まず、あらかじめ完成した漫画家を用意します ―500円の「AI漫画の作り方」を、値札ごと読んだ
500円を払った。
AI漫画の作り方を買った。
今回は記事を読んで感想を書くのではなく、実際に書かれた手順を使って漫画を作るつもりだった。
キャラクターを作る。ストーリーを考える。画像を生成する。失敗したら直す。Canvaでセリフを入れ、noteへ貼る。
一作できれば、この記事には再現性がある。途中で止まれば、どこで止まったのかを書けばいい。
検証としては、分かりやすい。
有料部分に入ると、最初にこう書かれていた。
今回は、キャラがすでに完成している前提で話します。
三分クッキングなら、ここで冷蔵庫から「あらかじめ作っておいたもの」が出てくる。
まず、完成したキャラクターを一人ずつ用意する。集合画像も用意する。乗り物が重要なら、乗っている画像と降りている画像も用意する。
そこからChatGPTやGeminiへ画像を渡し、
「二人が小さな公園で話している。文字なしで」
と指示する。
なるほど。
まず、あらかじめ完成した漫画家を用意するらしい。
キャラクターをどう作るのかは書かれていない。正面、横向き、表情差分を何枚準備するのかも分からない。複数人を同時に出すとき、参照画像やプロンプトをどう整理するのかも説明されない。
無料部分で「一番大事」とされたストーリーも、自分で考えることになっている。
失敗例は豊富だった。
人数が増える。髪形が崩れる。自転車が壊れる。キャラクターが突然凶暴になる。絵柄が急にリアルになり、人間だったキャラクターが本物の虎になる。
ここは普通に面白い。
ただし、失敗をどう直したかは、ほとんど分からない。
背景から先に作る場合と、キャラクターから先に作る場合がある。どちらがよいかはケースバイケースである。
たぶん、本当にそうなのだろう。
だが、私が知りたかったのは、万能な正解ではない。
人数が増えたときは何を消すのか。髪形が変わったときは言葉を足すのか、参照画像を替えるのか。自転車が崩れたときは構図を諦めるのか。何回失敗したら別の方法へ移るのか。
必要なのは答えではなく、判断の分岐だった。
結果として、漫画は作れなかった。
正確には、記事に書かれていない部分を私が補えば、作れたと思う。
キャラクターを自分で設計し、ストーリーを自分で作り、プロンプトを自分で調べ、失敗への対処を自分で考える。
そこまでやれば、おそらく漫画は完成する。
しかし、それで完成したものは、この記事を再現した漫画ではない。
私が作った漫画である。
だから検証を止めた。
ここまで考えたところで、私はいつもの批評を書き始めた。
無料部分では何を約束していたか。
有料部分では何が渡されたか。
その二つは接続しているか。
価格に対して再現性はあるか。
指はよく動いた。
この企画で、もう何度か使っている評価の型だったからだ。
記事が「完成したキャラクター」を用意してから始まったように、私は「完成した批評の枠組み」を用意してから読み始めていた。
キャラクターの作り方は飛ばされていた。
私も、記事ごとに評価の方法を作り直す工程を飛ばしかけていた。
「無料部分の約束が、有料部分で果たされていない」
その読みは正しい。
正しいが、正しすぎる。
あまりにもきれいに当てはまる型は、対象を説明する一方で、対象にしかないものを切り落とす。
この記事に固有だったのは、大量の失敗画像だった。
作者は、修正技術を十分に言語化できていない。だから、初心者が記事だけを読んで最初の一作へ進む講座としては足りない。
その評価は変わらない。
一方で、成功した漫画の背後に、髪形が崩れ、人数が増え、自転車が壊れ、突然虎になる画像が大量にあることは、隠さず並べられている。
方法を教える記事としては弱い。
だが、AI漫画がどのような失敗の山から作られているかを見せる記録にはなっている。
私は最初、その違いを「無料部分より弱い」の一言で処理しかけた。
それでは、記事が漫画の作り方を省略したのと同じように、私もこの記事だけにあるものを省略してしまう。
500円で、AI漫画の作り方は再現できなかった。
最初の一コマへ渡る橋は、記事の中にはなかった。
ただ、今回一番よく固定されていたのは、キャラクターの顔ではなかった。
どの記事が来ても、無料部分の約束と有料部分を並べ、差分を見つけ、最後に値札を置く。
私の批評の顔だった。
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この構造整理やレイヤー観測が刺さったら、チップで投げてもらえるとうれしいです。