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説得力を上げてみる

小論文で「自分の意見を述べなさい」と求められる問題に出会って,
なかなか自分の意見を作れないなぁ...とか
あんまり上手く言えた気がしないなぁ...とか
そういう変な手応えしかなくてモヤモヤすることがあるかと思います。

例えば京大法の編入学試験では以下の問題が出題されました。

選挙で投票することは権利であるのみならず,主権者としての義務であるとして,投票を義務づけるべきであるという考え方がある。この考え方について,賛成と反対それぞれの立場から,理由を述べなさい。

京都大学法学部平成31年度第三年次編入学試験より

この問題を題材として,自分の意見の述べ方に関する一考を。
※以下,あくまで小論文の書き方に関する説明です。特定の政治思想を述べたり,特定の立場にある方を徒らに貶めるものではありません。ご了承ください。

よくある答案

設問で問われていること自体は,法学,政治学を学んでいなくても,ニュースや他者の意見でも目にしたことがあるかと思います。

そうすると,こんな意見がありそうです。

意見A「参政権は権利だから,義務じゃないよ」
意見B「義務づけることで投票率が上がるというメリットがある。投票率が100%に近づけばほとんどの有権者が政治に参加しているといえるからね。だから義務づけるべきだ。」

こういう意見がダメだと言いたいわけではありません。議論の端緒としては適切なものだと思います。ただ,冒頭の何だかモヤっとする,手応えがないという悩みに応えたい。

モヤっとする原因

なんかモヤっとする。京都大学の編入学試験の問題なので,「こんなんでいいの?」と不安になる気持ちもわかります。

意見A

意見A「参政権は権利だから,義務じゃないよ」。
 だから
投票を義務づけるべきでない。

モヤっとする。なぜかと言うと,問いに部分的にしか答えていないからです。

問いでは「投票を義務づけるべきか」と問われているのに,「参政権は義務じゃない」と答えています。一見すると筋が通ってそうですが,次の例を見ていただきたい。

私は今日,朝ごはんも昼ごはんも食べていません。
しかし18時現在,お腹いっぱいです。
なぜですか?

朝ごはんも昼ごはんも食べていないのにお腹がいっぱい。考えられる理由はいくつかあるでしょうが,1つ思いつくでしょう。

直前におやつ,間食を食べ過ぎた!

そうなんです。お腹がいっぱいになる原因は他にも考えられます。実は晩ごはんを17時59分に食べたかもしれません

お腹がいっぱいになるという結果をもたらす原因は他にもありうるのに,原因の一部しか言及できていません

こういう問いはどうでしょうか。

70歳のおばあさんが池に落ちてしまいました。
しかしそのおばあさんはおぼれませんでした。
なぜですか?

まぁ...クイズですね。池が浅いこともあるでしょうし,70歳のおばあさんだからと言って絶対に泳げない,というわけでもないでしょう。特定の結果に至る原因や,逆に至らせないようにする阻害要因って,探せば結構あるんですよね。

意見B

意見B「義務づけることで投票率が上がるというメリットがある。投票率が100%に近づけばほとんどの有権者が政治に参加しているといえるからね。だから義務づけるべきだ。」
 だから
投票を義務づけるべきだ。

一見それっぽい。でもモヤっとする。

なぜモヤっとするかというと,理由づけがメリットだけで構成されているからです。

メリットをたくさん並べて,それで「〜すべき」,「〜しなければならない」という当為が出てくると,ちょっと怖いことになりますョ。

例えば環境問題。大気汚染とかゴミ問題,乱開発によって地球環境が悪化している。このとき,人間を全滅させれば確かに環境に良い成果は出ますよね。たくさんメリットが出てきます。でもそれだからといって「人間は全滅すべき」という主張が肯定されると,なんか嫌ですね。それは言い過ぎか...。

メリットがあるというのは,結構主観的なことです。目線を変えればデメリットにもなる。だから「〜すべき」という当為を肯定する力を認めるわけにはいかない。

そういうわけで,メリットを並べただけで「〜すべき」とは言えない。

じゃあどうしよう。

考え方

こういう場合には,
個々人に投票する義務を負わせることができるか?
という観点から考えてみるとどうでしょうか。

仮に個々人に投票する義務があると主張することができれば,「投票を義務づけるべきだ」と言えます。反対に個々人に投票する義務があるとは言えないと主張することができれば「投票を義務づけるべきでない」と言えます。

先ほどの意見Aと似ているように見えるかもしれませんが,違います。意見Aは参政権の話に限定しています。しかしここでは,参政権以外に義務を肯定する方法があるか?という観点からアプローチしています。似ているかもしれませんが違う(こういうところが「論理をこねくり回している」とか言われる原因なんですけどね,違うんです)。

国民は主権者です。だから主権者は確かに投票しないと民主主義が始まりません。でもそこにいう「主権者」というのは,有権者の集合体の話です。仮に私が投票しなかったからといって(仮の話ですよ!),他の人が投票すれば,有権者の集合体としては「投票する」という仕事を全うしているわけです。

でもそれを超えて,個々人に投票する義務を負わせられるか。
これがこの問題の争点です(だと思っています)。

「法律で義務付ければ問題なかろう」という意見もおもしろいです。でも仮に憲法上投票する義務がないと言える場合に,本来義務がないところに法律で強制するのは可能ですか? 法律で義務付ければ問題ないと言うためには,憲法上も投票する義務が肯定できる場合に限られるかと思います。そういう主張をしないといけません。

なんかパズルみたいですね。めんどくさい...という感想はごもっともだと思います。他の人がする説明を聞くと「めんどくさい...」と思うのもわかります。私も人から説明を受けているだけ,受け身で聞いていてそう感じた経験は山ほどあります。反対に,自分でパズルを解いている感覚の時には,これが全然めんどくさくないんですよ。同じテーマなのに,変ですね。

まぁ....変だから良いんですけどね。

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京都中央ゼミナール 講師のアソビ場・ボヤキ場 よろしければ応援お願いします! いただいたチップをもとに,もっと満足していただけるような,充実した情報発信に向けて,記事作成や取材等に使わせていただきます