正月の遊び⑦(羽子板──音で、邪気を祓う遊び)
正月の空に、乾いた音が響く。
「パーン」澄んだ冬の空気の中で、羽根を打つ音は、どこまでもよく通ります。
羽子板は、見て楽しい遊びであると同時に、聞いて清める遊びでもありました。
●羽子板は祓いの遊び
羽子板で打つ羽根には、トンボの羽を模した飾りがついています。
トンボは、前にしか進まない虫。
そこから、「勝ち虫」と呼ばれ、縁起の良い存在とされてきました。
その羽根を、羽子板で打ち返す。
邪気を払い、災いを遠ざけ、良い一年を迎えるための所作だったのです。
●音には力がある
日本文化では、音は「気」を動かすものと考えられてきました。
鈴の音。太鼓の音。拍手の音。そして、
羽子板の音。
「パーン」と鳴るその一音が、空気を切り、場を整え、心を目覚めさせます。
羽子板は、遊びの形を借りた祓いの儀式でもありました。
●罰ではなく笑い
羽子板には、負けた人が顔に墨を塗られるという風習もあります。
それは罰ではありません。
みんなで笑い、場を和ませるための遊び心でした。
勝つ人も、負ける人も、どちらも主役。
羽子板は、勝敗よりも空気を楽しむ遊びです。
●羽子板は風を打つ遊び
羽子板は、相手と戦う遊びではありません。
風と向き合う遊びです。
風の強さ。羽根の軽さ。板の角度。
自然と呼吸を合わせることで、羽根は美しく返ってきます。
羽子板は、自然と人のあいだで遊ぶ文化でした。
●女の子の成長を願う道具羽子板は、
女の子の健やかな成長を願う縁起物としても大切にされてきました。
飾り羽子板は、守り札のような存在。
強く、しなやかに、前へ進めますように。
そんな願いが、静かに込められていました。
●羽子板が教えてくれること
羽子板は、こう教えてくれます。
邪気は、力で追い払うのではなく、音と笑いで祓えばいい。
勝つことより、場が和らぐことの方が大切だと。
羽子板は、正月に鳴り響くやさしい祓いの音でした。
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