国内トップ校から海外大学へ行く生徒は、別種のすごさがある
「海外大学進学に強い学校」と聞くと、広尾学園や広島叡智学園のような学校に注目が集まります。
それは当然だと思います。
広尾学園は、国内難関大学と海外大学の両方で強い実績を出しています。
広島叡智学園は、県立校でありながら、IB、全寮制、英語での学び、海外大学進学支援を組み合わせ、1期生から大きな実績を出しました。
どちらも、海外大学進学を学校設計の中にかなり明確に組み込んでいる学校です。
一方で、私は別のタイプのすごさにも注目したいと思っています。
それは、灘、開成、麻布、日比谷のような日本型トップ校から、海外大学へ進学する生徒たちです。
一見すると、これらの学校は海外大学進学実績という点では、広尾学園や広島叡智学園ほど目立たないかもしれません。
しかし、それは「海外大学に弱い」という話ではないと思います。
むしろ、国内最難関大学に最適化された環境の中で、よく海外大学進学まで準備できたなと感じます。
そこには、海外大学進学に特化した学校とはまた違う、別種のすごさがあるのではないでしょうか。
日本型トップ校の主戦場は、今も国内最難関大学
灘、開成、麻布、日比谷といえば、日本を代表するトップ校です。
ただし、その進学実績を見ると、主戦場はやはり東大、京大、医学部、一橋、東京科学大などの国内最難関大学です。
たとえば、開成高校は2025年度入試で東大150名、東京科学大22名、一橋18名という圧倒的な国内実績を出しています。一方で、海外大学についても、Columbia、Duke、Johns Hopkins、McGill、University of British Columbiaなどへの合格を公表しています。
灘高校も、東大・京大・医学部など国内最難関大学への進学実績が非常に強い学校です。その一方で、UC BerkeleyやUniversity of Washingtonなど海外大学への合格も掲載されています。
日比谷高校も、東大をはじめとする国内難関大学への高い実績を出しつつ、Oxford、King’s College London、University of Bristolなどへの海外大学合格も見られます。
麻布高校については、国内難関大学への実績が非常に強い一方で、学校公表資料上では海外大学進学を大きく打ち出している学校という印象は強くありません。
ここから見えるのは、これらの学校が海外大学に行けないということではありません。むしろ、海外トップ大学を狙えるだけの学力を持った生徒は相当数いるはずです。
ただし、学校全体の進路文化や支援体制は、基本的に国内最難関大学に向いている。
ここが大きなポイントだと思います。
海外大学進学は、国内大学受験とは別競技
国内大学受験には、ある程度はっきりしたレールがあります。
共通テストがあります。
二次試験があります。
模試があります。
過去問があります。
偏差値があります。
学校や塾の進路指導にも、長年の蓄積があります。
もちろん、国内最難関大学の受験は非常に厳しいものです。
ただ、競技のルールは比較的明確です。
一方、海外大学出願はかなり違います。
TOEFLやIELTSなどの英語試験。
SATやACT。
APなどの履修や成績。
エッセイ。
推薦状。
課外活動。
自分が何を学びたいのかを言語化する力。
大学ごとの出願戦略。
場合によっては奨学金申請。
こうした複数の要素を、長い時間をかけて準備する必要があります。
しかも、海外大学出願では、単に成績が良いだけでは足りません。
自分は何に関心があるのか。
なぜその大学で学びたいのか。
これまで何をしてきたのか。
どのような問いを持っているのか。
将来、どのような方向に進みたいのか。
こうしたことを、英語で、しかも説得力のある形で表現する必要があります。東大に合格できる学力があるからといって、海外大学出願がそのままうまくいくわけではありません。
求められる力の種類が違うのです。
広尾型はチーム戦、日本型トップ校型は個人戦
広尾学園や広島叡智学園のような学校では、海外大学進学が学校設計の中に組み込まれています。
海外大学を目指す生徒が一定数いる。
英語で学ぶ環境がある。
APやIBなど、海外大学出願と相性の良い履修がある。
先生方が推薦状や出願プロセスに慣れている。
海外進学が、学校文化の中で自然な選択肢になっている。
これは非常に強い環境です。
海外大学進学が、ある意味で「チーム戦」になっていると言えます。
もちろん、生徒本人の努力が重要であることは変わりません。ただ、学校側に仕組みがあり、仲間がいて、情報があり、出願支援のノウハウがある。
この差は大きいと思います。
一方で、灘、開成、麻布、日比谷のような日本型トップ校では、海外大学進学はまだ少数派です。
学校の空気感としては、おそらく東大、京大、医学部、一橋、東京科学大、早慶などが中心でしょう。
周囲の友人も、国内大学受験に向けて準備している。
先生方の進路指導も、基本的には国内大学受験を前提に蓄積されている。
模試も、教材も、過去問も、同級生との会話も、国内大学受験を中心に回りやすい。
その中で、あえて海外大学を目指す。
これはかなり個人戦に近いと思います。
学校の支援がまったくないという意味ではありません。
実際に海外大学合格者は出ていますし、優秀な学校であれば、必要な推薦状や進路相談に対応する力もあるはずです。
ただ、学校全体として海外大学進学に最適化されているわけではない。
だからこそ、本人と家庭がかなり主体的に動く必要があります。
周囲と違う進路を選ぶ孤独さ
国内トップ校から海外大学を目指す難しさは、準備量だけではないと思います。
心理的な難しさもあるはずです。
同級生の多くが東大、医学部、京大、一橋、東京科学大などを目指す中で、自分だけ出願時期も、試験形式も、必要な準備も違う海外大学を目指す。
これは、単なる進路選択ではなく、周囲と違う道を選ぶ孤独さを伴うと思います。
国内トップ校にいる生徒であれば、周囲からは「普通に東大を狙えばいいのでは」「医学部でいいのでは」と見られることもあるでしょう。
国内大学であれば、同級生と同じ模試を受け、同じように過去問を解き、同じ受験スケジュールに乗ることができます。
しかし海外大学出願では、準備のリズムが違います。
エッセイを書く時期も違う。
推薦状を依頼するタイミングも違う。
英語試験やSATの準備も必要になる。
出願先も、国や大学ごとにかなり違う。
合格後には、費用や奨学金の検討も待っている。
このルートを、国内受験中心の環境の中で進めるのは、相当な意思が必要です。
だからこそ、灘、開成、麻布、日比谷のような学校から海外大学へ進学する生徒を見ると、私は素直に感心します。
それは、学力が高いというだけではありません。
周囲と違う進路を選ぶ主体性。
自分で情報を集める力。
国内受験とは異なる準備を進める計画性。
英語で自分を表現する力。
自分の関心を言語化する力。
こうした力がなければ、なかなか到達できない道だと思います。
教育力と選抜効果は分けて見る必要がある
海外大学進学実績を見るときに、もう一つ大切なのは、教育力と選抜効果を分けて考えることです。
広尾学園のような学校には、学校としての進学支援力があります。
海外大学出願のノウハウがあり、英語力の高い生徒も集まりやすく、進路の選択肢として海外大学が見えやすい環境があります。
一方で、そこには高い選抜効果もあるはずです。
もともと学力や英語力が高い生徒、家庭の教育意識が高い生徒、海外大学進学に関心のある家庭が集まりやすい。
その上で、学校が環境と支援を提供することで、実績が出ている。
広島叡智学園も、県立校とはいえ、全寮制、IB、英語での学び、離島での生活を選ぶ時点で、かなり強い自己選抜が働きます。
一方で、灘、開成、麻布、日比谷は、学力面で極めて強い選抜効果を持つ学校です。
ただし、その選抜効果は、基本的には国内受験の文脈で発揮されます。
海外大学進学においては、その高い学力を、別の出願様式に変換しなければなりません。
この変換が簡単ではないのです。
だからこそ、日本型トップ校から海外大学へ進学する生徒には、単に「頭が良い」だけでは説明できない力があると思います。
最初から海外大学を目指すなら、学校設計も見るべき
ここで誤解したくないのは、国内トップ校から海外大学へ行くルートを過度に美化することです。
たしかに、国内トップ校から海外大学へ進学する生徒はすごいと思います。
ただし、それが最も合理的なルートとは限りません。
もし最初から海外大学進学を強く視野に入れているなら、海外大学出願を学校として支えてくれる環境を選ぶ方が合理的な場合もあります。
英語で学ぶ環境がある。
IBやAPなどの履修がある。
海外大学進学を目指す仲間がいる。
先生方が推薦状や出願プロセスに慣れている。
学校として出願スケジュールや奨学金情報を支援してくれる。
こうした環境は、海外大学進学において非常に大きな意味を持ちます。
一方で、国内トップ校には国内トップ校の価値があります。
高い学力層の中で学ぶこと。
知的に刺激的な同級生に囲まれること。
国内最難関大学を目指す環境で鍛えられること。
自由で自律的な校風の中で、自分の関心を深めること。
これもまた、大きな価値です。
つまり、どちらが上かではありません。
学校の設計と、子どもの進路志向が合っているかどうかです。
最初から海外大学進学を強く考えている子にとっては、海外出願支援が整った学校の方が合うかもしれません。
一方で、国内トップ校の知的環境で伸びた先に、海外大学という選択肢が見えてくる子もいるでしょう。
大事なのは、学校名やランキングではなく、その子がどの環境で伸びるのかを見極めることだと思います。
海外大学進学実績は、数字だけでは読めない
海外大学進学実績を見るとき、合格者数だけを比べると誤解が起きます。
延べ合格数なのか。
実進学者数なのか。
何人が海外大学を受験したのか。
どの国の大学なのか。
どの程度の奨学金が出ているのか。
学校がどこまで支援したのか。
生徒本人や家庭がどこまで準備したのか。
ここまで見ないと、実績の意味は分かりません。
広尾学園のように、海外大学進学が学校文化に組み込まれている学校の実績には、学校設計の強さがあります。
広島叡智学園のように、県立校で海外大学進学支援を本気で作った学校の実績には、教育モデルとしての価値があります。
そして、灘、開成、麻布、日比谷のような日本型トップ校から海外大学へ進学する生徒には、個人戦を突破した別種のすごさがあります。
どれも一括りにはできません。
どのルートが、その子に合っているのか
海外大学進学において大事なのは、「どの学校が上か」ではないと思います。
大事なのは、どのルートがその子に合っているかです。
海外大学進学に最適化された学校で、早い段階から準備する道。
国内トップ校で高い学力と知的環境を得たうえで、海外大学出願を自分で切り開く道。
どちらにも強みがあります。
ただし、必要な力は違います。
前者は、学校設計の力を活用しやすいです。
後者は、本人の主体性と家庭の支援がかなり問われます。
だからこそ、日本型トップ校から海外大学へ進学する生徒を見ると、私は「よくその準備ができたな」と感じます。
国内最難関大学に最適化された環境の中で、海外大学という別競技にも対応した。
これはかなりすごいことだと思います。
海外大学進学のニュースを見ると、どうしても学校別の合格者数やランキングに目が行きます。
しかし、その数字の裏側には、学校設計の違い、生徒の選抜効果、家庭の支援、本人の意思、進路文化の違いがあります。
そこまで見て初めて、海外大学進学実績の意味が見えてくるのではないでしょうか。
私は、広尾学園や広島叡智学園のような学校の実績も素晴らしいと思います。同時に、灘、開成、麻布、日比谷のような日本型トップ校から、少数派として海外大学へ進学する生徒にも、別種の敬意を持ちます。
彼らは、整備された海外進学レールに乗ったというより、国内トップ校の環境の中で、自分で別の扉を開いた生徒たちなのだと思います。
参考情報
開成高等学校 2025年度大学入試結果
東大、東京科学大、一橋大など国内大学の実績に加え、Columbia、Duke、Johns Hopkins、McGill、University of British Columbiaなど海外大学合格実績が掲載されています。
https://kaiseigakuen.jp/wp/wp-content/uploads/2025/10/shirnro2025_1017.pdf灘高等学校 2025年度大学合格者数
東大、京大、医学部など国内大学の実績に加え、UC Berkeley、University of Washingtonなど海外大学合格実績が掲載されています。
https://www.nada.ac.jp/2025goukaku0414.pdf東京都立日比谷高等学校 2025年度大学合格状況
東大、一橋、東京科学大など国内大学の実績に加え、Oxford、King’s College London、University of Bristolなど海外大学合格実績が掲載されています。
https://www.metro.ed.jp/hibiya-h/img_sub/filelink/filelink-pdffile-25957.pdf麻布高等学校 2025年度大学合格者数
東大、京大、一橋、東京科学大など国内難関大学への実績が掲載されています。
https://www.azabu-jh.ed.jp/education/item/2025goukaku.pdf
