長年使ったエルメスの財布を修理に出した話
会社員時代に社長賞をもらって、思いがけず金一封を手にしたとき、
「棚からぼた餅、記念に買っちゃお!」
と浮かれて、エルメスの長財布「べアン スフレ」を購入しました。
私の記憶では当時30万円くらいだったかな?
それが今では60万円くらいするようで、会社を辞め、シングルマザーとなった私には到底手が出せる金額ではなくなりました。
「そろそろ修理に出したほうがいいよ」
10年以上使っていると、四隅が削れて丸くなり、縫い目や、金具に通すベルトのあたりもよれてきて、エルメスとはいえ、みすぼらしい感じがしてきました。
自分では、
「まあ、まだ大丈夫かな?」
と思っていたのですが、ブランド好きの友人が私の財布をちらっと見たときに、
「今のうちに修理に出したほうがいいよ。ダメージも今なら少ないし、そのほうが長く使えるから」
と勧められました。
だからといって、代わりの財布もないし、探すとなれば使い勝手のいい財布は見つからないし、どうしようかと迷いました。
でも、10年使っていれば愛着もあるし、友人の「新品みたいになるから、修理したら」という言葉に背中を押され、修理に出すことにしました。

今年の2月、エルメスのブティックへ財布を持っていくと、店員さんは財布を見るなり、
「長くご愛用してくださって、ありがとうございます」
と、とても嬉しそうに言ってくださいました。
さらに店員さんは財布の状態を丁寧に確認しながら、
「確かに四隅は丸くなってきていますし、縫い目の一部の糸が擦れて細くなってきてはいますが、10年以上使っているとは思えないほどベルトも綺麗ですね。大切に使ってくださってきたことがわかります」
と言ってくださいました。
さすがプロ。財布を一目見ただけで、その持ち主がどうやって使ってきたかを見抜いてしまうんですね。
店員さんの言葉から、
購入した直後からの会社員時代、フリーランスになり奮闘していた日々、会社を立ち上げ悪戦苦闘していた頃。さまざまなことが懐かしく思い出されました。
修理を依頼すると、
「今からですと、お戻しまでに3か月ほどかかります」と言われたので、
「3か月もかかるんですか?」と聞くと、
「エルメス専属の職人が修理するので、それだけ時間がかかるんです」
と説明を受けました。
3か月ぶりに戻ってきた財布
日頃の忙しさにかまけて、財布を修理に出していることはすっかり忘れていました。そんなときに、「修理品お渡しのご案内」のメールがエルメスから届きました。

出張中ですぐには取りにいけなかったのですが、ゴールデンウィーク明けにようやく受け取りに行きました。
すると、店員さんは店の奥から白い紙で包装された財布を持ってきて、「どうぞ、ご確認ください」と言いながら、包装紙を一枚一枚丁寧に開けて行きました。
財布を目にしたとき、友人が言った通り、10年前とほぼ同じ見た目は真新しい財布になっていました。

中を確認しようと思っておもむろに手にとり、財布の中を確認したところ、そこかしこになんとなく私が10年使ってきた使用感が伝わってきました。そこから、思い出も蘇ってくるようでした。

縫い目もきれいになっているが、どこか面影が残っている。

まっさらな財布にしようと思えば、エルメスの職人であれば、きっとできるのでしょう。
でも、もし完全にまっさらな状態になっていたら、そこにあった思い出まで消えてしまう気がします。
きっとエルメスの職人は、利用してきた人の思い出を残そうとしてくれたんではなかろうかと推察しました。
もちろん、私は職人さんに直接会って話を聞いたわけではありません。
どんな人が修理してくださったのかも知りません。
それでも、手元に戻ってきた財布を見たとき、職人の技とユーザーへの思いが伝わってきました。
さすが世界のトップブランド、エルメスだと感服しました。これからもエルメスを愛し、使い続けようと心に決めました。
こうした一人一人のお客さんの思いを大切にするということの積み重ねが、「ブランド」を作り上げていくのでしょうね。

ところで、今の私はそんな身分ではない
ところで、財布を購入した時とは違い、今やシングルマザーで中3男子の子育てに四苦八苦している私は、エルメスを買えるような立場ではなくなりました。
修理のためにエルメスのブティックに入ったものの、店頭に並ぶ商品にはとても手が出せません。
でも、息子の年間の教育費が浮いたなら、「バーキン1つくらいは買えるかな?」なんて不謹慎なことを考えてしまいました(笑)。

うらやましい限り。
