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【PREP研究評】教育?所得?健康?HDIの決定要因をデータで追った研究が面白い!

読書の世界をもっと楽しみたい。

でも何を読めばいいのかわからない。

そんなあなたのために、「PREP研究評」をご提供します。

この企画では、私が読んで勉強になった研究の概要やポイントをわかりやすく紹介し、皆さんの読書、noteやブログの執筆に役立ててもらうことを目指しています。

具体的には、PREP手法(Point(主張)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(再主張))を使って、研究の魅力を分かりやすくお伝えします。

今回ご紹介するのは、Kuldeep Singh ほかの『Determinants of Human Development Index (HDI): A Regression Analysis of Economic and Social Indicators』です。

私はこの論文に書いてある「見方」を生活に当てはめてみたら、考え方が180°変わりました。

Point(主張)

Point― HDIは「お金×教育×乳児死亡率」でほぼ説明できる

この論文が一番伝えたいのは、国の豊かさを示すHDI(Human Development Index)は、たくさんの指標を並べなくても、GDP per capita(1人あたりGDP)、mean years of schooling(平均就学年数)、infant mortality rate(乳児死亡率)の3つでかなり説明できる、ということです。

実際にこの3変数の回帰モデルはR-squareが0.95とされ、HDIのばらつきの95%を説明できる、とまとめられています。

しかも方向性がわかりやすいんです。

GDP per capitaと平均就学年数はHDIにプラス。

乳児死亡率(出生1000あたりの乳児死亡)はHDIにマイナス。

Reason(理由)

Reason― UNDPデータで「どれが効くか」を回帰分析で絞ったから

なぜそう言えるのか。

理由はシンプルで、UNDP(United Nations Development Program)のデータを使い、経済と社会の指標を回帰分析(OLS)でガチっと検証しているからです。

この研究は「HDIに効いてそうな5つの変数」を用意しています。

GDP per capita(2005 PPP $)。

Expenditure on health(GDPに占める保健支出)。

Expenditure on education(GDPに占める教育支出)。

Infant death per 1000 live birth(乳児死亡)。

Mean years of schooling(平均就学年数)。

最初は186か国分のデータを集めたけれど、欠損がある国を除外して、最終的に94か国で分析しています。

「データが揃っている国だけで比べよう」という姿勢ですね。

そして面白いのが、全部入れたモデルだけを見るのではなく、all possible regression(全部の組み合わせを試す)やstepwise regression(段階的に変数を入れる)で、どの変数が説明力を上げるのかを確認している点です。

結果として、3変数モデルが「R²も高い。

RMSE(誤差)も小さい。

ここから先は変数を足しても改善が薄い」と判断されています。

さらに、回帰分析って「前提が崩れると怪しくなる」んですが、この論文はそこも一応チェックしています。

VIF(Variance Inflation Factor)が各変数5未満で、強い多重共線性はなさそう、としています。

残差プロットも「雲みたいで変な形がない」ので、等分散性や独立性は概ねOK、という判断です。

外れ値も、|R Student|>2やCook’s D>1で目立つものはなかった、という報告になっています。

つまり、統計の作法としては「最低限の点検はしている」。

だからこそ、「3つが効いている」というメッセージが読みやすく刺さるんです。

Example(具体例)

Example― もしあなたが国づくりの相談役なら、優先順位が見える

ここからは、数字が苦手でもイメージできるように、身近なたとえでいきます。

もしあなたが「ある国の政策相談役」だとします。

予算は限られていて、全部はできない。

さて、何から手を付けますか。

この論文は、ざっくり言うとこう背中を押してきます。

「GDPを伸ばしつつ、教育年数を増やして、乳児死亡率を下げるところに集中しよう」。

ここが、読んでいて気持ちいいポイントなんですよね。

抽象的な「福祉を充実させましょう」じゃない。

優先順位が3つに絞れている。

しかも方向が直感と合う。

たとえば、乳児死亡率。

これは「赤ちゃんが1歳までに亡くなる割合」です。

これが高い社会って、医療へのアクセス、栄養、衛生、母子保健、いろんな部分がしんどい可能性が高い。

だからHDIと強く逆相関になるのも納得です。

この論文の相関行列でも、HDIと乳児死亡は-0.9061と強いマイナス相関になっています。

一方で、平均就学年数。

学校に通える年数が伸びると、読み書き計算だけじゃなく、仕事の選択肢、健康知識、社会参加まで広がりますよね。

相関行列でもHDIと平均就学年数は0.9167と強いプラスです。

そしてGDP per capita。

お金があれば何でも解決、とは言わないけど、医療や教育、インフラに投資しやすい。

この論文も「経済成長だけでは十分ではない」とHDIの思想を踏まえつつ、ただ現実としてGDPが効いている点を示します。

回帰結果(Table 7)でも、GDP per capitaの係数はプラスで、t値は7.969で有意とされています。

乳児死亡は係数がマイナスで、t値は-12.254で有意。

平均就学年数は係数がプラスで、t値は10.203で有意。

この3つが、モデルの中心なんです。

ここで僕が「考え方が180°変わった」ポイントを白状します。

それは、ニュースで「教育費を何%にした」とか「保健支出が増えた」とか、つい“投入量”で評価しがちだったことです。

でもこの論文は、投入(health expenditure、education expenditure)も候補に入れつつ、最終的に「HDIを説明する主役」としては3つに絞ります。

つまり、見方としてはこうなります。

「予算を増やしたか」だけでなく、結果として「乳児死亡が下がったか」。

「平均就学年数が伸びたか」。

「人々が使える経済的な余裕が増えたか」。

成果に寄せて見る。

この視点を持つだけで、国際協力でも、地域政策でも、議論の解像度が一段上がるんですよね。

もちろん注意点もあります。

この研究はcross-sectional data(ある時点の横断データ)なので、「原因と結果」を断定できない、と限界でちゃんと言っています。

だから「教育年数を1年増やせば必ずHDIが上がる」と断言するのは危ない。

ただ、「少なくとも世界の国々を比べると、この3つがセットで動いている」と見える。

これが、一般読者にとっても“使える知識”になるところです。

Point(再主張)

Point― HDIを伸ばす議論は、3指標に戻すと迷子にならない

まとめます。

この論文の価値は、HDIという「大きすぎるテーマ」を、GDP per capita、乳児死亡率、平均就学年数という3つの変数に落として、回帰分析で説明したところにあります。

R-square 0.95という結果は、細部の議論はさておき、「まずこの3つを見よう」という強い道しるべになります。

そして論文自身も限界を認め、今後は縦断データで因果を見たい、汚職(corruption)や自然災害(natural disasters)、企業の社会的責任(CSR)など他の要因も検討したい、と未来につなげています。

数字が苦手な人ほど、逆にこの論文は読みやすい。

「人間開発って結局なに」。

「どこから手を付けるの」。

そのモヤモヤに、わりとストレートに答えてくれるからです。

結び

結び― 原文に当たると理解が一段深まります

きゅうさんの本棚:さらに研究に興味をお持ちの方へ。

この記事をお読みいただき、さらに『Determinants of Human Development Index (HDI): A Regression Analysis of Economic and Social Indicators』に興味をお持ちになった方は、下記の情報から原文を見てみてください。

きっと理解が一層深まることでしょう。

DOI: 10.9734/ajeba/2025/v25i11630

(この論文はCreative Commons Attribution License(CC BY 4.0)のOpen Accessとして配布可能、と本文中で明記されています。

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