オルヴィエート
ローマから日帰りでオルヴィエートに行きました。オルヴィエートは、ローマから電車に乗って1時間で簡単に行ける、と聞いていたのですが、そこはイタリア基準。電車が遅れて、片道2時間近く掛かりました。時刻表通りでも、1.5時間かかりますが、イタリア人は少し短めに言うようです。ローマのテルミニ駅に早めに着いて切符を購入し、電光掲示板を見ると、オルヴィエートに行くために乗るフィレンツェ行きの電車は、1est番線から発車するようです。1~24番線は改札を入ってすぐのところなのですが、どこに1estはあるのか、嫌な予感がします。
駅員に聞くと向こうだ、と言われて、そちらに行っても1est(イタリア語でウーノ・エスト)は見当たりません。仕方なくネットで少し調べたところ,フィレンツェ方面に行く列車は奥の方の少し離れたところにあるプラットフォームから発車するとのこと。先ほど向こう、と言われたところには、1estに通じる地下通路の入り口がありました。まあ知っていれば簡単なことなのですが、それがわかった時には電車が出発する5分前になっていました。どれくらい距離があるのかわかりませんが、とりあえず走って地下通路を渡り,1estの標識を辿っていくと、周りにもスーツケースを押しながら走る人がいました。息を切らしながらなんとか発車前の電車に到着。遅れがちなイタリアの電車ですが,こういう時は時刻表きっかりに発車するんですよね。そして到着する時刻は30分ほど時刻表よりも遅れました。
オルヴィエート旧市街は丘の上にあるため,駅を降りてすぐのところにあるケーブルカーで丘の上に登ります。だいたいのヨーロッパの街は観光地である旧市街と、そうではない新市街に分かれています。オルヴィエートにも郊外に新市街があるようです。ケーブルカーを上ったところには地元のワインである、オルヴィエート・クラシコを飲めるところもあり,また、教皇が掘らせたという,聖パトリックの井戸や眺めの良い城壁もあります。オルヴィエート・クラシコは軽めの白ワインで値段も安いわりに美味しいワインです。日本でも色々なところで買えるので,ぜひ飲んでみることをお勧めします。
聖パトリックの井戸はケーブルカーの駅から坂を下りた所にあります。螺旋状の階段を下へ降ります。かなりの深さがあります。この階段は上りと下りで人がすれ違わない、二重らせん状になっています。二重らせんの階段は珍しいですね。日本ではあまり見かけません。バチカン美術館や、フランス・ロワール地方のシャンボール城にもあります。シャンボール城の階段はレオナルド・ダ・ヴィンチの設計ということになっています。井戸の中はひんやりとして涼しいです。底には水溜まりがあります。
オルヴィエートの城壁から見る景色は素晴らしいです。眼下には先ほど乗ってきた、トレニタリア(イタリア国鉄)の線路が見えます。それと並行して、私鉄であるイタロの線路も走っています。イタロの方がサービスが良さそうなので、次回はイタロに乗ってみようと思います。イタロの特徴的な赤い電車が高速で走り抜けていきます。以前、トスカーナ地方のサン・ジミニャーノの城塞から見た景色と似ています。周りに畑が広がっています。オルヴィエートの街の形は楕円のような形をしています。ケーブルカーの駅は楕円の長軸の一方にあたります。街を抜けてもう一方の長軸の端、サン・ジョベナーレ教会の辺りから見る景色も素晴らしいです。イタリアの良いところは、何年経っても、その素晴らしさが変わっていないことです。おそらく200年経ってもオルヴィエートの景色は変わりません。
オルヴィエートでまず第一に見るべきところはドゥオモでしょう。ドゥオモの正面も絵画で飾られています。ドゥオモの壁は全体的に白い色をしています。ファサードが彫刻で飾られているのはよく見られますが、絵画で飾られている聖堂は珍しいと思います。絵画は聖書に出てくる場面が描かれていて、聖書の文字の読めない昔の民衆にも聖書の物語がわかるようになっています。ファサードの4本の大きな柱は、左から右に順番に旧約聖書や新約聖書の有名なシーンが表現されています。
ドゥオモ内部で最も見るべきものは聖ブリッツィオ礼拝堂のルカ・シニョレッリによるフレスコ画です。オルヴィエートに来たのはこの絵を見るため、というのが大きいです。ルカシニョレッリは15~16世紀の画家で、レオナルド・ダ・ヴィンチと同時代の人です。ミケランジェロやラファエロも少し後で生まれています。同時代に何人も後世まで残る作品を残す芸術家が生まれる、というのはいったいどういう事なのでしょうか。同時代人の間で影響し合い、競争しながら良いものが生まれていくのでしょう。シニョレッリのこの絵は最後の審判を題材としています。この絵には天使や悪魔、裸の男女が表現されています。シニョレッリは同時代人に高く評価されていました。特にミケランジェロはシスティーナ礼拝堂の最後の審判の絵を描く際に、シニョレッリのこの絵を真似したと言われています。この絵の中にはたくさんの人物がいますが、シニョレッリ自身や彼の友人たちがモデルとなっているそうです。シニョレッリは裸の人物を先駆的に生き生きと描き出した画家でした。彼は最愛の息子が死んだ時に、裸にして絵を描いたということですから、それだけ多くの人物の裸をデッサンしていたのかもしれません。
ドゥオモ広場からドゥオモ通りをモーロの塔まで進みます。イタリアでは塔に登ると絶景が見れることが多いので,時間があれば塔に登ることをお勧めします。モーロの塔からカヴール通りを西へ進みます。少し歩けば共和国広場に着きます。広場には市庁舎とサンタンドレア教会があります。ここが古代都市時代からオルヴィエートの中心でした。復活祭の時期だったため,共和国広場では子供たちが集まって、何やらこれからお祭りのようなものが始まりそうな雰囲気でした。サンタンドレア教会は12角形の鐘楼が美しいです。
そのままカヴール通りをまっすぐに進むと、右手にサンジョヴェナーレ教会があります。この辺りは観光客もあまりいなくて、街の人も見かけません。ためしに教会の中に入って、ベンチで少し休んでみましたが、誰も入って来ませんでした。サンジョベナーレ教会がオルヴィエートの西端になり,そこでは城壁からの絶景が見れます。街の入り口の城壁から見る景色より,こちらから見る景色の方が個人的には好きです。他に人もあまりいないので、絶景を独り占めできます。
そこから城壁伝いにマッジョーレ門まで行き、坂を上ってカヴール通りに戻りました。この辺りの小さなお店にも美味しそうなお店があります。雑貨屋でオルヴィエート・クラシコのワインを1本買いました。
オルヴィエートの端から駅まで戻るのには歩いて20分位でしょうか。今回はローマからの日帰りだったのですが、直通列車もあって行きやすいかと思いきや、電車の本数もそんなに多くないので、日帰りよりもオルヴィエートで一泊してチヴィタ・ディ・バニョレージョなども一緒に見ると思い出に残ると思います。ローマのように人で溢れ、喧騒に満ちた大都市に比べるとかなりリラックスできます。静かさや自然を求める人には、おすすめの都市です。
