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「まだ温かい」って言った瞬間


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処置は終わった。

音は止まり、  
部屋は静かだった。

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家族が呼ばれる。

足音が近づく。

扉が開く。

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ベッドに近づく足が、止まる。

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誰も触れない。

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少しして、

家族のひとりが手を伸ばした。

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指先が触れる。

腕に。

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そして、

小さな声で言った。

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「……まだ温かい」

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その言葉を聞いた瞬間、

胸の奥が止まる。

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そうなんです。

温かいんです。

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心臓が止まっても、

すぐには冷たくならない。

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でも、

それは希望じゃない。

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現実だ。

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分かっている。

説明も受けている。

理解もしている。

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それでも、

触れた温もりは

「生きている気がする」

を連れてくる。

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誰も間違っていない。

家族も。

感情も。

その言葉も。

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私は隣に立つ。

何も否定しない。

何も訂正しない。

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ただ、

そこにいる。

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看護師にできるのは、

現実を伝えることじゃない。

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現実の中に、ひとりにしないこと。

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救急は、

命を救う場所だと思われている。

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でも本当は、

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残された人の時間が始まる場所だ。

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