分からないことを、分からないと言えなかった頃の話。
若い頃、「分からない」と言えなかった時期があります。入社したばかりの頃は、社内のルールも専門用語も資料の見方も、とにかく知らないことだらけでした。でも先輩に聞くのが怖かったんです。「そんなことも知らないの?」と思われるのが嫌で、分かったふりをしていました。
分かったふりを、繰り返していた
先輩から説明を受けると「はい、分かりました。」と答えるのですが、本当は半分も分かっていません。一人になってから資料を何度も読み返したり、インターネットで調べたりするのですが、それでも分からないことがある。それでも翌日になると、また分かった顔をしてしまう。そんなことを繰り返していました。
「最初に聞いてくれればよかったのに」
ある日、先輩から「この資料を確認して、今日中にまとめておいて。」と仕事を任されました。「分かりました。」と答えたものの、実は何を確認すればいいのか、よく分かっていなかったんです。それでも聞けなくて、結局見当違いのところを一生懸命確認して、時間だけを使ってしまいました。
夕方になって先輩に資料を見せると、「これ、何を確認したの?」と聞かれました。私は何も答えられませんでした。すると先輩は少し黙ってから、「分からないなら、最初に聞いてくれればよかったのに。」と言ったんです。怒られたわけではないのに、その言葉が一番こたえました。
聞けないことの方が、迷惑をかける
私はそれまで、分からないことを聞くのは、自分が仕事のできない人間だと認めることだと思っていました。でも実際は逆で、分からないまま進めるほうが、周りに迷惑をかけてしまうことがある。それを身をもって知った出来事でした。
聞き方を、変えてみた
それからは、分からないことがあればできるだけ早く聞くようにしました。ただ「分かりません」だけで終わらせず、「ここまでは理解していますが、この部分が分かりません」と伝える。自分なりに調べたうえで、「私はこう考えたのですが、合っていますか」と聞くようにしたんです。
すると不思議なことに、先輩たちは思っていたほど呆れませんでした。むしろ「そこまで考えたなら、ここだけ教えるよ」と教えてくれることが多かった。質問することは相手の時間を奪うことではなく、相手の経験を借りることでもあるんだと、そこで初めて気づきました。
調べて、考えて、それでも分からなければ聞く
もちろん、何でもすぐに聞けばいいわけではありません。自分で調べて、考えて、それでも分からなければ聞く。その順番は大切だと思います。でも「こんなことも知らないと思われたら恥ずかしい」という理由だけで聞けないのだとしたら、それは少しもったいない気がします。
あの頃の自分に、伝えたいこと
あの頃の自分に会えるなら、「分からないことは恥ずかしいことじゃないよ」と伝えたいです。分からないと言える人は、仕事をきちんと前に進めようとしている。教えてもらったことを、次は自分の力に変えようとしている。それも立派な仕事の一つなんだと思います。
「分からない」と言えなかった頃より、言えるようになってからのほうが、ずっと早く仕事を覚えられた気がしています。
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