第10話:疑ってるのに、信じたフリをした日
「…これも、きっとまた嘘なんだろうな」
そう思いながら、俺はまたスマホの通知を開いた。
「オッチさん、ここまで本当にありがとう!
今度こそラスト!。
これで、全部終わるから!」
俺
「何が!?ハハッ・・・
バカらしい・・。」
千春のその言葉に、俺はもう何の感情も湧かなかった。
怒りも、希望も、何もない。
ただ“はい、はい”と心の中でつぶやきながら、
また振込先をコピーしていた。
本当はもう、全部わかってたさ。
終わらないってことも。
売上金なんて引き出せないってことも。
「あと1件」なんて、何の意味もないってことも。
それでも──俺は止められなかった。
信じてるフリをしてたんだ。
信じたフリをしないと、自分が崩れそうだったから。
「騙されてた」って認めたくなかったし、「信じた自分」が、バカだったって思いたくなかった。
画面の中の売上金は
「2,000,000円」になっていた。
でも、俺の通帳には、1円もなかった。
そしてある日、とうとう
“未処理:1件”が残ったまま、
俺は、完全に詰んだ。
振込先の通知が届いたとき、
俺はスマホを見ながらため息をついた。
金が、もうどこにもなかった。
俺は千春にLINEを送った。
「もう無理です。
払えない。立替できない。
引き出し申請もできない。
もう何もできません・・。」
すると、千春はすぐに返してきた。
「今ここで諦めたら、売上金も立替金も、全部戻ってこないわよ!?
それでいいの?」
でも俺は、もう払えなかったんだ。
どんなに言われても、どんなに脅されても。
金がないものは、どうやったって出せない。
何度も送られてくるLINEを無視しながら、
俺はただ、スマホを伏せて、天井を見ていた。
このとき、俺の中で何かが終わった。
2,000,000円の“画面の数字”と、
空っぽの通帳だけが、俺の現実だった。
俺は、ついに目を覚ました。
でもそれは、“救い”じゃなかった。
信じることを諦める、ただの“終わり”だった。
次回
第11話:レターパックと2147万円──届いてしまった“現実”
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