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“性格・人格”は変えられる~注目すべき「性格スキル」の可能性~アダム・グラントに会いに行く#18

こんにちは!9月から連載をはじめた「アダム・グラントに会いに行く」。最新刊「HIDDEN POTENTIAL」のなかの興味深い知見・エピソードを紹介しています。今回のテーマは「“性格・人格”は変えられる」です。


1.性格・人格は変えられる

心理学の父と呼ばれる人物がいる。ウイリアム・ジェームズ(William James, 1842–1910)である。アメリカで最初に心理学講義を行ったことで知られ、後世の研究者に多大な影響を及ぼした。その彼が今から100年以上前に、ある大胆な主張を展開した。
「性格や人格は、三十歳になる頃までにはギブスで固められたように固定され、以降、変わることはない」
人の性格や人格は幼少期にはほぼ決まってしまい、大人になってから変えるのはほぼ不可能であるというのだ。

皆さんはどう思うだろうか。日本にも「三つ子の魂、百まで」ということわざがある。心理学の父が提唱した「ギブス論」は、どこまで科学的に実証されているのだろうか。

心理学の父 ウイリアム・ジェームズ

2.性格スキルとは何か?

もう一人、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンという人物を紹介しよう。彼は人の能力を2つに分け、学力などテストで測れる能力「認知スキル」、テストでは測れない個人的な性格の特徴「性格スキル」と呼んで区別した。個人の性格を遺伝的・先天的なものだと捉えると、性格は一生変わらないことになる。しかしハックマンは「性格スキル」は人生のなかで学び伸ばしていくことが可能なスキルであると唱えた。つまり、個人の性格は変えられることになる。
「性格スキル」は、アダム・グラントの「HIDDEN POTENTIAL」のなかで最も重要なキーワードの1つだ。では、変えられる「性格スキル」とは何なのだろう。

「性格スキル」のヘックマン

3.幼稚園のクラスの先生を見るだけで、将来の児童の成功が予測できる

ここで、興味深い実験を1つ紹介したい。1980年代、テネシー州でラジ・チュティの行った実験である。この実験は驚くべきものだった。「幼稚園のクラスの先生をみるだけで、児童の将来の成功を予測できる」というのだ。幼稚園のときの担任がたまたま経験豊富だった子供は、25歳になるまでに、同級生を大きく上回る収入を得るようになったのだ。
なぜ、幼稚園の先生がそれほどまでに重要なのだろう?多くの人が思い浮かべるのは、児童の言葉や数を理解する力(認知スキル)を伸ばしてくれるからというものだろう。確かにこうした「早期教育」はその後の学習の土台を作ってくれる。しかし、幼稚園卒業後に算数や読み書きテストで好成績の子供でも、その後の数年間で他の子供との学力差が、次第に縮まっていくことがわかっている。
では、経験豊富な幼稚園の先生が子供たちに授けた将来を左右するような「特別な能力」とは何だったのか?

4.将来を左右する「心の力」

チュティが注目したのは、次のような性格的特徴だった。 幼稚園時代、経験豊富な先生に教わった子どもたちは、その後成長するにつれて、このような能力が高かったのである。

  • 積極性…どれくらい自発的に質問や発言をしたのか。情報を得るために自主的に本を読み、授業外で教師と関わって学ぼうとしたか

  • 向社会性…どのくらい同級生と交流し共同作業を行ったか

  • 自己統率力…どのくらい授業に集中したか

  • 意志力…困難な問題にどれくらい挑戦し、与えられた以上の課題をこない、障害を乗り越えたか。

積極性、向社会性、自己統率力、意志力といった性格特性(心の力)は、算数や読み書きなどといった知識や技能よりも長い期間にわたり、より深く、子供たちのなかに定着していたのである。

幼稚園時代にクラスの先生から何を学ぶか

5.「性格スキル」の驚くべきポテンシャル

さて、冒頭でご紹介したウイリアム・ジェームズの「ギブス論」に戻ろう。果たして彼が言うように「性格や人格は、三十歳頃までにはギブスで固められたように固定され、以降、変わることはない」のだろうか?
この定説に挑もうと、近年、ある社会学者チームが興味深い実験を行った。製造業、サービス業、販売業など、小規模なスタートアップを経営する男女1500人を対象に1週間の集中トレーニングを実施した。内容は、新たなビジネスコンセプトを学び、他社の事例研究や、内省を促す演習も行った。グループに分け実験が行われ、「認知スキル」(学力や知識の力)の向上に重点を置いたグループと、「性格スキル」(積極性・自己統率力・意志の力)の向上に重点を置いたグループでは、圧倒的に「性格スキル」のトレーニングを受けた起業家たちの成果が高かったのである。わずか5日間の性格スキル向上プログラムに取り組んだだけで、その後事業利益が平均して30パーセントも向上したのだ。

6.心の力は、年齢に関係なく向上させることができる

ウイリアム・ジェームズの「人の性格は30歳で固まる」というのは、どうやら間違っていたようだ。少なくとも、積極性、自己統率力、意志の力などの性格特性(性格スキル)は、年齢に関係なく、生涯にわたってしなやかに変化し続ける可能性を秘めている。

アダム・グラントの「HIDDEN POTENTIAL」は、すべての人の内に眠る可能性に光を当てる本だ。「性格スキル」は変えられる。そこには個人の限界を乗り越えていくための大きなヒントがあるといえそうだ。

アダム・グラントとは?
ペンシルベニア大学ウォートン校教授。組織心理学者。1981年生まれ。同大学史上最年少の終身教授となる。「世界で最も影響力のある経営思想家10人」の1人と目され「フォーチュン」誌の「世界で最も優秀な40歳以下の教授40人」に選ばれるなど、受賞歴多数。彼の著作は世界で数百万部を売り上げるベストセラーとなり、TEDトークは3000万回以上再生されている。元ジュニアオリンピックの飛込選手。

この連載「アダム・グラントに会いに行く」は、そんな彼を偏愛する「とある大学院生(私)」が、ツテもコネもないのに来年の夏に彼に会いに行くまでのドキュメントである。

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