水センサーが反応します。湧水が出ているサインのように感じます。

一方、緩い傾斜地が平場に変わる地点では、少し微地形の窪地があり、水がしみ込んでいるような雰囲気があります。法面はところどころ表流水が流下した痕跡がありますが、植生も生えており、土壌侵食には至っておらず、良さそうな状況です。ここはうまく活かして緩い傾斜地側からの表流水をキャッチする浸透貯留池をここにつくることを考えます。

敷地の雨水処理の考え方と施工前半部
上記を踏まえて、敷地の雨水処理の考え方として検討したのは以下7点です。
①斜面の下の地形変換点に溝を掘り、斜面からの表流水を受け止め、敷地の端部にある低地部分に大穴を掘り、そこへ向けて排水させる。溝の中には、有孔トレンチ管を敷設し、オーバーフローが迅速に排水されるようにします。
②大穴の底にはさらに竪穴と焼き杭を数本打ち込み鉛直方向の浸透能力を強化した上で、ぐり石と有機物をミルフィーユ状にした階層構造をつくり、棲み着いた微生物による土壌改良による浸透能向上も狙います。
③溝にもところどころに竪穴を打ち込み、その場所でも浸透させるようにします。またここもグリ石と有機物の蓄積構造と、土壌改良を狙います。
この①、②、③が本敷地の骨格となる排水、浸透システムとなります。
④平場部分には水が溜まりやすい場所を検知し、そこに竪穴や溝への排水路を設けることにします。
⑤緩傾斜地の下には遊水地のような貯留部を設け、そこで一時的貯留し、オーバーフローが排水水へ導水されるようにします。
⑥平場は常時泥になっている層を10cm程度すき取り、排水性のよい石材を入れ排水性を向上させます。さらに、斜面脇の溝へ水勾配をつけ、水が平場へたまらないようにします。
⑦エントランス付近は車の出入りがあるので、有孔トレンチ管による暗渠排水とし、敷地外側に設置する石垣下に溝を掘り、流下させ、最終的に公共雨水枡に接続します。
以下に全体の雨水ランドスケープ計画の概略図を示します。



まずは平場を現状から10cm程度すき取りました。表面に長年堆積した泥を一旦敷地外へ排出する作戦です。建築側から斜面へ向けて水勾配を取るように整地し、水が滞らないようにします。

大まかな溝の輪郭を敷地に白線で描き、ユンボで掘っていきます。

緩い傾斜地からの表流水を受け止める貯留池・遊水地も掘っていきます。GLから50cm程掘り下げます。

平場の表面の泥をすき取った状態でも、急な斜面側下の水が滲んでいたあたりには、ここだけ透明度の高い水が溜まっています。いよいよ湧水の疑いが強い状況です。

これは掘ってみないと下の状態がどうなっているか分からないということで、恐る恐るユンボでひとかきだけしてみました。すると・・・水が出ました。数分たっても水位が落ちません。周囲の土から水がにじみ出ている状況もあります。湧水決定です。ついに掘り当ててしまいました。
これは、普段の降雨による表流水以外にも湧水も上手くコントロールしないといけないことになり、一気に排水処理の難易度が上がることになります。

次の雨の時に、湧水が溢れ、せっかく泥を排出した敷地がまた泥々の元の木阿弥に戻ってしまうことが懸念されます。急ぎ、溝掘りを加速させることとし、なんとか遊水地地点を敷地隅の大穴までつなげて、排水経路を確保することを目指します。
すると、斜面下の溝を掘り進めていくうちに、今度は粘土層がでてきました。

青白くきれいな粘土です。いわゆるグレイ層のような下水のような匂いはなく、少し油身のある粘土そのものです。結構な粘土塊が出ます。この粘土を使って焼き物をつくるといい感じのものができそうです。葉山焼きとかにして売り出そうとか妄想したり、星山で環境教育をされている方に子供とのワークショップで使わないかと聞きましたが要らないとのこと。まあ、そりゃそうです。
困ったことは、掘削した残土を受け入れる処理所が、土だけならいいが、粘土混じりの土は受け取らないとのことです。しかも粘土の処分費は高い。
どれだけ、粘土層があるかも分からずさて、どうしたことか。湧水がわき出し、粘土層を掘り当てしまい、先行きが思いやられる状況になりました。
(その②に続く)

