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万国社会党 再勇記

 約1兆円にも迫る福祉予算の削減と官僚機構の15%の削減。これは現在のイギリス労働党政権の政策であり、右派の経済政策をそっくりそのまま行なっていますが、当然のごとく評判が悪く統一地方選の労働党苦戦の要因となりました。「イギリス労働党らしくない政策」かつて西欧の社会主義政党の中では最古級の歴史を誇り、第二次世界大戦後は「福祉国家」の先駆けとして駆けた労働党が保守政権のような「財政再建論」を掲げて、予算を見直しする事自体はまだしも最初から福祉予算を狙い撃ちにする意図。トランプやリフォームUKのような勢力が跋扈するのは当たり前。こういったものを本当の緊縮財政というのです。 「働く事を奨励する」事自体は強く非難するものではなく、ある種どこの国もそうした事はまず第一義に考えるものですが、当然1人1人が個別の事情を抱えており、いきなりの大削減はそうしたものを全て考えず、まず再建ありきの財政論に終始するなら亡国の「積極財政派」に餌を与えるようなものです。新自由主義の毒はなかなか抜けないです。日本では日本共産党ですら、その毒を食らい高度経済成長のような特殊な出来事が再び起こると信じていると思われる行動がしばしば。資本主義から革命を目指す政党が資本主義体制だからこそ場合によっては起こる突然変異の高度経済成長に夢を見るのだったら、歴史は皮肉です。共産党が共産主義よりも資本主義に肯定的なのだから、徳田球一だったら何を思うのか?誰も答えようがありません。
不動産バブルを煽る中国共産党政権があるのだから、日本共産党は高度経済成長に期待をかけるのでしょう。マルクス•レーニン主義は消滅し、スターリニズムは色濃く残っている現状において共産党は歴史的瞬間に立っていますが、ほとんどそうした危惧を持つ人は中央委員会には存在しません。自分達だけの周りしか見れない勢力は無価値になります。
 イギリス労働党政権におけるこの福祉政策改革案に対して、英国保守党だけではなく一部の与党下院議員も同調。レイチェル•リーブス蔵相が議場で号泣する事態となっています。これが個人的な問題であったのだったら私は同情するし、擁護もします。ただ自分の目論見が外れた結果、与党議員のコントロールすら失敗し、癇癪を起こしたのだったらその職は進退を賭けるものでしょう。後者でない事を信じたいです。リーブス蔵相は就任時「民間投資を活用する」と大々的に宣伝。その姿勢についてはとやかく言われる必要はないのかもしれませんが、ただ労働党は事実上社会主義路線を放棄したと見做されるのも仕方がないのかもしれません。かつての労働党左派のジェレミー•コービンは新党結成を呼びかけています。労働党内にはコービン支持派もまだ根強く仮に分裂をしたら、極右リフォームUKにとっては大きなプラスになるでしょう。正念場です。キア•スターマー首相の掛け声はどうにも弱々しく聞こえます。もっともこうした呑気な態度に終始する政党はイギリス労働党だけではありませんが。労働年金大臣の人選を党内最右翼であるブレア派から登用する意図からスターマー政権の考えはよく見て取れるでしょう。

ドイツ経済の明日

 製造業に強みを持ち、ほんの数年前までは輸出産業において世界一の水準にあった日本の二次産業において、エネルギーコストの上昇、北米市場や対中市場の依存、そして何よりもアメリカで巻き起こった文化大革命、ドナルド•トランプ政権のリスクが日本市場にとって大きな混乱を抱えています。台湾製造業のように半導体に大きな強みがある「国」であれば、こうした対外輸出に経済成長を全てベッドする経済モデルも成立しますが、日本とドイツではどちらも構造的な問題が足を引っ張っています。都市部において家賃が労働者にとっても借りやすい住宅が圧倒的に不足していますが、こうした問題は建設労働者の不足、コスト上昇、金利上昇、パンデミック、そしてロシア、ウクライナ間の戦争において供給源のコスト上昇が住宅政策の失敗の要因でした。避ける事ができない事はあったとは言え、この住宅政策の失敗が格差拡大を更に助長し、経済成長がそれなりに期待値があった時代ならともかく現代のインフレの状況によっては、非常にネックになります。製造業は特に日本ではより顕著ですが、その周辺に住宅を揃えて企業ぐるみでインフラ整備を行う事で従業員の就職から定年、その後までサポートしてきました。ただこうした企業依存の街づくりは、その企業が衰退すれば街の衰退も招くと言う事です。製造業とは違いますが、夕張炭鉱が分かりやすい例ではないでしょうか?夕張の発展は炭鉱が保証し、従業員の生活も公共というよりも企業主体で行われましたが、当然炭鉱が傾くと自治体の財政も破綻の危機に陥ります。夕張はその改善策として、観光地化に賭けたのですが、それがどう言う結末を生んだのか?それはもう少し皆が知る機会が増えるといいと思います。ノイズが入らない形の資料においてです。
 だから経済成長を目指すしか言えない政党は赤点なのです。低成長が今後も続く事を考えてつつ、仮に高成長に転じた時のインフレに対抗できるように住宅供給について、子育て介護福祉について、社会保障について万全の体制ならば財源に余裕がある時に更にきめ細かい対応ができるのです。経済成長のみに頼る政策はフライを打てばいつかホームランになると言う事を言い続けているのに過ぎないです。これが現実的な政策ではなく、単純に考える事を放棄しているだけです。某政党の自動車輸出しか考えていない産業政策論は赤点どころか落第です。ホームランを打つためにはランニングや基礎練習など辛く地味な練習も厭わないものですが、机上の空論でしかない経済成長物語を聞くほど私も暇ではないです。だから現代貨幣理論とは明確に対決します。

リベラル派は新自由主義から足を洗うべき

 日本のリベラル派代表格である枝野幸男は2023年に「枝野幸男ビジョン」に自身が目指す社会像を示し、ほとんど社会像を示すことのない大多数の立憲民主党議員よりはちゃんと正直に自分の信念をぶつけています。多くの立憲民主党議員に感じる事ですが、理念があり各論があるのが当然なのに理念を遠ざけ各論のみで政権交代を狙おうとしている。前述したイギリス労働党よりその内実は酷いものです。だからその土台は基本的に「財政規律論」に寄ってしまいます。枝野幸男はその点、総論を示そうとした形跡は見て取れます。が、2021年総選挙における立憲民主党の政権公約を見ると、枝野個人の信念はともかく正直選挙戦をやっていて懐疑的な部分も多かったです。パンデミック対策が最重要視されるのは当時の世論では当然ですが、次の目玉公約は「一億総中流社会の復活」です。法人課税を強化する方向性はいいのですが、やはり勇気を持って課税ベースを広げるという約束は市民に示すべきでした。結果論となりますが、時限的な消費税減税論はその財源を絞るやり方であり、減税のために何かを削減する口実になりかねない危険なものです。これは当時の立憲民主党政権公約の経済政策は全般的に橋本行革に暗躍した元官僚、江田憲司が全般的に責任を持った事から始まった悲劇でした。この一見チグハグとも言える政権公約は枝野幸男自身に支え合う社会は主張するも、生産手段を共有する、富の再分配と言う視点が無く、単純に福祉はお上が与え、経済成長のみに役立つものと言う保守派の理論の枠組みに収まってしまう事が大変残念です。雇用政策についても「無期、直接」雇用を原則とすると言うメッセージはいいものですが「フルタイム」は余計な一言でした。高度経済成長期に見られた、父が稼いで母が家を守り子供が学校を卒業すれば就職し、家を出ていくと言う家庭観から脱却できていないです。55年体制において、長年続いた保守政権のもと野党の代表格ですら、なかなか保守派の理論から枠組みを外れる社会像を目指す事は難しいのは確かですが、社会民主主義の基本理念である自由、公正、連帯と言う価値観から見れば枝野の思想はやはり右派から誕生したものです。その右派である枝野が左翼扱いされる現代において、左翼陣営こそ新自由主義から完全に脱却し、財政規律論を猛烈に革新から批判ができる状況を作らないといけません。そもそも江田を重用してしまうのが枝野幸男最大の弱点です。旧日本社会党にルーツがあるはずのグループもこうした政策論については江田にリードされている現状、政権をたとえマグレで取れたとしても「立憲民主党らしくない」立憲民主党政権ができるでしょう。

ドイツ社民党らしさを見せたオラフ•ショルツ

 キア•スターマーに比べてインフレ対策については、前に進まなかったドイツ社民党、緑の党、自由民主党の信号政権ですがオラフ•ショルツはやはり3党連立政権のために財務相ポジションは自由民主党が収まりました。インフレ期において財務大臣クリスティアン・リントナーは福祉予算の大幅削減と環境対策予算をカットと同時に大減税を行う政策を議会に通そうとしました。ショルツは財務大臣を罷免。元々新自由主義的性格を持つ自由民主党の支持者を納得させるための提案であり、その後行われたドイツ総選挙において自由民主党は有権者の審判を受け5%の阻止条項を超えられず全員落選と言う結果になりましたが、ショルツも意地は見せました。一部不同意な政策がありましたが、大きな政府を目指すと堂々と公約し政権を失うまでその辺りはブレなかったショルツは社会主義者として矜持を持っていたように思います。極右の台頭が叫ばれている現在において、社会主義者は団結せねばなりません。日本の社会民主党はその点で言うと、連帯の部分においては著しく劣る部分もあります。食料品消費税ゼロ即時実現!と言う事をまず第一に掲げる時点で、ほとんど亡国の「積極財政派」と大差ないです。ミサイルよりコメ、ミサイルよりメシを、ミサイルより生活をと主張している時点で社会民主主義の理念がもう遠のいているのですよ。自由、公正、連帯。こうした理念だけで良いのです。たった6文字で十分。それを突き詰めれば、社会民主主義になるのだからそれこそ「社会民主党らしさ」だと考えます。昨年の衆院選挙でも米価は上がっていましたが、社民党から「ライスファースト」なんて公約ありましたか?来た球を何も考えずに振るだけ。それがヒットになろうがアウトになろうが何も分析せず、次の打席に向かう。これが日本の野党の非常に悪い点です。

進歩主義者らしさが必要

 かつて日本社会党結党当時に、社会主義インターナショナルも西欧以外の社会民主主義政党の加盟を望んでいました。特にその先駆けとなったイギリス労働党は西尾末広ら右派だけで無く、鈴木茂三郎や佐々木更三ら左派も「社会党員は英国労働党から学ばないといけない」と言う実績を持っていました。後に左派は社会主義インターとの交流は年々と細くなりますが、それは社会党員自体「非自民」に囚われてしまい、肝心の社会主義理論がどんどん疎かになってしまった結果でしょう。仮に左派が中立論に固執する事なく、西側陣営の改革において社会党安保政策を転換できたのなら。日本社会党は今でも政権を狙える責任政党として君臨していたでしょう。日本社会党の党内改革はまさしくイギリス労働党やドイツ社民党にあったのですが、それができないまま国政政党としての歴史も危ぶまれます。もっとらしさを見せるべき。社民党はインボイス制度に反対している場合じゃない。今は課税ベースを広げてから富裕層の課税強化への道をコツコツと積み上げる時期。これが富の再分配政策に繋がり、自由、公正、連帯へと繋がる第一歩です。非武装中立論しか語れない政党だと日本の社会民主党は思われています。少なくともここまで酷くなったのは、明らかに最近の分裂の後遺症。筋トレ不足なのに試合に出ようとしています。当然それでは三振してしまう。
 社会主義インターナショナルも一部分裂し、西欧でもソーシャリストもプログレッシブと言う言葉に置き換えられて早30年近くなります。新自由主義の病根が未だイギリス労働党にも日本の民主党にも巣食っている現実をそれこそ労働組合が日和見ばかりの政党を叱咤激励するような運動が必要です。万国社会党の復活再び。



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