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一年使って振り返るHasselblad 907X & CFV100Cはどんなカメラか

2026/07/16追記
この記事で不満の一つに挙げていた、アプリ「Phocus Mobile」がようやくAndroidに対応した。とてもありがたい。

ハッセルブラッドの一億画素中判デジタルカメラとして話題になったこのカメラも発売から二年が経過し、僕が購入してから一年が経ちました。

気になってから購入まで悩むこと5年
「このカメラを買おう」最初にそう思ったのは随分と前のことで、ひとつ前にCFVⅡ50Cが登場したときになります。

以前から中判デジタルバックには興味がありました。しかし、Phase Oneなどの大型センサー機に対する憧れはあったものの、真剣に購入しようとまで思ったことはありませんでした。欲しいと言う気持ちの強さに対して、数百万もする価格は、ぜんぜん釣り合っていなかったからです。

しかし、その天秤が徐々に傾き始めたのは2020年。CFV Ⅱ 50Cの記事を読んだときでした。その独特の姿をみて頭に浮かんだのはフィルム時代のカメラSWCです。「ハッセルが遂にSWCをデジタル化した!!」最初はそう思ったのです。(903SWC、905SWCに続く907X、このXが意味ありげ)

現代に蘇ったSWCといった出で立ちの907X

それから詳細を調べ始めると、ハッセルブラッド最新モデルの中判ミラーレスとしても使えるコンセプトが気に入ってしまい、フィルムカメラに装着するデジタルバックというだけでなく、最新の中判デジタル機をハッセルブラッドらしい姿で実現させたこのカメラを手にしてみたいと言う気持ちは強くなりました。

その価格はデジタルバックとしては、当時のPhase Oneなどとは比べ物にならないほど安価(と言ってもPhaseが高すぎなだけなのですが)な設定でした。

僕はこの頃、既に4200万画素のフルサイズ機であるRX1rm2を使っていたこともあり、レンズ込みで100万円を超える5000万画素機のカメラをすぐさま購入する決心には至らずにいました。しかし、もうすぐRX1rm2が購入から10年になることや、カメラの価格がどんどん高くなっていることを理由に2025年に購入を決意。一億画素機の現行CFV100Cを遂に手にしました。

意外に共通点がある2機種
この2台はどちらもレンズシャッターを採用しています。
RX1も初代はコントラストAFのみの仕様でAFに不満がありました。rm2で位相差AFとなって、ある意味で完成形と成りました。CFV100Cも同様で、このモデルから位相差AFが搭載されています。両機とも高画素機でありながら手ブレ補正はありません。液晶画面には90度までのチルト機構を採用しています。
偶然だと思いますがレンズキャップまでそっくりな形の仕様で、金属製の豪華なものが付いています

このカメラの位置づけ
実際のところ、このカメラの形はSWCによく似ています。デジタルバック部はバッテリーも全て本体に内包されて、まるでフィルムマガジンのように小さくなっています。また、ミラーレス構造があたりまえとなった現代では、SWCとは違いレンズ交換が可能なボディーが実現されています。

もとより、ファインダーが存在しないこのカメラは、コンパクトな単焦点のレンズを付けて、SWC的な撮影をするのに向いていると思います。

レンズ交換が可能でAFも登載されていますので、このカメラ1台で全ての撮影をこなすことも可能ではあります。しかし、ある程度ワイドなレンズを使用して、高画素機の利点を活かし、必要な画角を切り出して使う。そのように、守備範囲をある程度限定した使い方をするのが、僕的には無理のない使い方だと考えています。

ズームレンズの使用や素早い取り回しの撮影が必要な場合には、35mmフルサイズ機やX2Dシリーズなど他のカメラと並用して使い分けるのが、前提になると思います。

僕はこのカメラを、SWC的ではあるものの、デジタル化されたことで守備範囲が大きく拡張され、マルチロール型SWCとでも呼べるようになった、SWCシリーズの完成形だと考えています。
だからこそハッセルブラッドも型番をSWCシリーズから引き継いで、Xを付けたのではないでしょうか。

907X本体の厚さはSWCより薄く、デジタルバック部分の厚みを相殺することで、コンパクトなフォルムを維持

907Xに僕が選んだレンズ
ハッセルのレンズは高価なものが多く、おいそれと複数のレンズを所有する事は出来ません。
僕は、気に入ったレンズが一本があれば、済んでしまうタイプの人(SWCもRX1もレンズ固定)なので、最初の一本は少し無理をしてでも、妥協せずに欲しいレンズを買うことに決めていました。

907Xは中判と言ってもセンサーサイズが44×33と小さいため、カメラ全体のコンパクトさを維持したままで、SWCのように超広角を得るためには、XCD28Pが一つの選択肢かもしれません。しかし鏡胴には距離指標が刻まれていないため、SWCのように目測撮影が出来ません。

そのため、鏡胴に距離指標が刻まれていて、一億画素機に最適化され、この機種の為に作られたと言って差し支えないようなXCD38Vを選択しました。(実際にハッセルの広告などでは、このレンズの登場以降、907Xと組み合わせて宣伝されているので、メーカーもSWCを意識したオマージュ的な意味合いを込めているのだと思います)

35mm機換算で31mmとなるこのレンズは、中判としては充分に明るいF2.5であり、また最短撮影距離は、SWCのBiogonと同じ30cmとなっています。このレンズが発売されたことで、35mm F2.0 のRX1を常時好んで使っている僕が、907Xを購入するのを強く後押しすることになりました。

38mmのレンズを付けるとSWCそのもの。全長もほぼ同じになります

XCD38Vの素晴らしい描写力
SWCを想起させるとはいえ、現行のレンズ群にBiogonは存在しませんし、お金さえあれば、交換しながら複数のレンズが使えます。だから、カメラとしての本質は広角レンズに特化したSWCとは少し違います。
ですが、最新のデジタルミラーレス機であるこのカメラは、最初からフランジバックが非常に短いうえに、各レンズも高画素機の時代を念頭に開発されています。
このため、特に44×33センサーの一億画素機登場に合わせて、共に開発されたXCDVシリーズの描写性能は素晴らしく、光学性能だけを求めるならば、Biogonの必要性はもう無いのかもしれません(でも、もしXCDBiogonなんて言うのが存在したなら買っていたと思いますけどね)

Hasselblad 907X CFV100C XCD38V 2.5F

中央付近の風車を切り出してみると充分に解像していることがわかります。
三脚を使ってもっと絞れば、さらにシャープになると思います。(写真は撮って出しJPEGから切り出したもので1/750 F4.0で撮影。レベル補正のみ行っています)

撮影時に飛行機には気が付いていませんでした。素晴らしい解像力です

光学性能とは違った理由で、Biogonが使いたいのであれば、SWC/MにCFV100Cを装着すれば良く、ハッセルブラッドの考えたコンセプトは理にかなっています(500シリーズにまで使える)

SWC/Mに接続した場合、初回のみSWCを選択します
デジタルバック部を取り外すと907Xの薄さが際立ちます
SWC/Mに接続しても違和感はありません

907Xの価値
購入を決意したものの、なにせ悩んでいるうちにCFVⅡ50Cより価格も上昇してしまいました。Vシリーズのレンズを合わせて購入して、レンズフィルター、サイドグリップや充電器、予備のバッテリーと光化学ファインダーなどを揃えるとトータル200万円近くになってしまい、趣味で購入するには一大決心が必要になるカメラです。「買って後悔しないのだろうか」と思うかもしれません。
実際のところ、現状で僕はこのカメラにとても満足しています。多くの休日にはこのカメラを持ち出しています。

ボディーの作り込み、画質や操作感にも、ある種のこだわりを感じられます。写真を撮る時の高揚感とでも言うか、やる気になれるカメラです。価格と価値が釣り合うかが問題ですが、写真を撮る趣味の中で、カメラという道具にどの程度の想い入れを持つかで、評価が変わると思います。

この独特のスタイルがよほど好きか、デジタルバックに興味がある場合以外は、強くお勧めしません。やはり使い方は限定されますし、同じ金額を投入すれば、いろいろな選択肢が考えられると思います。

僕も同価格帯のカメラとしてCanon R1、R3などの選択肢も考えました。(別の用途でR1も魅力的でした)しかしR1はバリアングルをみて萎えてしまいました。ハイエンド機にバリアングルは必要でしょうか?
SonyRX1m3に関しては、このカメラの購入時には、未発表で情報がなく、直接の候補になりませんでしたが、こちらはなぜかチルトがなくなってしまいました。発売後に店頭で触ってきましたが、操作性が全体的にrm2より後退したように思います。僕的には、現状ハイエンド機にはしっかりとしたチルト式液晶が最適だと思っています。

サイドグリップは必須のオプションです

操作感
意外に思うかもしれませんが、操作感はとても良好です。ストリートスナップなどで、しっかりとしたグリップ感が欲しい場合はサイドグリップを導入すれば、操作性は格段に良くなります。精密なピント合わせはモニターを使うことになるのですが、100Cに採用されたモニターの品質は良く、視えも、タッチパネルの操作感も良好です。晴天時の視え具合を心配する記事を見かけますが、実物を使う限り、今のところ困ったことはありません。

中判カメラ全般に言えると思いますが、AF性能は、10年前の35mm機に及ばないと思ったほうが良いでしょう。素人の僕程度の使い方なら必要充分ですが、やはり使う場面を選ぶカメラだと思います。
手ブレ補正が登載されていませんが、サイドグリップを使用すれば、困ることは殆どありません。

画質
解像感に関しては、単純に考えれば35mmフルサイズの6000万画素機と理論的には大きく変わらないはずです。ですがクロップ時には大きなセンサーサイズが生きてきます。
基本的にはRAW現像で使っていますが、ハッセルの画像処理エンジンは非常に優秀で、撮って出しのカメラ内現像のJPEGでも非常に良い色味です。
今までに僕が使ったカメラの中で、目で見た現実世界の色に一番近い色を再現していると思います。形の良さやデジタルバックとして使えることは、唯一無二と言える特徴ではありますが、やはり出力される画像にこそ価値があります、X2Dなどと同じく、現在個人で手に入るデジタル機としてかなり優秀な部類なのではないでしょうか。

Hasselblad 907X CFV100C XCD38V 2.5F

現在のハッセルブラッド
世の中の多くの人はハッセルを知りません。「変な形。カメラなの?」くらいにしか見ていないでしょう。だから、スナップをしながら自分一人で盛り上がっている感じです。個人の所有欲はしっかり満たしてくれます。
知名度の高い高級機を使って、他人を驚かせたい、注目されたいと思って買う人は、悪いことは言いませんライカを買いましょう。

僕がカメラをバイクに例えるならば、今のデジタルライカはドカティで、ハッセルはアプリリアと言った感じでしょうか。ハッセルは高い割に一般人には、知名度が高く有りません。でも好きな人には最高の一台であることは間違いありません。

小さな不満
このカメラに不満点がまったく無いわけではありませんので、少し触れておきます。

一つ目は、光学ビューファインダーの取り付け方法。
レンズが交換式になっているため、光学ファインダーはオプションとして購入が必要です。取り付け方法も少し特殊です。Hasselbladの銘板を外して、専用のアダプターを取り付けなければなりません。(鞄の出し入れに邪魔になるため、今のところ殆ど使用していません)
100CにはフラッシュのホットシューもアダプターとしてCFV側に取り付け出来るようになったのですが、ここにファインダーは付けられません。せめて共用だったらいいのにと思います。

二つ目は、モノクロのモードが無いこと。
基本的にはRAWを使う前提で、画作りにおける全ての選択は使用者がカメラの外で行う考えだと思われます。これはこれで合理的判断なのかもしれません。しかし、SWC/Mなどクラシカルなカメラに取り付けて使うときにはなおさら、カメラ内現像にモノクロのモードが欲しくなります(フィルムシミュレーションのような過剰なカラーモード機能は全く必要ありません)

三つ目は、標準の現像ソフト「Phocus Mobile 2」がAndroidに対応していないこと。

大きな不満
カメラへの不満ではなくメーカーへの不満なのですが、最大の不満は、ハッセルがインフルエンサーにカメラを配っていること。
カメラを無償に近い形で配って宣伝させています。これは自分で高額なカメラを購入したには不快感を感じさせます。新規ユーザーが増えても既に使っている人間のモチベーションを下げ、長期的にはハッセル自身の為にならない気がします。

「宣伝動画と引き換えなので対価を払っているのだ。無償提供ではない。」と言う人もいるかもしれません。しかし、このカメラに多額の費用をつぎ込んだ者からすると、「ハッセルから突然カメラが提供された。」と喜んでいる動画を見るたびに、不満感が湧き、このカメラを使う高揚感に水を差します。このカメラやハッセルブラッドのブランド価値が下がってしまったような気持ちになります。

少なくとも僕はこのハッセルの宣伝だけは悪手だと思っており、ハッセルは自分たちの売っているカメラの価格帯とユーザーの想いを考えるべきだと思います(提供された人達が、いくら公正に評価したよ。と動画で言っていても、どうしても信用できなくなります。それが本心だとしてもです)

僕にとってこのカメラは最強のサブ機
元からハッセルのフィルムカメラに興味が無く、とにかく実用的なスペックを望むのであれば、907Xの選択は無かったと思います。僕の使う907Xの現状の位置付けは、最強のサブ機であり、メインの35mmフルサイズ機やフィルム機との並用で使用します。ここ一発の解像度が欲しいときや少し気合を入れて撮影がしたい。そう思う日にこのカメラで街角のスナップや風景撮影をします。

Hasselblad 907X CFV100C XCD38V 2.5F
Hasselblad 907X CFV100C XCD38V 2.5F
Hasselblad 907X CFV100C XCD38V 2.5F

少し語弊のある言い方ですが、フィルム機でも、高級機でも、普及機でも、僕の写真もセンスも変わりません。しかし、このカメラで何が出来るのか、どんな物が写るのか、そんな好奇心やワクワク感は間違いなく大きくなります。

普段の買い物に原付を使っていたとしても、休日にワクワクしながらスポーツバイクに跨る。すると別の世界が見えるかもしれない。それと同じように好奇心を生み出すスーパーサブ機。現代のハッセルブラッドはそんなカメラだと思います。
良い写真を撮りたくても、そこに好奇心が生まれていなければ、写真を続ける事などできないと思います。

バイクと違って、腕やセンスが無くても他人に迷惑をかけません。趣味だから実用性なんて二の次でいいし、きっと純粋なスポーツカーを買う人は、乗り心地が良いかとか、あとで高く売れるかなんて考えもしないのだと思います。それと同じで、格好の良さに憧れ、良いところも悪いところも全てが面白いと感じられる。性能を使い切れなくても構わない。それが使えることに意味がある。
ハッセルにはどうか尖った存在でいてほしいと思います(最近はちょっと怪しいかな)