沈黙の中に、言葉より深いものが隠れている。
以前、ある人から相談を受けたことがあります。
仕事のこと。家族のこと。将来への不安。一時間ほど話を聞いていました。
途中で、その人は急に話すのをやめました。うつむいたまま、何も言いません。
「何か話さなければ」と焦った
私は少し焦りました。何か励ましたほうがいいだろうか。質問をしたほうがいいだろうか。沈黙が続くほど、「何か話さなければ。」そんな気持ちになっていきました。
でも、その日は違いました。無理に言葉を探すのをやめて、ただ一緒に座っていました。時計の針の音だけが聞こえるような、静かな時間でした。
「話せてよかったです」
しばらくして、その人がぽつりと言いました。
「話せてよかったです。」
私は少し驚きました。ほとんど何も言っていなかったからです。
安心して黙っていられる時間
その時に気づいたんです。
私は、言葉で支えたのではなく、安心して黙っていられる時間を一緒に過ごしただけだったんだと。
沈黙は、失敗だと思っていた
若い頃は、沈黙は失敗だと思っていました。会話が止まったら、何か話題を探す。気まずくならないように、場をつなぐ。それが思いやりだと思っていたんです。
でも今は少し違います。本当に安心できる相手とは、話が続く人ではなく、黙っていても苦しくない人なのかもしれません。
言葉では届かない気持ちもある
もちろん、言葉が必要な場面もあります。励ましが力になることもあります。
でも、言葉では届かない気持ちもある。そんな時は、無理に埋めようとしない沈黙のほうが、相手の心に寄り添えることがあります。
「急いで埋めていないだろうか」と考える
だから最近は、誰かの話を聞く時ほど、「何を言おうか。」ではなく、「この人が安心して話せる間を、急いで埋めていないだろうか。」と考えるようになりました。
自分の気持ちと向き合っている時間
私は、沈黙は、言葉がない時間ではなく、相手が自分の気持ちと向き合っている時間なのだと思っています。
そして時々、沈黙の中には、どんな励ましの言葉よりも深いものが、隠れている。そんなことを、人との出会いの中で学びました。
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