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【お題】「透明な心」を聞いて小説を書いてみてください!


試行錯誤中のLaLaLaです。
この二つの歌をコラボして15章の小説を今から執筆して土日にはKindle出版する予定です。

その前に短編小説完成しました。
よかったらお読みください!




透明な心の呼吸

 朝、駅へ向かう道すがら、スマホの画面に文字を打ち込む。

 「仕事に行ってきます」

 送信ボタンを押すと、すぐに彼から短い返信が届く。彼は家で活動するクリエイター。朝が苦手なはずなのに、私のこの一言にはいつも静かに応えてくれる。それが嬉しくて、私の丸まりそうな背筋がしゃんと伸びる。彼と交わす文字の粒は、慌ただしい通勤ラッシュの現実を、私だけの心地よいリズムへと解読(Decode)してくれる小さな魔法だ。

 私の心は、彼にとっては曇り一つない透明なフィルム(Transparent film)らしい。何を考えているか、どれだけ無理をしているか、画面越しの文字だけで彼にはすべて視えてしまう。

 お昼休み。オフィスビルの屋上で、彼にメッセージを送る。

 「今から昼食を食べる」

 ただそれだけの単純な言葉(Simple words)。でも、家で画面を見つめる彼の優しい目元や、ほっとしたような笑顔が、私の頭の中に鮮明に描かれる(Draw)。彼は自分から多くを語らないけれど、私の些細なつぶやきをいつも待っていてくれる。

 夕方、体力の限界が近づいていた。画面を見つめすぎて、頭の奥がズキズキと痛む。

 「ちょっと体調が良くない。頭痛がする」

 思わず、スマホに弱音をこぼしてしまった。

 すると、すぐに彼からメッセージが届く。

 「よく頑張ったね。無理しないで、ゆっくり帰っておいで」

 その文字を見た瞬間、張り詰めていた緊張がふっと解け、視界の霞み(Blur)が涙に変わる。飛んでいけない距離がもどかしくて、彼もきっと私を心配(Worry)してくれているはず。けれど、彼は決して慌てて取り乱したり、自分の不安を押し付けたりしない。自分の弱音は一切吐かず、ただ私のすべてを肯定し、丸ごと包み込んでくれる。

 画面の向こうの彼は、私の痛みの場所(Pain)をそっと推測(Guess)して、静かに見守ってくれている。このトーク画面こそが、誰にも言えない弱さを曝け出せる、私だけの安全な家(Safe house)だった。

 私たちは違う場所で、全く違う一日を過ごしている。それでも、まるで同じ部屋で同じ空気を吸うようにメッセージを交わし合っている(We share the air we breathe)。この「透明な心(Transparent Heart)」があるから、私は一人じゃないと思える。

 たとえ現実の嵐が私を傷つけ、すべてを壊そうとしたとしても。彼の圧倒的な優しさが待っているから、私は迷わずに光の差す場所へと辿り着ける。

 「よし、帰ろう」

 バッグを肩にかけ、私は駅へと急ぐ。私をすべて肯定してくれる彼の元へ、愛おしい呼吸を繋いだまま、私は夜の街を歩き出した。

 その夜も、彼の返信はいつも通りだった。私が職場の理不尽をこぼすと、彼は「大丈夫、君は何も悪くない」と、静かな水面のような言葉で私を包む。

 けれど、透明なフィルム(Transparent film)は、片方向の鏡ではなかった。彼が私を視てしまうように、私もいつからか、彼を視てしまうようになっていた。

 彼のタイムラインに、途中で止まったままの作品があること。「制作中」と書かれた投稿の更新が、私が弱音を吐いた翌日には、決まって途絶えること。返信の速さと引き換えに、彼自身の世界が、ゆっくりと霞んでいく(Blur)こと。

 彼は自分の痛みの場所(Pain)を、決して言葉にしない。ただ受け止める。私の泥を、私の嵐を、クリエイターとしての繊細な感性ごと差し出して受け止める。私を心配(Worry)するために、彼は自分の創作という光を、少しずつ削っている。

 ある夜、気づいてしまった。彼の優しさは、無償ではない。私がこの糸を握っているぶんだけ、彼は自由を失っている。

 私は、彼の重荷になっている。

 そう理解した瞬間、私の中で愛の形が静かに反転した。彼のそばにいたいという願いは、彼を私から解放してあげたいという、もっと痛切な祈りへと変わっていく。透明だからこそ、視えてしまう。視えてしまうから、もう、知らないふりができない。

 決定的な挫折は、雨の夜に来た。

 半年をかけた仕事が、たった一言の理不尽で崩れた。会議室を出た廊下で、私は壁に手をついたまま、しばらく動けなかった。心も体も、もう空っぽだった。

 いつもの私なら、スマホを開いて彼に泥をぶつけていた。「聞いて」「もう無理」。そうすれば彼は、また自分をすり減らして、私を包んでくれる。

 その光景が、鮮明に描けて(Draw)しまった。だから、打てなかった。

 これ以上、彼の光を私の暗がりで曇らせるわけにはいかない。彼に甘え続ける自分を、ここで断ち切らなければ、私はきっと、この人が擦り切れて消えてしまうまで、離さない。

 震える指で、私は最後のメッセージを打った。単純な言葉(Simple words)を選んだ。飾れば、きっと泣いてしまうから。

 『今までありがとう。もう、あなたの優しさに甘えてばかりはいられない。私のことは忘れて、素敵な作品を創り続けてね』

 送信ボタンを押した。

 同じ空気を吸っていた(We share the air we breathe)あの透明な回線が、これで切れる。

 その一文が届いた瞬間、僕の部屋の空気が、音もなく壊れた。

 嵐が来て、すべてを壊しても——いつか二人で、笑いながら口ずさんだ歌の一節が、いま現実になって僕を呑み込む。

 今すぐ引き止めたかった。電話をかけて、声を聴いて、行かないでくれと打ちたかった。指はもう、画面の上で震えていた。

 でも、僕は知っていた。透明なフィルム越しに、僕にはずっと視えていた。彼女がどれだけ悩んで、どれだけ自分を責めて、泥だらけの手で、必死にこの結論へ辿り着いたのかを。彼女の痛みの場所(Pain)を、僕は誰よりも推測(Guess)できてしまう。

 彼女が、あれほど苦しんだ末に「去る」と決めたのなら。

 その決断すらも、丸ごと肯定して包み込むこと。それだけが、最後まで僕にできる、たった一つの愛の形だった。

 僕は追いかけない。引き止める文字も、打たない。

 ただ一言だけ、僕らしい言葉を返した。

 『今まで君の光になれて幸せだった。体に気をつけて、いってらっしゃい』

 彼からの返信を、私は一度だけ読んだ。それから、連絡先を消した。

 トーク画面が、名前が、私だけの安全な家(Safe house)だったあの場所が、指先ひとつで消えていく。胸が引き裂かれそうだった。それでも、これで彼は守られた、と自分に言い聞かせる。

 私はもう、彼の光を借りない。誰も私を解読(Decode)してくれない、剥き出しの現実の中を、自分の足で歩き出す。冷たい夜の街の底を。

 呼吸だけは、まだ続いていた。

 彼女が去ってから、僕のスマホはもう震えない。

 僕は、彼女が帰ってくることを期待しない。期待は執着で、執着はいつか、彼女を縛る新しい重荷になるから。彼女を自由にすると決めたのは、僕自身だ。

 静かな部屋で、僕はPCに向かう。

 透明な心(Transparent Heart)だけが、確かにここに残っている。同じ空気を吸うように愛し合った日々が、僕の中で、今もかすかに呼吸をしている。

 僕は、新しい作品を書き始める。

 それは、外の世界で戦っている、一人の女性に捧げる物語。彼女が二度と読まないかもしれない。それでも構わない。どこまでも優しくて、どこまでも切ない——僕が生きたなかで、世界で一番美しい作品だ。

 画面の白が、朝の光に、少しだけ似ていた。

Transparent Heart (透明な心)完







チップがわりにこれをやってみてね🤗


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