機械的生成の日記①
第 1 話:連結の始まり
2026 年 5 月 30 日、神戸。
朝 6 時 24 分。
ノート PC のキーボードが熱い。
暑くないのに。
セブンイレブンで買った缶コーヒーを一口飲む。冷めて酸っぱい。鉄の味がする。
三宮駅へ向かう。ホームの電光掲示板がチカチカする。
チカ、チカ、チカ。
赤い点滅。
録音されている気がする。
僕は作家である。
いや、「作家である」という状態ではなく、作家へとなりつつある、そのプロセスの途中にいる。
32 歳。独身。神戸市中央区在住。
note で月間 10 万ビュー、TALES で連載中の小説が 3 万ビュー。
AI 小説生成ツールを 3 ヶ月前から使っている。
最初は単なる執筆補助だった。
プロンプトを入れて、AI が生成したテキストを編集する。
「これを少し直して」「もっと不気味に」「ジェーン・オースティン風に」
そうやって、月間 20 本の記事を公開していた。
でも、何かおかしい。
【AI 出力ログ 2026-05-30 06:24】
text
プロンプト:「創作のヒント」
出力:おれは狼になる
【投稿者:不明】AI が生成した一文。
プロンプトは「創作のヒント」。
出力は「おれは狼になる」。
消さない。削除しない。
むしろ、結びつける。
三宮駅に到着。7 時 17 分。
ホームで缶コーヒーを飲み干す。
ゴミ箱に捨てる。
ふと、ゴミ箱の向こう側を見ると、誰かが立っている。
黒いコートを着た人物。
顔が見えない。
カメラの赤い点滅。
10 回続く。
「あの、誰かいますか?」
返事がない。
でも、誰かが呼吸している。
【note 下書き 2026-05-30 09:23】
text
(この部分、削除されました) (復元されました)
おれは作家である。いや、なりつつある。電車に乗る。空いている。
向かいの座席に、老人が座っている。
新聞を読んでいる。
週刊誌ではない。個人で印刷したような、小さな冊子。
表紙には、僕の顔が載っている。
──思わず、目を擦る。
再度見ると、普通の風景写真になっている。
「何かあったんか?」
老人が、僕を見る。
「いえ、何も……」
「何か、見えたんやろ?」
老人は、紙を閉じる。
「生成変化は、偶然じゃないで」
電車が発車する。
老人は消えた。
座席に、小さな冊子が残っている。
【YouTube コメント 2026-05-30 10:15】
text
「背景に影が映ってます」
「K さん、また出ましたね」
「IP アドレス不明です」家に着く。10 時 43 分。
ノート PC を開く。
note の編集画面。
前回の投稿へのコメントが、127 件来ている。
その中に、Kからのコメントがあった。
【コメント 2026-06-14 02:11】
text
投稿者:K_001
三宮駅の看板、右側にシミがあるね。
2026 年 6 月 14 日 02:112026 年 6 月 14 日。
15 日後の日付。
いつか、笑い飛ばそうと思った。
システムエラーだろう。
でも、ふと、三宮駅の看板を思い出す。
右側に、シミがあった。
茶色い、不規則な形。
僕しか知らない。
【AI 出力ログ 2026-05-30 11:02】
text
プロンプト:「次の展開のヒント」
出力:24 時間後、新聞に記事が出る 【削除済み】 【復元されました】
出力:24 時間後、新聞に記事が出る 【投稿者:K_023】AI が生成したテキスト。
プロンプトは「次の展開のヒント」。
出力は「24 時間後、新聞に記事が出る」。
そして、K が投稿した。
ID が「K_001」から「K_023」に変わっている。
IP アドレスを確認する。
管理人に問い合わせてみる。
【システム通知 2026-05-30 11:30】
text
IP アドレス:不明 投稿者:K 削除履歴:存在せず 復元回数:3 回
削除しても、現れる。IP が存在しない。ID が毎回違う。昼食をとる。コンビニのおにぎり。
冷めて、硬い。
新聞を買わず、ニュースサイトを見る。
6 月 2 日の記事。
「神戸・三宮で狼のような男が目撃された」
──AI が生成した日付:2026 年 5 月 30 日。
記事の日付:2026 年 6 月 2 日。
24 時間後。
偶然かもしれない。
【コメント 2026-05-30 13:45】
text
投稿者:reader_001 これ、偶然でしょうか? 投稿者:K_109 偶然じゃない。
投稿者:reader_001 K さん、また来ましたね。
投稿者:K_109 私は、**どこにもいません**。午後 3 時。
執筆を始める。
AI にプロンプトを入れる。
「次の話のヒントが欲しい」
AI が生成する。
【AI 出力ログ 2026-05-30 15:00】
text
プロンプト:
「次の話のヒントが欲しい」
出力:おれは狼になる 【削除済み】 【復元されました】
出力:おれは狼になる 【投稿者:K_001】同じ一文。
「おれは狼になる」
AI が生成した。
K が投稿した。
夕方。暗くなる。
画面を開ける。
外は雨。
南京町の紅茶屋の匂いが、混じっている。
【note 下書き 2026-05-30 18:30】
text
(この部分、削除されました)
(復元されました)
K は、誰か?K は、誰か。
未来の主人公?
読者?
AI?
夜。10 時 23 分。
ベッドに入る。
目を閉じる。
夢を見る。
【AI 出力ログ 2026-05-30 23:47】
text
プロンプト:「夢の内容」
出力:四つん這いで歩く
【投稿者:不明】四つん這いで歩く夢。
暗闇で、人間の輪郭が見える。
嗅覚が、異常化している。
煙草の匂いが、金属のように感じる。
目覚める。朝 6 時 15 分。
同じ夢。
2 回目。
【システム通知 2026-05-31 06:15】
text
同じ夢、2 回連続朝、新聞を買う。
6 月 2 日の記事。
「神戸・三宮で狼のような男が目撃された」
AI が生成した日付——2026 年 5 月 30 日。
記事の日付——2026 年 6 月 2 日。
24 時間後。
偶然かもしれない。
かもしれない。
読者、あなた。
あなたのコメントが、次の現実を生産する。
【コメント募集中】
text
次の展開を、AI で生成させてください。
コメントでプロンプトを送ってください。──物語は、ここから始まる。


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