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「現場は終わっても、終わらない」

終わったあとも、終わらなかった。

帰宅して靴を脱いだ。

いつもと同じはずの床が、少しだけ遠く感じた。

部屋は静かだった。

物音ひとつない。

それなのに、

耳の奥ではまだ、音が鳴っていた。

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ピッ  
ピッ  
ピッ

モニター音。

止まったはずの音。

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手を洗う。

石鹸の泡が流れていく。

でも、感触が残る。

押した感覚。

沈んだ感覚。

骨じゃなかった感覚。

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蛇口を閉める。

静かになる。

それでも消えない。

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目を閉じると、

背中が浮かぶ。

衣類の濡れ。

赤。

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もし。

もう少し早く。

気づけていたら。

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分かっている。

結果は同じだったかもしれない。

それでも。

考えてしまう。

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時計を見る。

もう夜中だった。

何時間経ったのか分からない。

時間の感覚だけが薄い。

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布団に入る。

暗い天井を見上げる。

眠気は来ない。

代わりに来るのは、

さっきの現場。

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目を閉じる。

すぐに開く。

また閉じる。

開く。

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あの日から、

一つだけ分かったことがある。

現場は終わっても、終わらない。

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