なぜ聞いているのに本音が出ない?営業ヒアリングの落とし穴
「ちゃんとヒアリングしているのに、なぜか決まらない」
営業をしていると、こんなことありませんか?
お客様に希望条件を聞く。
予算も聞く。
エリアも聞く。
時期も聞く。
家族構成も聞く。
必要なことは一通り聞いている。
それなのに物件を提案すると、
「ちょっと違いますね」
「一度持ち帰って考えます」
「もう少し他も見てみたいです」
そして最後は、
「検討します」
で終わってしまう。
営業マンからすると、
「これだけ聞いたのに、何が足りなかったんだ?」
となります。
でも私は、
ここにヒアリングの大きな落とし穴があると思っています。
質問していることと、ヒアリングできていることは、同じではありません。
「希望条件を聞くこと」がヒアリングではない
不動産営業なら、初回接客でこんな質問をすると思います。
「ご予算はいくらくらいですか?」
「どのエリアで探していますか?」
「駅から何分くらいまで大丈夫ですか?」
「間取りは何LDKをご希望ですか?」
「いつ頃までに購入したいですか?」
もちろん、全部必要な質問です。
私も聞きます。
ただ、
これを全部聞いたからといって、
お客様のことが分かったとは限りません。
たとえば、
「駅から徒歩10分以内が希望です」
と言われたとします。
そこで、
「分かりました。徒歩10分以内ですね」
とメモして終わってしまう。
これでは、まだほとんど何も分かっていません。
なぜ10分なのでしょうか。
毎日電車通勤だからなのか。
奥様の帰宅時間が遅く、夜道が心配なのか。
子どもが将来、電車通学することを考えているのか。
それとも、
「駅に近い家の方が資産価値が落ちにくそう」
と思っているだけなのか。
理由が違えば、
当然、提案する物件も変わります。
もしかすると、
「徒歩10分以内」という条件そのものが、本当の希望ではない
ことだってあります。
お客様自身も、本当の希望が分かっていないことがある
ここは、営業を長くやっていて本当に感じます。
お客様は、
最初から自分たちの希望を100%整理して来店しているわけではありません。
むしろ、
「駅近がいい」
「新築がいい」
「南向きがいい」
「3LDK以上がいい」
「予算は5,000万円くらい」
最初は、それくらいの感覚で探している方も多いです。
別にそれが悪いわけではありません。
家なんて、人生で何回も買うものではないですからね。
最初から、
「自分たちにとって本当に必要なものはこれです」
と全部分かっている方が珍しいと思います。
つまり、
営業マンがお客様の本音を聞けていないだけではなく、
お客様自身も、まだ自分の本当の希望に気づいていないことがある。
だから私は、
営業マンがお客様と一緒に整理していく必要があると思っています。
「聞いた答え」をそのまま正解にすると、そこで止まる
私が特に怖いと思っているのが、
お客様の最初の答えを、そのまま正解だと思ってしまうことです。
たとえば、
「戸建てがいいです」
と言われた。
そこで、
「分かりました。では戸建てで探します」
これ、ちょっと早いんです。
なぜ戸建てなのでしょうか。
子どもの足音を気にしたくない。
庭が欲しい。
駐車場が欲しい。
管理費を払いたくない。
マンションは狭いと思っている。
以前マンションに住んで嫌な経験をした。
理由はいくらでもあります。
仮に一番大きな理由が、
「子どもの足音を下の階に気にしたくない」
だったとします。
そうであれば、
一階住戸や防音性の高いマンションだって、
もしかすると選択肢に入るかもしれません。
ところが営業マンが最初から、
「この人は戸建て客だ」
と決めた瞬間、
マンションという選択肢は消えます。
そして、
そこから先の質問もしなくなる。
これが怖いんです。
経験がある営業マンほど、思い込みには注意した方がいい
これは新人営業マンだけの話ではありません。
私はむしろ、
営業経験が長い人ほど気をつけた方がいい
と思っています。
経験を積むと、
「こういうお客様は、だいたいこうだ」
という自分なりのパターンができてきます。
これは決して悪いことではありません。
経験から先を読む。
営業では大きな武器になります。
ただ、
その武器がいつの間にか、
思い込み
に変わることがあります。
「小さい子どもがいるから戸建てだろう」
「共働きだから駅近だろう」
「年収が高いから予算も高いだろう」
「もう何件も見ているから、条件が厳しいお客様だろう」
全部、
当たっているかもしれません。
でも、
外れているかもしれない。
問題はそこです。
思い込みをした瞬間、
営業マンは質問しなくなります。
だって、
もう答えを知っているつもりになっていますから。
私は営業を長くやっているからこそ、
ここは今でも気をつけています。
「本当にそうなのか?」
一回、自分の中で疑ってみる。
これだけでも、
お客様への聞き方はかなり変わります。
本音は、一回の質問で出てくるとは限らない
もう一つ大事なのがこれです。
営業マンが聞きます。
「この物件、どうですか?」
お客様が答えます。
「ちょっと狭いですね」
そこで、
「分かりました。では、もう少し広い物件を探しますね」
と終わる。
これも、私はすごくもったいないと思っています。
「狭い」
たった一言ですが、
その中にはいろいろあります。
リビングが狭いのか。
収納が少ないのか。
子ども部屋が小さいのか。
今住んでいる家より狭く感じるのか。
家具を置いたときのイメージができないのか。
もしかすると、
本当は別のところが気に入っていないけれど、
うまく言葉にできなくて、
とりあえず「狭い」と言っているだけかもしれない。
だったら、
一回の答えで終わらせない。
その言葉の奥に何があるのか。
そこをもう少し見てみる。
ここから本当のヒアリングが始まると私は思っています。
「なぜですか?」を連発すればいいわけでもない
では、
何でもかんでも、
「なぜですか?」
「それはなぜですか?」
と聞けばいいのか。
もちろん違います。
そんなことをやったら、
お客様からしたら尋問です。
「なんでこんなに聞かれるんだ」
となります。
大事なのは、
会話の中で自然に深掘りすること。
たとえば、
「駅徒歩10分以内がいいです」
と言われたとします。
そこで、
「やっぱり毎日の通勤を考えると、駅から近い方がいい感じですか?」
と聞いてみる。
すると、
「いや、私は車通勤なんですけど、子どもが大きくなったときのことを考えていて」
という話が出てくるかもしれません。
これだけで、
同じ「徒歩10分以内」という条件でも、
意味がまったく変わります。
車通勤のご主人のためではない。
将来の子どものためだった。
だったら、
絶対に10分でなければいけないのか。
12分ならダメなのか。
バス便はどうなのか。
通学経路はどうなのか。
ここからまた話が広がります。
条件ではなく、その「理由」を聞く
ヒアリングで私が特に大事だと思っているのは、
条件の奥にある理由を聞くことです。
「何が欲しいですか?」
だけではなく、
「なぜ、それが必要なんだろう?」
そこまで興味を持つ。
毎回、
「なぜですか?」
と聞く必要はありません。
「そこを重視されるのは、何か理由がありますか?」
「今のお住まいで、そこが不便なんですか?」
「もしそこが解決できれば、駅からの距離は少し伸びても大丈夫ですか?」
そんな会話をしていくと、
だんだん優先順位が見えてきます。
そして営業マンも初めて、
「このお客様が本当に解決したいことは何なんだろう」
というところまで考えられるようになります。
私は、
ここまで来て初めてヒアリングだと思っています。
良いヒアリングは、その後の提案まで全部変える
ヒアリングというと、
初回接客の一工程くらいに思われることがあります。
でも私は、
営業の中でもかなり重要な部分だと思っています。
ここがズレると、
その後が全部ズレるからです。
お客様が何を大切にしているのか分からない。
だから提案がズレる。
提案がズレるから、
お客様は決められない。
そして最後に、
「検討します」
となる。
営業マンはそこで、
「クロージングが弱かったな」
と思います。
でも、
本当にクロージングでしょうか。
もしかすると、
原因はもっと前だったのかもしれません。
最初のヒアリングです。
本当の希望が分からないまま、
一生懸命物件を出しても、
なかなか刺さりません。
営業マンは頑張っている。
お客様も真剣に探している。
なのに、
なぜか噛み合わない。
私は、
その原因がヒアリングにあることはかなり多いと思っています。
「検討します」は、最後に突然生まれる言葉ではない
私は、
「検討します」という言葉は、
クロージングの瞬間に突然生まれるものではないと思っています。
初回接客の段階で、
お客様の不安。
希望。
優先順位。
購入する理由。
そこが十分に整理できていなければ、
最後になって判断材料が足りなくなります。
だから、
「ちょっと考えます」
となる。
もちろん、
すべてのお客様にその場で決めてもらう必要なんてありません。
そんな話ではありません。
ただ、
本当は営業マン側が聞くべきことを聞けていなかったために、
お客様自身が判断できない状態を作ってしまっている
としたら、
そこは変えられます。
クロージングになってから必死に話すより、
もっと前でできることがあります。
私はその一つが、
ヒアリングだと思っています。
本音が分かった。その次に何をするのか
ここまで、
条件そのものではなく、
その理由を聞くという話をしてきました。
でも、
ヒアリングが深くできるようになったら、
それで終わりではありません。
私はむしろ、
ここからが営業マンの腕の見せどころだと思っています。
お客様の本音が少しずつ見えてきた。
なぜ駅近がいいのかも分かった。
なぜ戸建てがいいのかも分かった。
なぜ広さを求めているのかも分かった。
では、
聞いたその条件を、
営業マンはどう扱うのでしょうか。
ここでまた、
大きな分かれ道があります。
お客様から、
「駅徒歩10分以内がいい」
と言われた。
「分かりました。10分以内で探します」
「築浅がいい」
「分かりました。築浅ですね」
「もう少し広い方がいい」
「分かりました。もっと広い物件を探します」
間違ってはいません。
むしろ、
お客様の希望をしっかり聞いて、
その通りに動いている。
一見すると、
ものすごく親切な営業マンです。
でも私は、
そこでどうしても考えてしまいます。
それって、本当にお客様に寄り添っているんだろうか。
希望条件が一つ増える。
また一つ増える。
そのたびに、
営業マンは検索条件を絞っていく。
そして最後には、
「ご希望に合う物件がありません」
となる。
これ、
不動産営業では本当によくあります。
でも、
お客様が最初に口にした条件は、
絶対に変えてはいけないものなのでしょうか。
私はそうは思っていません。
もちろん、
営業マンの都合で条件を曲げろという話ではありません。
売りたい物件に無理やり誘導する話でもありません。
そうではなく、
なぜその条件なのかまで分かっているなら、別の選択肢を見せられることがある。
そこに営業マンの価値があると思っています。
実際、
私のお客様でも、
最初は、
「駅までフラットな方がいい」
と言っていた方がいました。
でも最終的に購入したのは、
高低差のある高台の家でした。
しかも、
最初に考えていた予算より安く購入することができました。
もし私が最初の希望条件だけを見て、
「坂があるから、この物件は紹介しない」
と判断していたら、
その家を見てもらうことすらなかったと思います。
お客様自身も、
その選択肢に気づかなかったかもしれません。
私は、
お客様の希望を聞くことと、お客様の言う通りにすることは、まったく別だと思っています。
言われた条件をそのままパソコンに入力して、
出てきた物件を紹介する。
それだけなら、
営業マンでなくてもできる時代になってきています。
だからこそ、
「なぜ、この条件なんだろう」
「本当に譲れないのはどこなんだろう」
「違う形でも、この希望を叶えられないだろうか」
そこまで考える。
そして、
ときにはお客様自身が思いついていなかった選択肢を出す。
私は、
そこまでやって初めて、
お客様に寄り添った提案になるんじゃないか
と思っています。
この話は、
次の記事でもう少し深く書いています。
お客様の希望を大切にしている営業マンほど、
ぜひ一度読んでみてください。
良かれと思ってやっていることが、
知らないうちにお客様の選択肢を狭めていることがあります。
そして場合によっては、
営業マン自身がお客様を「家を買えない人」にしてしまうことさえある。
少し厳しい言い方かもしれません。
でも、
私はここは営業マンなら一度、本気で考えてみる価値があると思っています。
ヒアリングで本音を聞けた。
そこで終わりではありません。
聞いたその先で、何を提案できるのか。
私は、
そこからが営業マンの仕事だと思っています。
次の記事でもう一段、
一緒に深掘りしてみましょう。
