【PREP研究評】漂流する世代:若者の幸福度が低い理由とその対策【WORLD ECONOMIC FORUM】
読書の世界をもっと楽しみたい、でも何を読めばいいのかわからない――そんなあなたのために、「PREP研究評」をご提供します。
この企画では、私が読んで勉強になった研究の概要やポイントをわかりやすく紹介し、皆さんの読書、noteやブログの執筆に役立ててもらうことを目指しています。
具体的には、PREP手法(Point(主張)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(再主張))を使って、研究の魅力を分かりやすくお伝えします。
今回ご紹介するのは、WORLD ECONOMIC FORUMの『漂流する世代:若者の幸福度が低い理由とその対策(A generation adrift: Why young people are less happy and what we can do about it)』です。
【Point】(主張)
若者の幸福度の低下は、社会全体の将来を左右する重大な問題である。
若い世代は本来、未来への希望や意欲にあふれ、人類の次なるステージを切り開く力を持っています。
しかし、この研究によると、2006年以降、北米・南米・ヨーロッパ・南アジア・中東など、世界各地で若者の幸福度が下がり続けているとのことです。
特に、これまで「若者の方が夢や活力を持っている」と思われていた地域でも、若者と高齢者の幸福度の逆転現象が起きているのは深刻と言えます。
もし若者が不安やストレスに押しつぶされる社会を放置すれば、近い将来の生産性や創造性が損なわれ、ひいては社会全体の活力を失う危険性があるのです。
【Reason】(理由)
経済・社会・技術・環境など、多面的なプレッシャーが若者を取り巻いている。
研究では、大きく3つの要因が幸福度低下の原因とされています。
まず一つ目は経済的要因。
学費や家賃、医療費が高騰し、若い世代が自立するハードルが上がっています。
さらに、ギグエコノミーの拡大による不安定な働き方や、学生ローンの返済負担などが将来設計を難しくしています。
二つ目は技術的・社会的要因。
SNSを通じて世界中とつながる一方で、他者との比較や誹謗中傷、フェイクニュースなどの情報ストレスにさらされやすくなっているのです。
「もっと頑張らないといけない」「みんなが輝いて見える」というプレッシャーが、心の余裕を奪ってしまいます。
三つ目は環境や政治の不透明感。
気候変動への不安、国際紛争や国内の政治的分断といった世界規模の問題を、若者はダイレクトに受け止めています。
「自分にはどうしようもできないのではないか」という無力感が、さらに幸福度を下げる一因になっているのです。
【Example】(具体例)
もし若い頃にこの研究を知っていたなら、将来に対する不安やSNS疲れをもっと客観的に捉えられたはずだ。
私は学生時代、SNSで友人や知人が「海外留学で活躍している」「就活で内定を複数獲得している」といった投稿を見るたび、「自分は大丈夫なのだろうか」と焦ってしまうことが多々ありました。
本来なら「すごいね、応援してるよ!」と素直に思えるはずなのに、いつのまにか劣等感ばかりが募り、常に他人と比べて落ち込んでいたのを覚えています。
そして大学を卒業したあとも、社会に出て自分がどのように生きていくのか、具体的な道筋がなかなか見えず、もやもやした気持ちを抱える日々でした。
もしあの頃に、このWORLD ECONOMIC FORUMの研究――「若者の幸福度低下は個人の努力不足だけではなく、社会構造や世界の変化と深く結びついている」という事実――を知っていたらどうだったでしょうか。
自分だけが弱いわけではなく、SNSや経済的なプレッシャー、環境問題など多方面からの影響があるのだと早い段階で理解していたら、「自分を責めすぎる必要はないんだ」と思えたかもしれません。
そうすれば、適度にSNSとの距離をとるなど、より前向きな対処法を学生のうちから取り入れられたのではないかと思うのです。
【Point(再主張)】
包括的なサポートと制度改革によって、若者の幸福度を上げることが社会の未来を明るく照らす鍵となる。
研究では、「メンタルヘルス支援」「リアルなつながりの創出」「SNS環境の改善」「実践的教育の推進」の4点が具体的に挙げられています。
まず、メンタルヘルスへの投資。
学校や地域コミュニティに専門のカウンセラーを配置したり、オンライン相談の場を充実させたりして、若者が気軽に助けを求められる仕組みを整えることが重要です。
次に、リアルな場でのつながりを育む施策。
国際交流プログラムや社会人とのメンタリング制度など、異なる世代や地域との関わりを増やすことで、「自分はコミュニティの一員である」という安心感を育むことができます。
また、SNSやインターネットの改善も欠かせません。
誹謗中傷対策の強化やコンテンツの適切な監視体制を整えるだけでなく、フェイクニュースの防止にも取り組む必要があります。
さらに、プラットフォーム側がユーザーの健康を最優先に考え、利用時間制限やポジティブなコミュニティづくりを支援するツールを導入するなど、幅広い改革が求められています。
最後に、実践的な教育改革。
金融リテラシーやオンラインリテラシー、環境問題など、若者が現代を生き抜くために必要なスキルを学校教育のなかで習得できるようにすることが大切だと指摘されています。
WORLD ECONOMIC FORUMは「Healthy Workforces」イニシアチブを通じて、企業や地域社会を巻き込んだ健康と幸福度の向上策を提唱しています。
若者の幸福度が下がり続けるという危機に対し、「社会全体で支える」という姿勢を明確に打ち出すことで、次世代への希望を紡ごうとしているのです。
きゅうさんの本棚:さらに研究に興味をお持ちの方へ
この記事をお読みいただき、さらに『漂流する世代:若者の幸福度が低い理由とその対策(The drifting generation: Why young people are less happy and what we can do about it)』に興味をお持ちになった方は、下記のリンクより原文を見てみてください。
