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「メールで合意しました」は、契約書と同じ効力を持ちますか。

契約書を作る時間がなかった。

でも、条件はメールでやり取りして、相手からも「承知しました」と返事をもらっている。

これで、契約は成立していますか。

——成立しています。

■ 契約に書面は必須ではありません


日本の法律では、多くの契約は口頭でも成立します。

「これをやってください」「分かりました」

このやり取りだけで、契約は成立しています。

書面は、契約を成立させるために必要なものではありません。

では、なぜ契約書を作るのか。

後から「言った・言わない」にならないためです。

つまり契約書は、成立要件ではなく、記録です。

■ メールでも記録にはなります


記録が目的であれば、メールでも一定の役割を果たします。

「本日のお打ち合わせで、以下の内容にてお願いしたく存じます。

・業務内容:〇〇
・報酬:〇〇円(税別)
・納期:〇月〇日
・支払期日:納品月の翌月末日
・修正対応:2回まで

上記でお間違いなければ、ご返信いただけますでしょうか」

これに「承知しました」と返ってくれば、その内容で合意した記録が残ります。

日時も残ります。差出人も特定できます。

■ ただし、抜けやすいものがあります


メールでのやり取りは、その場で必要なことしか書きません。

業務内容、報酬、納期。

この3つは、たいてい書かれます。

一方で、抜けやすいのがこちらです。

・成果物の著作権は誰のものになるのか
・実績としてポートフォリオに載せてよいか
・検収の期限はいつか
・修正は何回まで無償か
・トラブルが起きた場合、賠償の範囲と上限はどうなるか
・途中で中止になった場合、着手した分の報酬はどうなるか
・秘密保持の範囲と期間

これらは、通常のやり取りでは話題に上りません。

そして、問題になるのは、たいていこの部分です。

■ 「合意していないこと」はどうなるか


契約書にもメールにも書いていない事項は、どうなるのでしょうか。

民法などの規定が適用されることになります。

たとえば著作権であれば、譲渡の合意がなければ、原則として制作者に残ります。

損害賠償であれば、上限の定めがなければ、賠償範囲は法律上の原則に従うことになります。

つまり、書いていなければ「決めていない」のではなく、「法律の原則が適用される」ということです。

その原則が自分に有利とは限りません。

■ メールで済ませるなら、この5項目


契約書を作る余裕がない案件でも、メールに以下を入れておくと、後の負担が変わります。

【① 業務範囲】

含まれるものだけでなく、含まれないものも書きます。

「なお、公開後の運用・更新、操作方法のレクチャーは本件に含まれません。ご希望の場合は別途お見積りいたします」

【② 検収】

「納品後14日以内にご確認いただき、ご連絡がない場合は検収完了とさせていただきます」

【③ 修正回数】

「修正対応は2回までとさせていただきます。3回目以降は別途お見積りいたします」

【④ 著作権と実績掲載】

「成果物の著作権は、報酬全額のお支払い後に貴社へ移転いたします。なお、実績として当方のポートフォリオに掲載させていただく場合がございます」

【⑤ 中止時の精算】

「本件が途中で中止となった場合、それまでに実施した作業分についてはご精算いただきますようお願いいたします」

この5つがメールに入っていて、相手から「承知しました」と返ってくれば、記録としてはかなり整います。

■ 見積書の備考欄でも同じことができます


メールで長文を送るのが気が引けるなら、見積書に書く方法もあります。

見積書の備考欄に、上記の5項目を箇条書きで入れる。

相手が見積書を承諾すれば、その条件で合意したことになります。

「見積書に書いてあります」と言えるのは、実務では強い材料です。

■ それでも契約書を作る理由


メールでも記録にはなります。

では、なぜ契約書があるほうがよいのか。

【① 網羅性】

契約書には、通常のやり取りでは話題に上らない事項が体系的に入っています。

メールは、その場で思いついたことしか書けません。

【② 探しやすさ】

半年後、1年後に条件を確認したくなったとき。

メールだと、どのスレッドだったか探すことになります。

契約書なら、1つのファイルを開けば済みます。

【③ 相手方の受け止め方】

法人相手の場合、社内の手続き上、契約書が必要になることがあります。

「契約書はありません、メールでやり取りしています」だと、先方の経理や法務で止まることがあります。

【④ 一度作れば使い回せる】

自分用のひな形を1つ作れば、案件ごとに業務内容と金額を差し替えるだけで使えます。

初回の手間はかかりますが、2件目以降は楽になります。

■ 使い分けの考え方


すべての案件に契約書が必要かというと、そうとも限りません。

【メールや見積書で足りることが多い場面】

・数万円程度の単発案件
・すでに何度も取引している相手
・納品して終わりの、シンプルな内容

【契約書を作っておくと安心な場面】

・金額が大きい
・継続的な取引になる
・初めての取引先
・成果物の権利関係が絡む
・秘密情報を扱う
・複数の関係者が関わる

判断の目安は、「もしトラブルになったら、いくらの損失になるか」です。

その額が大きいほど、記録を厚くしておく意味が出てきます。

■ 契約書がないまま進んでしまった案件は


すでに口頭で始まってしまった案件があるかもしれません。

その場合、途中からでも記録を作ることはできます。

「これまでのお話を整理させていただきました。以下の内容で認識に相違ないか、ご確認いただけますでしょうか」

そう前置きして、条件をまとめたメールを送る。

相手から「その通りです」と返ってくれば、その時点で記録になります。

遅すぎるということはありません。


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