【PREP研究評】台湾×セントルシア ICT教育で学校が変わる仕組み
読書の世界をもっと楽しみたい、でも何を読めばいいのかわからない――そんなあなたのために、「PREP研究評」をご提供します。
この企画では、私が読んで勉強になった研究の概要やポイントをわかりやすく紹介し、皆さんの読書、noteやブログの執筆に役立ててもらうことを目指しています。
具体的には、PREP手法(Point(主張)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(再主張))を使って、研究の魅力を分かりやすくお伝えします。
今回ご紹介するのは、財団法人國際合作發展基金會(International Cooperation and Development Fund/TaiwanICDF)の『Project for ICT in Education in St. Lucia』です。
私はこの取り組みに書いてあることを自分の仕事に当てはめて考えてみたら、発想が180°ひっくり返りました。
Point(主張)
Point― ICT教育は「機材を配る話」じゃなく、「全国に広げる型づくり」なんです
このプロジェクトがいちばん伝えているのは、ICT in Educationの肝は「タブレットを入れること」ではなく、うまく回る仕組みを先に作って“複製できるモデル”にすることだ、という点です。
セントルシアの“SMART Nation Initiative”という大きな構想の中で、台湾の技術ミッションが「smart education」に的を絞り、vanguard schools(先行校)で“特色あるカリキュラム”と“再現可能なモデル”を作って全国展開しようとしているのがポイントです。
Reason(理由)
Reason― まず先生が変わらないと、生徒の学びは変わらないからです
理由はシンプルで、学校のICT活用って、結局「先生が使えるかどうか」で決まっちゃうからです。
このプロジェクトでも最初の一歩は、teacher training(教員研修)に置かれています。
C-DELTA Course(Commonwealth Digital Education Leadership Training in Action)を実施したり、29回のworkshops(ワークショップ)を開いたりして、Sir Arthur Lewis Community College(SALCC)と一緒に“E-Learning Academy for Educator”や“Digital Education Leadership Training”を回しています。
さらにUniversity of West Indies(UWI)とも連携して、“Preparing for Remote Delivery”みたいに遠隔授業の準備に直結する研修もやっている。
ここが地味だけど強い。
加えて、education portal(教育ポータル)やonline learning platform(オンライン学習基盤)を整えて、教材が増え続ける土台も作っている。
つまり、機材より先に「教える人」「教材」「配る仕組み」を揃えているわけです。
Example(具体例)
Example― もしあなたが“ICT係”なら、このプロジェクトをそのまま真似したくなるはずです
ここからは想像しやすいように、もし〜だったらでいきます。
もしあなたが、地方の学校や教育委員会で「ICT活用、進めてね」と言われた担当者だったとします。
まず起きるのは、だいたいこの3つです。
①先生が忙しすぎて研修が続かない。
②教材が点で終わって、共有されない。
③一部の“できる先生”だけが頑張って燃え尽きる。
このプロジェクトは、その三重苦にちゃんと手を打っています。
たとえば「seeded teachers(種まき役の先生)」を10人育てた、と書かれているんですね。
これ、めちゃくちゃ実務的です。
全員を一気に変えるんじゃなくて、まず“核”を作る。
その核が、校内でミニ研修を回し、授業案を作り、困っている先生の横に立てるようになる。
次に効いてくるのが、34本のdigital lesson plans(デジタル授業案)を設計した点です。
授業って、理念だけじゃ回らない。
「明日の1時間、何をどう教えるの?」がないと止まる。
だからanimation、e-book、multi-media、さらにSALCCと組んだ統合型のlesson plansまで用意して、“先生が使える形”に落としている。
そして面白いのが、Twin School Programです。
セントルシアのGordon & Walcott Memorial Methodist Schoolと、台北のGuting Elementary Schoolをつないで、e-book制作も支援している。
ここ、ただの国際交流に見えて、実は教材開発のエンジンにもなります。
「相手校に見せる」ってなると、教材の質が上がる。
生徒も先生も“やる理由”が一段増える。
さらに管理職向けに“Analytics for Educational Administrators Workshop”を1回やっているのも効きます。
現場だけ頑張っても、校長や管理職が評価の見方を知らないと続かないからです。
最後に、smart classroom(スマート教室)を6校で立ち上げ、equipmentの使い方までsystem trainingsを入れている。
「入れました」で終わらず、「使えるところまで伴走した」と読み取れます。
これ、もし自分の地域でやるなら、こう置き換えられます。
先行校を数校選ぶ。
seeded teachersを育てる。
授業案(教材)を“共有できる場所”に集める。
管理職にも分析の見方を教える。
そして成果が出たら、promoting events(普及イベント)やpresentationで見える化して、次の学校が真似しやすい空気を作る。
実際このプロジェクトでも、14の普及イベントと3つの成果発表をやったと書かれています。
「良かったね」で終わらせず、広げにいってる。
Point(再主張)
Point― ICT教育の成功は“全国展開できる型”を作れるかで決まります
まとめると、この『Project for ICT in Education in St. Lucia』が教えてくれるのは、ICT in Educationは“導入”ではなく“設計”だということです。
SMART Nation Initiativeみたいな大きな旗があっても、現場では研修、教材、基盤、伴走がないと回らない。
だからこそ、vanguard schoolsでモデルを作り、seeded teachersを育て、digital lesson plansとe-learning platformで再現性を担保して、Twin School Programのような仕掛けで熱量を生む。
この流れが「SDGs 04 Quality Education」にちゃんと刺さる、王道の作り方なんですよね。
結び
きゅうさんの本棚:さらに研究に興味をお持ちの方へ
この記事をお読みいただき、さらに『Project for ICT in Education in St. Lucia』に興味をお持ちになった方は、情報源として示されているTaiwanICDFのプロジェクト紹介ページ(原文)を見てみてください。
箇条書きの進捗(研修、ワークショップ、教材、スマート教室、MOU、hand over ceremonyまで)が並んでいて、「何をやればICT教育が回り出すのか」の解像度が一段上がるはずです。
